ウィトラのつぶやき

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ソフトバンクがIoTの無線方式としてLoRaを採用

2016-09-08 09:39:17 | 経済

今朝の日経新聞にソフトバンクがLPWAサービスを来春開始するというニュースがあった。方式はLoRa方式のようである。ここ1,2年でLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークと呼ばれる通信方式が台頭している。過去何十年も高速化を目指して進めてきた通信方式を、一転して低速化を目指し、乾電池一本で10年使えるような通信方式を開発し、IoT用に使おうという考えである。低消費電力の無線方式では、従来からZigbee、Bluetoothといった方式が使われていたのだが、これらの方式は1Mbps程度まで使える低電力方式である替わりに伝送距離はせいぜい数百mまでだった。それを徹底的に速度を落とし、低消費電力化を図ることによって、同じくらいの消費電力で10倍程度(数Km 程度)飛ばそうというのがLPWAの発想である。周波数帯は日本で言うと特定小電力(900MHz帯)という免許不要の周波数帯を使用する。主な用途としての狙いは電力やガスなどの検診の情報を自動で集めるスマートメータだと私は考えている。これは1時間に1回程度メータの情報を送れば良いのでトラヒック量としてはごく少ない。周波数も、電池もごく少量の消費で済む。LPWAはベンチャー企業が独自開発したようなものが多く、方式はLoRaと呼ばれる方式とSigfoxと呼ばれる方式が欧米で導入が進んでいる。

日本では電力のスマートメータ用のWiSunと呼ばれている方式が標準として採用されているが、東芝が東京電力のシステム構築を請け負って大失敗し、不正会計操作発覚の一因となっている。WiSunはやはり伝送距離数百メータなので、かなりの数の中継基地局を置く必要があり、LPWAと比較するとかなり高価なシステムとなる。スマートメータ出直しの際にはLPWAになるだろうと私は考えている。

モバイルオペレータにとっては無線通信によるIoTのデータ収集は将来ビジネスの大きな要因と考えているので、対抗してLTEをベースとした超低消費電力伝送NB-IoTという方式を3GPPで標準化している。おそらく数年もすればLTE基地局でNB-IoTにも対応した基地局が出てきて、これで置き換えていけば自然にIoTに対応できるようになると思うのだが、なぜ、ソフトバンクはLTEと互換性のないLoRaでのLPWAを始めることを決めたのだろうか?

おそらく、NB-IoT対応の機器が出てくるまでには2-3年かかるので、今すぐ使えるLoRa方式にしたというのが最大の理由だろう。ドコモとKDDIがNB-IoTにするなら時期的には明らかに先行できるので初期マーケットをつかむことができる。そこでブランドイメージを確立できることは間違いないだろう。ただ、この方式は特定小電力を使っているのでユーザ企業(例えば東京電力)が独自にネットワークを構築することもできる。東京電力は鉄塔などをたくさん持っているので、それを使って独自網を組んでしまえば、利用料金は払わなくて済む。ソフトバンク側からするとかなり料金を下げないと使ってもらえない、という薄利のビジネスになると思う。

ソフトバンクはモバイルオペレータらしくない発想でIoTに取り組んでいる。この点がどうなるか、興味深く感じている。