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植物の名前考~1 ママコノシリヌグイ

2012-07-29 01:38:37 | 花・植物・自然界

 ママコノシリヌグイ(タデ科イヌタデ属)~似た仲間はミゾソバ,ウナギツカミ,イシミカワ等。 

 植物の名前考~1 ママコノシリヌグイ 

 ママコノシリヌグイは他の草などに寄りかかりながらに細くて長い蔓性の茎を延ばし、盛んに分岐して薮を形成する。柄のある三角形の葉が互生する。5~10月頃,枝の先に米粒ほどの小さな花が10個ほど集まって咲く。花は基部が白で先端はピンク。ミゾソバの花に酷似する。
 最大の特徴は枝の稜に沿って下向きに鋭い棘が並んでいること。この棘は葉柄と葉の裏にもあり、引き抜こうとして引っ張ると下向きの刺が刺さってかなり痛い。この特徴から『刺ソバ』の別名がある。
 同じような刺をもつものにウナギツカミやイシミカワがあり、これら3種は兄弟と言えるほどよく似ている他、秋に赤い花をつけ、子どものまま事遊びにも使われるミゾソバも刺はないが同じタデ科イヌタデ属の仲間。
 我が農園にも毎年大量に繁茂し、引き抜くのに苦労させられている。よく見ると同属のアキノウナギツカミもあったが写真を撮り損なった。

 この『ママコノシリヌグイ』についてネットや図鑑で調べると『ずいぶん酷い名前をつけたものだ』とか『即刻改名すべきだ』等と批判的なものが多いが、自分は植物の名前の中でも最高傑作ではないか思っている。


 『ママコノシリヌグイ』とはショッキングな命名であるが、初めてこの名前を知った時にはその名の意味するところよりも、発想の奇抜さに度肝を抜かれ、常人にはちょっと考えつかないそのような名前をつけたのは一体誰で、どこからその発想が出て来たのだろう・・? と言う興味と疑問が湧いた。
 3兄弟の1つであるウナギツカミの場合,刺のある茎や葉でウナギを掴めばうまく掴めるのではなかろうか・・,と言う発想は奇抜でも不自然でもなく、いかにも誰かが考えつきそうな名である。
 ※イシミカワの名の由来は全く不明
 だが、鋭い刺のあるこの草で継子の尻を拭おう等と発想する者はそうそういない。
 
 たしかにこれで子どもの尻を拭いたらそれこそ血だらけになるに違いない。そう言う恐ろしげな名前であるにもかかわらず、自分にはその語の響きに残忍さや陰湿さが感じられない。それどころか、本来なら避けるべき名前を植物の公式名にすること自体におおおらかさと言うかユーモアを感じて思わず笑ってしまった。難しくて堅苦しそうな学問の世界とのアンバランスが可笑しかったのだ。 
 仮に誰か特定の人が命名したのだとすると、その人はかなり自由な考え方ができる人だと思うが、そう言う人が生真面目で融通の利かなさそうな学者先生達の中に果たしているものだろうか・・。


 ここまで考えてきて、もしかするとこれは誰か特定の人の命名ではなく、昔から人々の間でそう呼ばれていたものを追認したものなのかも知れないと思うようになった。
 そこで、昔から人々の間でママコノシリヌグイと呼ばれていたと仮定して・・・,

 そのような恐ろしげな名を思いついた人は、果たして継子いじめの当事者である継父・継母その人だったのだろうか・・!? と言うと自分にはそうは思えない。
 これを名づけた人は、継子いじめのむごたらしさを現すものとして、刺だらけのこの草で赤子の尻を拭くようなものだと表現したのではないかと思えるのだ。




 この草の名前が仲間内で話題になったある時、ある50代くらいの女性が『赤子の尻は拭けないが、義母の尻なら拭いてやりたい』と言ったことがあった。ギョッとしてふり返るとその人は慌てて『冗談です!』と打ち消したが、その顔は泣き出しそうに歪んでいた。
 その女性が『ママコ』を『ギボ』に置き換えた途端に『~ノシリヌグイ』が一気に現実味を帯びたのを生々しく覚えている。

 これに比べると『ママコノシリヌグイ』にはそのような現実感がない。つまりそれは、実際に行われることではないが、「刺だらけのこの草で嬰児の尻を拭くような惨いこと」なのだとそれを戒める意味で名づけられたものだからではないだろうか。
 シンデレラの話しを引き出すまでもなく、信州・池田町には継子の足を持って逆さに吊るし、すり鉢のような谷底に落としたと言う『継子落とし』伝説を持つ奇勝があり、洋の東西を問わず継子いじめは古くからの深刻なテーマである。嫁姑の問題もしかり。

 時として人の心には魔が巣食う。魔を宿してしまった心はいがみ合い憎しみ合うこともしばしばであり、それは誰にも起こり得る。
 『ママコノシリヌグイ』は逆説的にそれを戒めるに格好の素材としてその名を冠したのではないか・・,と言うのが自分の到達した結論・解釈であり、植物の名前の中で最高傑作ではないかと思う所以である。




 最後にこの草の名を詠んだ歌をと思って探したが、さすがに見つからなかった。

 いや,あった


 現代歌人ファイルその155・やすたけまり
 http://d.hatena.ne.jp/yamawata/20110921/1316612912

 根もとから一センチにはトゲがないママコノシリヌグイこわくない



 すごい観察力,そして柔らかな肯定的感性に共感!

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TB有り難うございます (Tokira)
2012-08-03 08:22:20
なかなか、興味深いネタが目白押しに並んでいて
楽しく拝見させていただきました。

「ギボノシリヌグイ」なんてケッサクではないかと思います。
ブラックなセンスが煌めいていて、連日の真夏日・・・
ゾッとさせてくれて爽快です。

また、訪ねて来ます。
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ようこそ! (木偶野呂馬)
2012-08-05 01:44:23
 Tokira様 ご訪問とコメントを有難うございます。

 Tokira様のブログこそ多彩な話題がメジロ押しで、そのどれもが博識に裏打ちされ、かつ批判精神にあふれ、読み応えのあるものばかりで感服です。
 
 こちらでもユウスゲが咲き始めました。
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ママコノシリヌグイ (木偶)
2014-09-28 21:11:25
http://d.hatena.ne.jp/yamawata/20110921/1316612912
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