備忘録として

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日本海軍 400時間の証言

2009-08-12 07:02:10 | 近代史
広島と長崎の原爆記念日が過ぎ、まもなく終戦記念日を迎える。戦争や核について考えさせられる季節に、NHKが3夜連続で、海軍軍令部に所属した海軍のトップたちが持った反省会での発言をもとに戦争の真実に迫るドキュメンタリーが放映された。不覚にも第2話”特攻 やましき沈黙”を見逃したが、1話では世論や陸軍からの空気に流されて開戦に至ったことや日露戦争までは終戦戦略を持って開戦したのに太平洋戦争は終戦戦略がなかったこと、3話は海軍トップを守るための裁判対策、海軍トップが国際法に無知だったことなど驚きの連続だった。

テープに残された各人の発言はすべてが率直で、歴史の真実を語り残そうという姿勢が感じられた。しかし、日本国民だけでも300万人以上の死者を出し、戦場となったアジアでそれ以上の死者を出したという責任を第1に負うべき人たちの発言としては、他人事のように淡々とし過ぎているようにも感じた。ただ、25年の空白があったからこそ、責任や良心の呵責から離れ、自身の過去の言動を客観的に評価することができたとも言える。

番組から感じたことを並べると、
◎ 組織防衛が目的になって国民や戦況、国際情勢の理解がおろそかになったところなどは、現在の企業組織や官僚組織が抱える問題と同じだ。
◎ 住民を人間として扱うという感情がなかったという海軍上層部の感覚が住民の虐殺や捕虜虐待を助長した。
◎ 中国に小さな飛行場を作る時にさえ住民を虐殺をしたという事実がある以上、南京大虐殺がなかったという論は成立しないと思う。
◎ 海軍トップの会話では英語があたりまえに使われていたので、敵性語というのは国民向けの政策だったのだろう。
◎ 海軍トップの海軍大臣を守ることを目的とした戦争裁判対策では、捕虜の処刑を上層部からの命令ではなく現場の判断だっとしたことで、結果的に自分たちの保身と下士官たちの極刑につながった。
◎ 戦争犯罪は、開戦の責任と捕虜や住民の虐殺などの戦争犯罪によって裁かれ、海軍にA級戦犯はいなかったが、特攻隊を組織するなど日本国民を無為の死に追いやった責任は、国民に対する犯罪だと思う。戦犯とは戦勝国に対する犯罪者であり、自国民に対する犯罪では裁かれない。
◎ GHQは占領を容易に進めるため陸軍と東条英機に戦争責任をすべて押し付け裁判の幕引きを図った、いわゆる司法取引を持ちかけたという。真実や正義を振りかざすだけでは世の中は上手く回らないということか。
◎ 巣鴨プリズンから出てきたA級戦犯の陸軍トップは海軍トップのような反省会あるいは戦争総括をしたのだろうか。

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PS 14日
今日朝のNHK・BSの”証言記録 兵士たちの戦争「重爆撃機 攻撃ハ特攻トス~陸軍飛行第62戦隊~」”と”「人間魚雷 悲劇の作戦~回天特別攻撃隊~」”を観た。生き残った元特攻隊の人たちの証言は生々しく未だ戦争を引きずっていて、軍令部の人たちの反省会での冷静な議論と比べると対照的だった。軍令部は机の上で戦争し、元特攻隊の人たちは生死の境に身を置いていたということだろう。
海軍の自爆装置のあった「回天」も同じだけど、陸軍航空隊の「さくら弾」という爆撃機は、戦争の産んだ化け物だった。

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