《・・
60歳の時点で、このような状況にあるというケースは少なくありません。
ファイナンシャルプランナーである長尾義弘氏は、
「60歳以降に準備を始めても、老後の生活を豊かにすることができる」と言いますが、
どのような心構えが必要なのでしょうか。
長尾氏の著書『運用はいっさい無し! 60歳貯蓄ゼロでも間に合う 老後資金のつくり方』(徳間書店)より、
詳しく解説していきます。
【早見表】国民年金・厚生年金「年金受取額」分布…2022年3年度末現在 2023.01.10
☆年金制度は崩壊すると本気で信じている人へ
雑誌やネットでは「年金制度は崩壊する」、「年金を当てにしてはいけない」といった記事を、
しばしば見かけます。
年金の問題は、政争の具としてよく扱われてきました。
国民の不安を煽りやすい話題でもあるため、批判の対象にもなりがちです。
少子高齢化が進むなか、こんな記事を目にすれば、
「やはり危ないのでは?」と疑いたくなるでしょう。
しかし、これはまったくのウソです。
年金制度は崩壊しません。
もしも、年金制度が崩壊したらどうなるでしょう。
約5割の家庭で、65歳以降の収入を100%年金に頼っています。
年金制度が崩壊すれば、これらの家庭生活まで崩壊する恐れがあります。
そうなると、生活保護者が一挙に増加します。
年金の財源は社会保険からですが、
生活保護のお金は国が4分の3、自治体が4分の1を負担しています。
したがって、税金の負担がもっと重くなります。
年金制度をやめたら、逆に国の負担が増えてしまうのです。
ですので、年金制度が崩壊することはありえません。
「そうはいっても、現役世代が高齢者を支えるしくみなんだよね。
年金の財政は安泰なの? 破綻しないの?」 この点は気になると思います。
年金の財政状態を見てみましょう。
年金の給付額55.7兆円―保険料39.8兆円―国庫負担13.2兆円=マイナス2.7兆円
はい、2.7兆円の赤字です。
この赤字分は、年金積立資産残高の166.5兆円から取り崩します。
「赤字だって!? マズイじゃないか!」 慌てるのは待ってください。
安心材料をご説明しますから。
年金の積立金は、運用されています。
運用を担っているのがGPIF(年金積立金運用管理独立行政法人)です。
かつて、運用がうまくいっていないとニュースで流れたことがありました。
そのため、安心できないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。
マスコミは運用が悪いときだけ、取り上げるのです。
実際は、だいたい2~3%で、運用できています。
2001年の運用開始から2021年の第4四半期までの運用実績は、
年率3.7%のプラス。累積で約100兆円の黒字です。
毎年4.8兆円程度は増えていきますから、赤字は十分に補えます。
したがって、積立金を取り崩す必要はないわけです。
50年くらいは取り崩さなくていいという試算もあります。
この先、少子化と高齢化がさらに進み、保険料収入が減って、
支払う保険料が多くなるといった変化はありうるでしょう。
ですが、そうした状況にも対応できるよう、5年ごとに年金制度の見直しを行なっています。
ちなみに、少子高齢化は今後も続いていきますが、
人口の多い団塊の世代が、75歳を越えると高齢者の数が減ってきます。
2045年あたりからは、65歳未満と65歳以上の人口比率は、
ほぼ横ばいになり、安定すると考えられます。
年金制度は、人口や経済状況などさまざまな観点から、
100年くらい先まで持つように設計されています。
ですから、年金の財政が10年~20年で崩壊するとは考えにくいのです。
☆「保険料を払っても元が取れない」は間違い
「でも、何10年も真面目に納めたって、支払ったぶんはちゃんと戻ってくるの?
支払った保険料より、受け取る年金のほうが少なかったら、払い損だよ」
そんなふうに疑う声もあります。
損か得かは一概には言えず、ここは悩ましい問題です。
というのも、あなたが何歳まで生きるか、
つまり、どのくらいの期間年金を受け取るかによって、変わってくるからです。
はたして元は取れるのか。国民年金で考えてみましょう。
月額保険料は1万6610円です。
40年間で支払う総額は、792万2800円になります。
65歳から年金を受け取ったとすると、
月額は6万5075円、1年間では78万900円です。
10年受け取れば、総額は780万9000円ですから、
支払った保険料とかなり近い金額になります。
損益分岐点はおよそ10年。
10年以上受け取ると、元が取れる計算になります。
年金は、生きている限りもらえるので、76歳以上まで生きれば、得をするわけです。
男性の平均寿命が、81歳であることを考えると、
得になる確率は、高いと言えるでしょう。
いつまで生きられるかは、誰にもわからないものの、
酒・タバコをやっているからといって、早死にするとは限りません。
逆に、身体を壊して長生きするともっと悲惨ですし、いっそうお金が必要になります。
76歳より前に死んでしまうと、たしかに損をします。
でも、そのぶんは、ほかの年金受給者の役に立ちます。
年金は、かなりお得なしくみになっています。
そもそも、あなたは年金の保険料を半分しか払っていないとご存じですか。
国民年金は、国が半分負担し、
厚生年金は、会社が半分負担しているのです。
受け取り始めてから10年で元が取れ、しかも一生もらえます。
繰下げ受給を選択すれば、年8.4%で増えていきます。
銀行の金利や株式の運用と比べても、はるかにお得です。
インフレに強いとまでは言えないものの、ある程度は対応できるようにもなっています。
長生きすればするほど、お金は必要になります。
人生100年時代、ゆえに長生きにこそリスクがあるのです。
目減りしていく貯蓄には不安を覚えますが、年金は一生受け取れます。
年金は、長生きしたときに困らないための「保険」と考えてはいかがでしょうか。
長尾 義弘 ファイナンシャルプランナー・・ 》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。
丁寧な解説、ありがとうございます☺️。
初めまして・・。
>丁寧な解説、ありがとうございます☺️。
2004年に年金生活を始めた私は、
年金の難題に関して、注視してきました・・。
今回、多くの人が、判りやすい専門家の解説文が有りましたので、
これを活用して、私はブログの投稿文にした次第です。
三寒四温の時節、あなたさまも御身体を程々に御自愛されて、
お過ごしして下さい。