タコ繰りの手順 ・・・ タコ壺の引き上げは次の手順で行われる。
先ず、海底から引き揚げたメインロープを舳にあるローラーに乗せる。船はニュートラルで自力走行はせず、ローラーの回転でロープを引き上げ(寄せ)ることによってのみ前進する。それ故、潮の干満による潮流にあわせて潮が流れる方向に進むよう作業する。
潮の流れに乗って作業すれば順調に進む作業も、途中で潮が変わって逆流になると捗らなくなるだけでなく、潮流に押し戻されてローラーが逆回転し、危険でさえある。このため、出漁時間は潮の流れに合わせたものとなり、作業時間も〇時〇分頃まで~、と限られてくる。
ローラーの回転は遅くも早くも出来るし、トラブルの際等は必要に応じてバックも出来るが、通常は作業者の熟練度とコンビネーションによって決まり、当然ながら初心者の自分が入る分だけ遅くなっている。
舳に陣取った1人がローラーによって引き上げられてくるタコ壺のロープを掴んで素早く手前に引き寄せ、中を確かめてからタコが入っていれば後の甲板に置き、入っていなければすぐに海に戻す。
この時のツボのロープに手をかけるタイミングが難しい。早すぎるとツボの咽喉元を掴むことが出きす、ロープを掴んでもツボを自由に操作できない。遅すぎるとツボの結び目がローラーに乗ってしまい、ツボがローラーに振り回されることになる。それを避けようとすると、指をローラーに巻き込まれる危険がある。これには技術的な問題だけでなく、上背や腕の長さ等、体格の問題も絡んでくる。
後方に陣取った1人がタコ壺からタコを出し、空になった壺を海に戻す。と言ってもツボに手を突っ込んで引っ張り出そうとするとタコはピッタリと壺の内側に貼りついて金輪際取り出せなくなる。
タコをツボから出すには、あらかじめ用意してある塩水をかける。すると濃い塩水を目に浴びたタコはたまらず自分から出て来るのである。
壺と壺の間隔が10m程あるので、その間にタコが出てくればよいのだが、なかなか出てこない場合や時には2つ,3つと連続して入っている場合もあり、だからと言って順番を越えて後のツボを先に海に戻すことはできないので、忙しい時にはタコを取りだせないまま海に戻すこともある。戻しても次に入ることは確実なので無理はしないのだ。
タコを繰ると言うのはそれだけの作業であるが、後ろにいる作業者にはタコを船底の生け簀に放り込んだり、生け簀の状態を良好に保つと言う作業がある。
タコは大きさによって別々の生け簀に入れるが、生け簀の収容力に限りがあり、満杯になると酸素不足でタコが生け簀から這い上がってきたりする。(タコが取水口を塞いでしまって新鮮な海水が入って来なくなることもある)
あまりに獲れすぎるとタコが死んでしまうことがあるので、そうなる前に〆る必要がある。後方の作業者は、タコが入っていなければ何もすることがなく暇を持て余すが、獲れすぎると超多忙になるのである。
7月27日(日)
中2日ないし3日おいて次の漁に出るのが本来だが、前日,200個ほどを残したまま中途で終っているので、その残り分を引き上げるため2日続きの出漁となる。
7時前に出て漁場に着くと、前日帰る際につけて置いたウキが見当たらず、改めてサジで探り当ててからの引き上げ開始となる。
はじめは船の舳に陣取って、ローラーで引き上げられてくるツボを取り、タコが入って入れば後ろに置き、空であればすぐに海に戻すと言う役を教わったものの、タコツボのロープに手をかけて引き寄せるタイミングが難しく、また体格の違いもあってローラーの回転に追いつかないので、後ろでタコが入っているツボからタコを出して、ツボを海に戻す役に代わってもらう。
サジで探り当てた辺りの壺は前日引き上げて再投入したもので殆ど入っていなかったが、少し進んで前日残したツボになってからは俄然忙しくなる。
そこから先の壺は投入後、中4日もおいているので次々と上がって来る壺の4割以上にタコが入っていて生け簀に放り込む暇さえなく、船上をタコが這いまわると言う状況で、3つ目の生け簀も満杯になり、苦し紛れに這い上がって来たタコが強い陽射しにデレ~と伸びてきたので慌てて〆にかかる等、大わらわとなる。
9:40に潮流が変わりローラーの回転がきつくなったが、未だ半数近くが残って要るので潮に逆らってさらに作業を続行し、11時に終了。
4つ目の生け簀も満杯の推定200kg、Takaさん必死の生け締めも追いつかないほどの大漁となって意気揚々と引き揚げる。