野性を失った鹿達
10分で宮島に着く。世界遺産になってから外国からの客が増えているようだ。
桟橋から出るとすぐに鹿が集まってくる。あちこちで鹿の餌を売っており、観光客がそれを与えるので鹿はそれを目当てに群がってくるのである。
が、子ども達が『可愛い~ッ』と駆け寄って鹿を撫でようとすると、すかさず愉快腹さんから『さわっちゃダメッ』と言う声が飛び、子ども達はビクッとして手を引っ込めた。
愉快腹さんによると、宮島の鹿は観光客が餌を与えるようになった結果、落ちているものなら紙でもビニールでも何でも食べてしまい、特にビニールゴミ等の不消化物を胃に詰まらせて栄養不良を起こしているために発育が悪く、抵抗力も弱くてほとんどのものが皮膚病等の病気を持っているのでさわらない方がいいと言うことである。子ども達は声を失って愉快腹さんの説明に聞き入っている。
確かに宮島の鹿は見るからに貧弱で毛並みも悪くみすぼらしい。
(写真,愉快腹さんの説明に聞き入る子ども達。鹿の写真は撮るにしのびなく、よって写真はない)
野生の鹿と野性を失った鹿
大元公園の休憩所には鹿の胃の内容物を展示したコーナーがあり、その説明によると死んだ鹿の胃を調べると100%,例外なくビニールゴミが出てくると言うことである。
この休憩所は観光コースの西側の一番はずれたところにあってほとんど立ち寄る人がなく、人々の目に触れないよう配慮(?)されている。
野生を失った鹿は哀れと言うしかない存在だが、一方,宮島には山の奥深く,決して人間からの施しを受けず、野性を保って毅然として暮らしている一群があり、愉快腹さんはかつてその集団に遠巻きに囲まれたことがあると話した。
彼等は一定の距離を保ってそれ以上は決して人間に近づかず、人間が近寄ろうとすると威嚇の声を発して退かないので恐さを感じたと,何よりも体が大きくて目に力があり、威厳に満ちているので存在それ自体に圧倒されたと言うことである。
愉快腹さんにはこの後も宮島の動植物について色々教わった。
(写真,鹿の胃の内容物。全部プラ・ビニゴミ)