まっすぐ立つ黒部/若いブナの門番君達
ロッジくろよん手前のキャンプ場に道標があり、平の小屋を経て五色ヶ原へ向かう道(8.8km)と黒部平駅下(1.4km)を経て東一ノ越に向かう道(4.6km)を分ける。
黒部平への道・・,門番のような若い2本のブナの間を通リ抜けると、10分も歩かないうちにすっくと直立するクロベの大木に迎えられる。クロベは大きな岩の上で成長し、巨大な根がその岩を抱いていたり、倒木の上で成長し、その倒木が朽ちて空洞になっていたりすることが多く、このように地面から生えてまっすぐに伸びているものは珍しい。
そこから先の道を挟んで右手にクロベ,左手にブナが対峙する道が続き、やがてクロベが優勢な尾根道に変わった辺りで奇妙な木に出くわした。
マングローブか?/気根か・・?
地上3m辺りの幹からタコの足のような根が出ているのだ。まるでマングローブのような根の張り方に興味を覚えて裏側に廻って見ると、枝分かれした一方が地面に潜り込んだかのように地中に根を張っている。気根と言うにはあまりにも太いし、ネズコの気根など聞いたことがない。
一方,まっすぐな側の根元を見ると、そこにはちゃんと普通の根があって幹を支えている。
そのクロベはチョウセンゴヨウと2本立ちで寄り添うように立っていたが、よくよく見るとたこ足のような根の下にも枯れた大木の基部があり、3本の木が絡んでこのような姿になったものと推測された。
奇怪な瘤/むき出しの根
そこから先は大きな岩を抱いたもの,根がむき出しになったもの,奇怪な瘤を持ったもの,大きな空洞のあるもの等々,様々に変形したクロベのオンパレードである。
クロベを盟主とする針葉樹の森を歩き、多様な形態の成長過程を見ているうちに、クロベをめぐるもう1つの特徴とも言えるあることに気づいた。それは、1つの大岩の上でクロベとチョウセンゴヨウ,あるいはコメツガの木が2本セットで成長していることが多いと言うことだ。
反目しあう2樹/真ん中に小樹
その2本の大樹は互いに反目しあうかのように反っくり返って斜め後方に延びて行く。ために真ん中にぽっかりと空間ができ、漁夫の利の諺の如くその中央の空間に第3の木がまんまと入り込んで大きく成長していることがある。御山谷の3本立ちの場合がまさしくそれである。
同じ場所でクロベ同士が2本立ちになっている例がないわけではないが、その場合は反目しあうと言うより寄りそう感じで並んでいることが多い。
これをどう考えるか・・。
クロベ同士が寄りそうのは珍しい/岩と根が融合
異なる樹種の場合は1つの場所をめぐって激しい生存競争が繰り広げられ、互いに負けまいとして張り合った結果反っくり返って行くのではなか・・。一方が破れて枯れたり倒れているものも多く、互いに斜め後方に延びているのは痛み分けと言うところではないだろうか。そして結果的には第3の樹種に最もいい場所を取られてしまった・・,と考えてはどうだろう・・。