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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ケニー・バレルの全貌

2007年02月23日 22時15分46秒 | JAZZ
ケニー・バレルというとブルーノートとかブレステッジみたいな硬派のジャズ・レーベルの人というイメージがあるけれど、このアルバムはクリード・テイラーが主催するヴァーブレーベルの一枚。この人がヴァーブに一体どのくらいアルバムを残しているか、浅学の私は知らないけれど、どうもバレルとヴァーブはイメージが合わない気がする。内容的にはギル・エヴァンスを編曲に向かえ、ジャズ・オーケストラをバックに様々な音楽スタイルにバレルが挑戦しているから、「ケニー・バレルの全貌」というタイトルはあながち間違えもないのだけれど、「○○の全貌」とか「△△の神髄」とか「××の芸術」という、いかにも60年代的な生真面目なノリを感じさせるタイトルは、どうも「豪華な高級イージー・リスニング・ジャズの老舗ヴァーブ」らしくないシリアスさあって居心地が悪い。きっとレーベルがインパルスとかならぴったりなのもしれないけれど....。

 ともあれ、音楽的には「豪華な高級イージー・リスニング・ジャズの老舗ヴァーブ」の面目躍如たる仕上がりではある。編曲がギル・エヴァンスなので、仕上がりはドン・セベスキーのような華麗さはなく、けっこう渋めのムードだけれど、10分近い2曲目「ロータスのテーマ」はスパニッシュ調+ボレロ風なテーマでぐいぐい盛り上げていくあたり、誰だってマイルスの「アランフェス」を思い出してしまうだろうし、この時期でイージー・リスニング・ジャズといえば絶対はずせないボサ・ノバも5曲の「月と砂」で登場、6曲目「ロイエ」はカリプソ風なリズムを使ったラテン調。クラシックのアダプテイションとしては有名な英国民謡を都会調のスウィンギーなアレンジで演奏した7曲目「グリーン・スリーブス」や4曲目「前奏曲第2番(ガーシュウィン)」など登場しその総花的な豪華さは、バレルやエヴァンスと同時に全体としてはクリード・テイラーのセンスとしかいいようがない感触があるのだ。

 おまけに1曲目「ダウンステアーズ」と3曲目「テラス・テーマ」は、スモール・コンボの曲で「イントロデューシング・ケニー・バレル」以来の、ちょっとアーシーなブルージーさ都会の夜的なリラクゼーションがほどよくブレンドされた正調バレル節が堪能できる演奏になっているし、9曲目「ブレッド・ウィナー」はモードっぽい、当時としてはかなりコンテンポラリーな演奏(ついでにいえばバーニー・ケッセル的スウィング感もある)といった具合に、イージーリスニング的な楽曲のはざまにジャズ的醍醐味を感じさせるナンバーをしっかり配置しているのはさすがだ。

 そんな訳でわずか40分足らずの音楽ではあるけれど、この全方位的な充実感はなかなかもので、最後まで聴いたら、やはりこのアルバム・タイトルは「ケニー・バレルの全貌」で良かったのか....と思えてきてしまった(今なら原題通り「ギター・フォームス」でも感じ伝わるんだろうけど)。ともあれ、CD初期からカタログにのっかっていたがジャズの名盤であることが納得できる仕上がりではある。
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サラ・ヴォーン・アット・ミスター・ケリーズ+11

2007年02月23日 00時55分58秒 | JAZZ
 サラ・ヴォーンといえば、丁度去年のいま頃スタジオ録音の傑作「イン・ザ・ランド・オブ・ハイ・ファイ」を取り上げましたけど、これはそれと同時期に出たライブ盤です。個人的にはいろいろな意味で完備した「イン・ザ・ランド・オブ・ハイ・ファイ」の仕上がりが好きなのですが、おそらく、一般的にはこちらの方が有名なんでしょうね。なにしろ、タイトル通りシカゴにあるらしいミスター・ケリーズでのライブ・パフォーマンスということ自体にまず価値がありますし、若き日のサラ・ヴォーンも絶好調ということで、おそらく「ライブの大傑作」という価値は揺るぎないものがあるんだと思います。

 内容としては、シンプルなピアノ・トリオをバックに、有名なスタンダード・ナンバーばかりを歌っていますが、有名なクラブでのライブ・パフォーマンスということで、ミディアム・テンポの作品ばかりを歌い、適度なリラクゼーションとボーカルの即興味、そしてアフターアワーズ的なムードが横溢した、いかにもジャズ、これがジャズだ....という感じの仕上がりです。ジャズというと、インタープレイだと、超絶技巧のソロだとか、いわゆる音楽主義的な側面を追求したものもいいですが、こういう酒のお供に...的なものもジャズのひとつの保守本流な訳で、このアルバムなどまさにそういう方面での最右翼作品といえます。「ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー」で、マイクを蹴飛ばしドカンと雑音が入った後、なにくよぬ顔で歌詞を変えてその場をやりすごす有名な場面での雰囲気など、ある意味最高にジャズ的瞬間といえるかもしれません。

 ただ、文句をつけるとすると音質というか、バランスですね。ボーカルがオンに収録されているいいとしても、いささかドラムのレベルが低いというか、輪郭がくっきり収録されておらずボヤケ気味で、全体としてはAM放送的なバランスなのが、タイコ大好きの私としてはいささか不満です。これでもう少しドラムの音がシャープに収録されていて、リズムをきっちり隈取ったような録音だったら、モノラルだろうとなんだろうと、ほとんど最高だったんですがねぃ。そうだ、今度、自分でもう少し、リズムがくっきりするようにリマスタリングしてやるか(笑)。
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