中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

自然光の中で木々に囲まれ紬を織る

2017年02月06日 | 着姿・作品
立春を迎えて寒さの中にも木々の新芽の膨らみや春の光を感じます。
制作をする際に一番大事にしているのは自然と共にイメージを膨らませていくことです。
20年ほど前、作家の立松和平さんの取材を受けた時にも「自然とともに織っていきたい」と話したことをよく覚えています。
草木で染めた色や立体的な紬糸は光で見え方が大きく違ってきます。
織物の設計をするときは必ず午前中にします。もちろん午後も仕事は進めていますが、決めるときは午前中の光の中で判断します。
また季節による庭の木々の色合いも、空の明るさ、暗さ、彩度も感じながら無理なく生まれてくるものを大切にしています。
東京で庭や空間のある所に工房を構えることは結構大変なことではありますが、、微妙な自然の色を扱うには光と木は欠かせない条件です。
織りながら窓から差し込む光に乱反射する糸のかたちや色の発色、響き合いに「わ~きれい・・」と思わずつぶやいてしまうことがよくあります。

上の画像は少し前に納品を済ませた吉野格子帯「待春」です。自然な色の美しさを味わいながら柄を決め織り進めたものです(写真ではどうしても自然の色の力を再現できませんが・・)。

ただ、出来上がった織物は季節を限定するものでもなく、身につけてくださる方が四季を通して取り合わせを変えながら着こなしていただくものだとも思います。春に限らずいろいろな場面でお使いいただきたいと思います。

この織はアシスタントにしてもらいました。吉野の太い格子も和裁のヘラを使い筬とは別に打ち込まないと平らになりませんので手間がかかります。交差した部分が波立たずきれいに織れています。
青緑に見える太い縞は藍と緑を一本交互に混ぜることで生まれてきた色です。
細い黄色の縞も黄色とベージュを混ぜています。混ぜればよいというものではありませんが、うまくできれば柔らかさと奥行きが生まれます。

自己主張が前面に出るのではなく、安心して自然体で身にまとえるような紬織りを心がけています。
現在は早春の光の中で5月初旬の「紬の会」に向けて単衣にしても袷にしても良いタイプの着尺2点が進行中です。
いつどんなふうに着てもらえるかを想像しながら自然とともに創っています。





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