快晴の立山三山/ダム水面が異常に低下
9月18日(火)
大町から立山三山に登るには扇沢から室堂まで立山黒部アルペンルートを利用するのが一般的であるが、扇沢からトロリーバス,ケーブルカー,ロープウエイ,トロリーバス~と乗り継いで室堂を往復するのは決して安くはなく(8800円)、そのすぐ足元にいながらいつしか立山は遠い存在になっていた。
右岸側のウイングから白馬だけを望む/赤牛岳(赤岳)&水晶岳(黒岳)
黒部湖畔遊歩道のガイド研修で再三ダムを訪れるようになり、湖畔から黒部平へとその範囲を広げて行く中で、ダムから室堂まで歩けばいいことに気づいて計画を立て実行した。
9月18日(火)
参加者5名は6:30に大町温泉郷に集合。2台の車で扇沢へ移動して7:30発のトロリーで黒部ダムへ。いつも11℃をさしている駅トンネル出口の温度計が18℃を指しており、異常に温かい。
ダム堰堤に出ると正面の立山はすっきりと晴れており、ウイングから堰堤中央に進むと北に白馬岳,南に赤牛岳,水晶岳がくっきりと見えて一点の雲もない白-黒-赤・黒のラインを形成していた。
異常な水位低下~ガルベが小さく見える/むき出しの部分が普段の倍
がしかし、珍しいほど晴れ渡った周囲の景観を眺める前に、ダム湖面の異様さに目が釘づけになる。見慣れた管理用のボートが普段の位置より遥か下方にあって小さく見える。ダムの水位が異常に低いのだ。
対岸のカンパ谷橋を見ると、白くむき出しになった部分が通常の倍ほどもあり、隣の遊覧船ガルベの乗り場の桟橋が信じられないほど下がっていて、普段は水中にある階段が露出している。湖面全体を見渡すとむき出しの白い斜面が目立ち、ダム全体が小さくなったように感じられる。
首都圏の水甕である奥利根ダムの水位が低下して満水時の17%まで落ち込んだと言うニュースを聞いて、9月2日のツアーの時,黒部ダムの水位がずいぶん低かったことを改めて思い出してから2週間あまり・・,状況は更に進んでいたようだ。
ツタウルシが紅葉/ヌメリツバタケモドキ・・?
参加者5名中3名はガイド仲間で、黒部ダムが初めてに近い2女性に対してついつい湖畔遊歩道のガイド口調となってあれこれ知ったかぶりを披露しながら進んだため、ロッジから黒部平に向かう分岐点通過が予定より20分遅れの8:50となる。
黒部平へ/奇怪な根上がりのネズコ
黒部平までの1.4kmは前半が見どころのあるネズコとブナの森,後半は単調な笹交じりの灌木帯であるが、300mの登りなのでかなり勾配があってきつい。
ネズコのネッコ/アカモノの実
奇怪な形状のネズコの巨木に感嘆の声を上げ、また広がるブナ林を真横に見ながら段差の大きな階段を登り切ると笹の被った道となり、ネズコに代わってオオシラビソの木が現れるとまもなく黒部平の駅舎が現えて来る。9:53黒部平駅分岐着
風呂部平分岐/東一乗越を望む
10:06発。灌木帯の道はハッキリしてはいるが手入れされた形跡がなく、笹や小低木が被っている。タンボ平の一画に進むと左前方に東一乗越と隣の2512m峰が見え、進行方向には大観峰が望まれる。この時点では乗越まで3時間と踏んでいた。
明るい笹っ原を行く/休憩
頭上にロープウエイの太いロープと時折通過するゴンドラを見上げながら明るい笹道を20分あまり進むと『東一乗越←2.8km/→0.8km黒部平』の標識が現れる。10:29通過。タンボ沢の支沢を越え、10:59から15分の休憩。その前の休憩時に行動食を口にしたので何も食べなかったが、この時腹に何か入れて置くべきだったと後悔する羽目になる。
張り出した木の枝が邪魔/1つ目の沢
11:15発。道が左にカーブし始め、徐々にロープウエイを離れてタンボ平の上部にかかると、頭上を覆う灌木の枝にザックが絡む歩きにくい道となる。一帯はカール状の窪地の底部なので、そういう場所で難儀させられるかと思えば見通しのいい開けた場所もあり、タンボ沢の源頭部に近いので大きな沢もある。
ハンガーノック~おにぎりを頬ばる/降りて来た夫婦
雷電直下のその1つ目の大きな沢(2070m)を越える辺りで全く突然にハンガーノックに見舞われる。急に空腹感に襲われ、腹に力が入らなくなってフラフラになる。たまらず座り込んで先行するCLに10分遅れて行くと伝えてオニギリ1個を貪り喰う。
食べれば何の問題もなく歩けるようになったが、ここから先行隊との間に一定の距離が生じ、荷物が他の人より重いことを言い訳に十数分遅れで追うと言うマイパターンになる。
対岸で待ってくれていた/不安定な梯子
この時、先行する仲間達は2つ目の大きな沢(2120‐2150m)に差しかかっていた。10分後にその沢に到達。対岸で待ってくれている一行が見えたが、沢を越えるにはそこから30mあまり直上してから梯子で河原に降りなければならない。その登りで上から降りてくる男女に会い、黒部平までの距離を聞かれたのでロッジと黒部平の通過時刻を教えて河原を渡り、先行隊に合流する。
針ノ木岳・赤沢岳&黒部ダム/五竜岳
その場所からは眼前に針ノ木岳,赤沢岳が、また北に五竜岳が見えた。その景観を楽しみ、来し方を振り返りながら30分休んでして昼食を摂る。
12:28発。黒部平から2時間20分,13時までに東一乗越に到達すると言う目標は難しくなった。
わずかながら水滴・・,見逃してはいけない/雄山直下の稜線方向
12:37,3つ目の沢を通過。沢の一画に小さな水滴がポツンポツンと落ちているのを発見。誰も気づいていなかったが、5~6分で500㏄くらいは集められるかもしれないと思った。こういうのを見逃してはいけない。
トリカブト/ダムから一直線
そこから東一乗越までは300m余の登り。草地で見通しがよくなるとダムからそこまでの経路がよく分かる。紆余曲折していてもそれは一直線に近い。
針ノ木岳・赤沢岳/見えた!
カール状の窪地の底から縁に向かって等高線が詰まり、道が立ち上がってきつくなる。
先行する仲間の姿を視野に入れながら、なかなか距離が縮まらないまま進むうちに右の大腿部に痙攣が来た。一瞬,8月8日の燕岳での悪夢がよぎる。ここは深刻な事態にならないよう休憩を取りながらゆっくり登る。
峠へ0.4km/着いた!
13:38,残り0.4kmの漂識にホッとしてさらに20分歩き、13:58,目標より1時間遅れて東一乗越に到達。
ここまで来れば一乗越までの距離1.6km,標高差300mは恐れるに足らず、1時間余りで行ける筈である。ただ竜王岳にガスが降りてきて冷たい風が吹き始めたのが気になった。
あの斜面を廻れば・・/小屋だ!
オンタデ・・?/シラタマノキ
15分休んで14:13発。乗越から真北の方向に雄山に至るゴツゴツの稜線が連なるが、道はその西裏をトラバース気味に高度を上げてまっすぐ一乗越に至る。5分弱で視界を遮る斜面を越えると一乗越山荘が見えてきた。
一乗越山荘/寒かった
峠に近づくにつれて風が強くカメラの作動もおかしくなるほど寒くなり、上空がガスに覆われて急速に天候が悪化してきた。15:19一乗越着。半袖1枚では寒い程の風で気温も低下している。
雷鳥沢へ・・,/雄山はガス
15:36発,雄山から真砂岳経由で雷鳥沢に下るコースのリミットを13:00と考えていたので当然ながらこの日の立山周回は無くなり、雷鳥沢に向かう。
コンクリートで固められた固い道に辟易しながら歩いていると不意に『覚えていますか』と声をかけられて振り返るも見覚えなく、怪訝な顔をしていると『さっきすれ違いました』と言われ、2つ目の沢ですれ違った男女連れを思い出したが顔までは覚えていなかった。聞けば3時間あまりでダムまで下り、乗り物で室堂に戻ってきたとのこと。すれ違ったのが12時前後だったから順当なところかも知れない。
秋色~立山連峰/小雨模様のテン場・地ならし
楽しく夕餉/アナゴチラシにサラダetc・・
痙攣は収まったが脚に若干のダメージがあり、1時間半かかって17:00CP場着。待っていたように雨が降り始める中、強風に逆らって大急ぎでテントを張る。
夕食は定番のアナゴチラシ寿司に9品目野菜サラダ。