AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

924:甘い泥

2008年09月26日 | ノンジャンル
 良い映画には引力がある。あるいは匂いがある。それはオープニングから嗅ぎ分けることが可能である。今日はたまたまBS放送で見かけたイルラエル映画「甘い泥」には、そういった匂いを感じた。

 もちろん映画は目で観て、耳で聴くものなので、匂いを感じるわけではないのであるが、写し出される景色の色合いや時折奏でられる音楽に、そういった良い映画の匂いが感じられたのである。

 この映画の色合いはとても素晴らしい。最新のアメリカ映画のような鮮明さは全くない。しかし、そこには深い陰影感があり、色のつなぎ目が柔らかである。

 そして、その味わい深い色合いを感じながら「これってアナログの音の質感だよな・・・」と、「甘い泥」の色彩感覚に対して全く関連性がないのであるが、アナログの音の質感との共通性を感じた。

 「甘い泥」では青色が全体の色調の基調をなしている。この色合いは悲しげである。その色合いが基調を占めているので、陰鬱な印象を受ける。しかし、この青の色合いが映画全体に一種の深みを感じさせてくれる。けっしてカラッとはしていない。かなりじとっとしているので、苦手な方にとってはかなり強い拒否反応を引き起こす映画かもしれない。

 「甘い泥」は、イスラエル独特の共同体組織である「キブツ」での、精神を病んでいく母と厳しい状況のもとで賢明に生きる男の子の生活を暗い色調ながら淡々と描いた映画である。内容的にもなかなか考えさせられるものがあった。

 イスラエルという極めて特殊な政治状況下にある国のなかの、特殊な共同体組織、その非人間性や非合理性を描いてはいるが、その底辺を流れるテーマは家族への愛である。なので暗い映画ではあるが、心に馴染むものがある。

 私は特別映画好きというわけではない。もちろん詳しくもないし、そんなに多くの映画を観るわけでもないが、たまにこういった映画に出会うと嬉しくなるのである。
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