列車が遅れてる!
多気からは快速電車でさすがに速い。だが、弥富の駅で列車の遅れに気づく。蟹江で2分の遅れ。終点の名古屋を目の前にして赤信号で突然停車。ジリジリと時間が経過し、9分ある名古屋駅での乗り換え時間が3分を切った。
信号が青になってからホームに入るまでの時間の長さ,スピードののろさに一時は諦めかけたが、残り1分を10番から7番まで走って階段を駆け上がり滑り込む。予定通り帰れそうだ。
中津川で最後の列車に乗り換える。
一昨日辺りから『会いたい! 会いたい!』を連発していた2人,お父さん,お母さんのお出迎えに満面の笑み。
長旅,お疲れさま。今夜は美味しいものをいっぱいご馳走してもらおう!
2日間で27時間の帰路,往路を合わせると40時間におよぶ乗車時間は小学生にとってはちょっと無理があったかもしれない。
特に帰路の紀勢本線,和歌山から多気までの区間は長く、特急でも新宮乗り換えで併せて5時間かかる距離を普通列車で9時間あまりかけて走ったのだから、子ども達は退屈したに違いない。
それでも兄妹は最初から最後まで仲良く、ある時は先頭車両に立って移り変わる景色を眺め、ある時は座席でもつれ合ってはしゃぎ、本を読み、パズルに集中し、ある時はぐっすりと眠って長い電車旅を耐えた。
時には静かな車内では兄妹のはしゃぐ声が際立ってハラハラさせられ、時には車掌さんがすっ飛んで来たり(写真)して、ひんしゅくを買ったであろう場面もあるが、一方でそういう子ども達の動きをニコニコしながら見つめてくれるお年寄りもいるものだ。
旅の終わりに
最後の電車は中央西線。中津川からの列車は時間帯からいつも利用客が少なめで混むことがなく、最後のこの列車に乗って初めて帰って来たと言う安堵感に浸ることができる。
前年の同じこの電車でのこと・・。中津川発18:03の最後の電車に乗り込んで席を探す子ども達を目ざとく見つけて席を移動し、4人掛けの席を譲ってくれた人がいてゆったり座って帰ることができた。
50年間,この線を通っていると言う初老のその乗客は、初めての客か常連かがひと目で分かると言う。
同じ電車に今年も優しい目のお年寄りがいた。
(05年・第2回)
(05年・第2回)
子どもをめぐる不穏な事態が続発する昨今,大人の声かけに対して子ども達の顔に一瞬のためらいがよぎり、目で私の判断を仰ぐのが分かる。
たくさんの人々の善意や親切に支えられた旅である。旅先での人様の親切は有り難く快く受けさせたい。
『人を見たら悪魔と思え』と教えなくてはならない時代,『可愛い子には旅をさせよ』の言葉は遠い昔の夢物語になってしまったように見える。
しかしだからこそ、この世は圧倒的多数の人々の思いやりや善意,勇気や愛,そして平和に生きる喜びや希望で成り立っているし、それを必要としていると言う事を身を持って感じて欲しいと思う。
勇気を持って子ども達を私に託し、体験の旅に送り出して下さったご家族の勇気に敬意をはらいまた感謝して、来年もまたどこかへ出かけようと思う。
(05年・第2回)