グールドさんのリスニングルームに案内されて、リスニングポイントに置かれたイージーチェアに腰かけた。
まずは、その「ブツ」を目で探した。電源ケーブルは背面の壁からセンターラック方式に配置されているラックの方に伸びている。
3台のオーディオ機器がMUSIC TOOL製のラックに収納されてるので、電源ケーブルは3本ある。
そのうちの1本、CDプレーヤーに繋がっている電源ケーブルの途中に銀色の長方形の箱があった。
「これですか・・・面白いものって・・・?」と、その銀色の箱を指さすと、グールドさんは「そうそう、これです・・・」と、にこにこされた。
「これはケーブルスタビライザーです・・・こうやってケーブルを通して上から蓋をするのです・・・これが結構効くんですよ・・・」
その銀色の葉は長さは15cmほどで、窪みに沿ってケーブルを乗せて上から蓋をするような構造になっている。
グールドさんの説明によると、「ケーブルの整振効果と高周波ノイズを除去する効果の両方が得られる・・・」とのことであった。
「なんていうメーカーなんですか・・・?」
「オーディオリプラスです。水晶を材料としたインシュレーターなどを製造販売している会社です・・・面白いオーディオアクセサリーを製造しているんです・・・型番はCNS-7000SZです。」
「オーディオリプラスですか・・・なんか聴いたことがあるような気がします・・・」
「値段もそれなりにしますよ・・・これで5万円と少しの価格です・・・」
「結構良い値段しますね・・・でも、電源ケーブルを高級なものに取り換えたくらいの効果があるのなら、一概に高いとも言えませんかね・・・高級な電源ケーブルはもっと高価なものが沢山ありますからね・・・」
「そうですね・・・私が今使っている電源ケーブルは15年以上前のものですが、それでもそれなりの価格がした記憶があります・・・」
「それで、どういう効果がありますか・・・?」
「サウンドステージの奥行き感が出ますね・・・平面的であった音場が、立体的になるというか・・・リスニングルームが少し広くなったような感覚があります・・・」
そんな会話をしてから、その銀色の箱の検証を早速してみるとことになった。
まずは、その銀色の箱がCDプレーヤーに繋がる電源ケーブルに装着された状態で、1曲聴かせていただいた。
選ばれたのは、グールドさんの部屋で一番よくかかる、ゴールドベルク変奏曲であった。1981年、グレン・グールドの死の前年の録音である。