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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ビートルズ/ヘルプ~4人はアイドル

2010年08月29日 19時01分21秒 | Beatles
画像と音声を最新技術で修復したリストア・ヴァージョンにドキュメンタリーなどを収めた2枚組で、確か2,3年前に購入したものだが、未開封のままだったもの。ビートルズの映画といったら、やはり筆頭に来るのは「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」だろうが、ここに何度も書いている通り、カラフルで華やいだ「ヘルプ~4人はアイドル」の方も、この作品後半に横溢する夏のムードとあいまって、本作を初めて観て以来、個人的に忘れがたい作品となっている。

 さて、その修復効果だが、これはもうメインタイトルからして色彩が見事に蘇っている。元々この本作は前作のモノクロに対し、うってかわってのカラー映画ということで、色彩設計もかなり入念に行われたのだろう。テレビやリバイバル上映で観ても原色を多用したカラフルでポップな色彩感は見事な生彩を放っていたが、リストア版で観ると、後半のバハマはもちろんだが、4人が暮らすアパート風な部屋の配色など「本当はこういうものだったか」と感嘆してしまうほどだ。私がこの映画を初めてテレビで観たのは、1971年のことだから、当時のフィルムもおそらく大した状態でなかったろう。故におそらくこのヴァージョンは私がこれまで観た最高の画質なのは間違いない。

 次に音声だが、元々モノラル音声だったは本編を、リストア・ヴァージョンではDTS 5.1chにリミックスにしなおしている。もちろん、「めまい」のようにSEまで立体化しているところまではやっていないようだが、オリジナルのナロウな音質がほぼCD並のレンジ、シャープで粒立ちのよう精細感を獲得しているのは特筆ものだ。あと、いうまでもないことだが、音楽は当然ステレオの効果は絶大でビートルズの音楽もこれまでにく躍動しているし、ケーン・ソーンのスコアの方は全体にかなりいい感じでサラウンド音響化されているような気もする(なにしろ、既成ソースから転用したと思われるクラシックの曲との音質の差がはっきりしてしまうほどなのだ)。

 まずはボーナス・ディスクにはいくつかのドキュメンタリーが収録されているが、メインのものは、たぶん、「アンソロジー」用に集めたソースを流用しているのだろう、珍しいフィルムが沢山出てきて楽しい。関係者では監督のR.レスターはもちろんだが、共演したエリノア・ブロンやヴィクター・スピネッティー出てくる。あとは修復作業のドキュメントや4人の演技にまつわるドキュメントが収録された他、予告編も3つ収録されている。私は初めて観るものばかりだが、本編には登場しないシーンなど含まれており、今や記録としても貴重だ。

 という訳で、ここまで見事に修復されているのなら、当然マスターはHD用に作られているに違いないだろう。ならばぜひこれはブルーレイでリリースしてもらいたいものだ。ハイビジョンで観る本編はさぞ見映えがすることだろうと思う。対象が超大物ビートルズともなると、契約の問題も難航しそうだから、そうそう簡単にはいかないだろうが、これは是非実現を望みたい。あと、当然「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」の方もリストア・ヴァージョンを望みたいものだ。
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with the BEATLES

2010年02月16日 23時32分58秒 | Beatles
 ビートルズの新リマスター盤発売は、昨年後半の音楽シーンにとって特筆すべき大きなイベントといえた。存続していないバンドの既発アルバムを新装発売するだけで、あれだけの騒ぎになってしまうのはさすがビートルズというべきだが、私もその時、ステレオとモノ・ボックスを勇躍して購入し、その時の興奮状態から(笑)、かろうじて「プリーズ・ブリーズ・ミー」だけは、レビューすることができたものの、それからあっという間に五ヶ月が経ってしまった。部屋に鎮座しているどでかいふたつ箱を見て、いつも「あぁ、これも聴かなくちゃな....」とは思っていたのだが、今夜、あることがきっかけで(※)、急にその気になったものだから、今夜は「プリーズ・ブリーズ・ミー」に続く「ウィズ・ザ・ビートルズ」を聴いてみた。

 さて、まずモノラル・ヴァージョンの方である。前回も書いたとおり、ビートルズのCDといえば、従来盤は第4作目まではモノラルで発売されていたのであり、まずは、音質比較という点からすれば、新装盤もモノラルから聴くのが筋というものだろう。今回はスタックスのヘッドフォンでもって、まずは従来盤、そしてこのモノラル・リマスター盤と、じっくりと聴いてみたが、一聴して感じたことは、「プリーズ・プリーズ・ミー」同様、従来盤に比べ音が非常に落ち着いているということだ。これを聴いて改めて従来盤を聴くと、やや音がざらつき気味で、若干浮ついた印象を感じるほどで、とにかくこちらは中域から低域にかけての音がふっくらゆったりとして、高域が滑らかになっているのが特徴といえるだろう。私の好きな「ナット・ア・セカンドタイム」のピアノなど、ぐっと実在感を増している。ただし、例えば「ロール・オーバー・ベートーベン」のような曲だと、従来の冴え冴えとしたクリアさが懐かしい気にもなる。要するに、分析的、生々しい音がハイファイ的と思うムキには(私もそのひとりだが)には、イマイチ有難味に欠ける部分もなくもないというところだ。

 次にステレオ・ヴァージョン。こちらも「プリーズ・プリーズ・ミー」同様に左にインスト、右にボーカルが泣き別れになった往年のステレオ・イメージをそのまま踏襲したバランスでマスタリングされている。このアルバムのステレオ・ヴァージョンの大半の曲は、実は既にキャピトル・シリーズで先行してCD体験してしまっている訳だけど、キャピトルのように音像を肥大化させず、ストイックかつストレートにステレオ化しているだけに逆に鮮度感が大きなアドヴァンテージになっている。もちろん、賛否は当然あるだろうが、個人的にはやはりボーカルとインストを切り離したが故に得た、分離の良さは捨てがたいものがある。「テル・ゼア・ウォズ・ユー」などは、アコースティックなアンサンブルで出来上がった曲なだけに、左右の泣き別れのバランスにもそれほど違和感がなく、アコギの音色のリアルさ、スタジオの残響、ボーカルの実在感などがダイレクトに伝わってくるし、「デヴィル・イン・ハー・ハート」の左チャンネルに聴こえるパーカスのくっきり感など、モノラルにはないハイファイ感がある。


※ ネット上の各種サイトで電撃的に広まった『アビーロード・スタジオ、売却へ 英EMI経営難で』という記事を感慨深く読んでいたことがきっかけ。
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ジョン・レノン/ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)

2009年12月24日 23時04分31秒 | Beatles
 このシングルを購入したのは、確か1972年、私が中学1年の時だったと思う。当時、ジョン・レノンが作ったクリスマス・ソングという触れ込みで、多少話題にはなったように思うが、これが大ヒットしたという記憶はなく、私自身もクリスマス云々に関係なく、単に「ジョンのシングルの一枚」として購入してきたような気がする。ビートルズ関連のクリスマス物といえば、個人的にはビートルズ活動中、毎年ファンクラブの会員宛に配布されたクリスマス・メッセージ集があり(もちろん海賊盤という形でだが)、これがほとんど決定打になっていたため、ジョンのこの曲はちょっと影が薄い気もしたものだ。クリスマス・シーズンにこれが街角で流れていないこともなかったけれど、そう沢山という訳でもなく、流れていたとしても「好き者がにやりとする」程度だったはずだ。そんな訳で、この曲、出てしばらくは、あまりクリスマスらしい佇まいを感じさせなかったような気がする。

 以来三十数年、先日、あるところでお茶を飲んでいたら、この「ハッピー・クリスマス」のカバーが不連続だったが都合3曲くらい流れたことがあった。仕上がりやパフォーマーはそれぞれだったが、どれもR&B風にアレンジした「濃い」ヴァージョンであった。私はぼんやりとそれを聴きながら、「あぁ、そういえば、この曲ももう立派にクリスマス・スタンダードになったんだな」と、ちょっと感無量になってしまったものだった。そういえば、近年、街角からオリジナルのこれが聴こえてくる機会もずいぶん増え、そもそもこれが流れると、聴いているこちらからして、「あぁ、クリスマスだなぁ」と思うようになったのは、やはり時の流れという他はない。別にクリスマス・ソングに限ったことではないが、曲なり、歌なりがスタンダードとなり、曲自体にある種の風格というか、オーラのようなものを滲ませるようになるには、やはりこれだけの年月がかかるのだと、つくづく思ったりしたものだ。

 ちなみにこのシングル、B面は「リッスン・ザ・スノウ・イズ・フォーリング(ほら、聞いてごらん、雪が降っているよ)というヨーコが作ったクリスマス・ソングで、仕上がりもごくまっとう、フォーク調の美しい曲だった。ヨーコといえば例のけろけろ声で歌うアヴァンギャルド作品というイメージがあるが、こういうオーソドックスなスタイルでも佳曲をいくつか残していて、これなど「ナウ・オア・ネバー」あたりと並んで、その代表曲だと思う。もっともこちらは現在でも十分に埋もれ続けている作品であるが....。
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PAUL MCCARTNEY / Live in London 2007/10/25

2009年10月28日 23時32分47秒 | Beatles
 10月8日にNHKBSハイビジョンでオンエアされた「ワールド・プレミアム・ライブ」でオンエアされたもの。先のクリームもそうだったけれど、やはり国営放送同士ということで、こういうプログラムはオンエアしやすいのだろう。日頃NHKの報道姿勢には怒りを感じることもしばしばだが、こういう点に関しては国営放送の良質な面が出ていると思う。時は2007年10月25日、イギリス・ロンドンのラウンドハウスで行なわれたパフォーマンスで、実際はどのくらい時間をかけたステージだったのはよくわからないが、約1時間に編集したものがオンエアされた。

 冒頭は 「マジカル・ミステリー・ツアー」 で、そこから比較的近年の曲を中心に前半が進行(途中ストリングスも入る)。後半はビートルズ・ナンバーのオンパレードという必殺の構成。このステージの時点でポールは既に65歳だが、風貌にせよ、ボーカルにしたところで寄る年波には勝てないところがないでもないが(特に序盤ではなかなかエンジンがかからないのか、多少はヨレていたところが散見)、全体としては驚くほど元気であり、若いバンド面のやや野放図なパワフルさも良い面に作用して、問答無用に楽しめるステージになっていた。それにしてもステージ上でのポールの様々なしぐさやアクションを見るにつけ、「きっと、この人は死ぬまで、ビートルズ時代のアイドル的イコンを守り続けるのだろう」とつくづく思ってしまった。凄いことである。


MAGICAL MYSTERY TOUR
FLAMING PIE
GOT TO GET YOU INTO MY LIFE
DANCE TONIGHT
ONLY MAMA KNOWS
BLACKBIRD
CALICO SKIES
ELEANOR RIGBY
BAND ON THE RUN
BACK IN THE U.S.S.R
LIVE AND LET DIE
BABYFACE
HEY JUDE
LET IT BE
LADY MADONNA
I SAW HER STANDING THERE
GET BACK
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ステレオ これがビートルズ Vol.1 (Please Please Me)

2009年09月24日 00時07分18秒 | Beatles
 これはおまけ、「ステレオ! これがビートルズ Vol.1」というタイトルは、なにやらベスト盤のようだが、実は「プリーズ・プリーズ・ミー」の日本ヴァージョンである。確か1966年の来日に併せて発売されたものだが(70年代になってオデオンからレーベルがアップルに変わっても日本市場には流通していた)、ごらんの通りジャケットとオリジナルまるで異なり(ジャケ内には綴じ込みで数ページの写真集がついていたと思う)、曲順が一部変更された珍ヴァージョンとなっている。別項にも書いた新リマスター盤はステレオ・ヴァージョンだが、日本では「プリーズ・プリーズ・ミー」の収録曲がステレオで発売されたのは(一部コンパクト盤は別として)、多分これが初めてだったと思う。タイトルに「ステレオ」と誇らしげにあるのも、おそらくそういう事情があったせいだ。

 当時-といっても70年代初頭-これがベスト盤ではなく、実はデビュー・アルバムの「プリーズ・プリーズ・ミー」だったことを知らなかった私は、豪華な写真集に惹かれ、このアルバムを購入したはいいが、中身は妙に地味でけっこうがっかりしたものだった。ちなみに今から思うと、この曲順の変更はこれはこれで悪くないと思う。各面のトップが「プリーズ・プリーズ・ミー」と「ツイスト・アンド・シャウト」になっているのは、おそらくどちらも日本でシングルカットされ、大ヒットしたからだろう。とくに前者は日本での実質デビュー・シングルで、かつ「抱きしめたい」より流行ったという人もいるくらいの大ビットシングルだった。また「P.S.アイ・ラヴ・ユー」のようなしっとりした曲で締めくくるのというのも、けっこう日本的なセンスなのかもしれない。


[Side:A]
01.プリーズ・プリーズ・ミー / 02.アンナ / 03.アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア / 04.ボーイズ / 05.ミズリー / 06.チェインズ / 07.アスク・ミー・ホワイ

[Side:B]
08.ツイスト・アンド・シャウト / 09.蜜の味 / 10.ラヴ・ミー・ドゥ / 11.ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット / 12.ベイビー・イッツ・ユー / 13.ゼアズ・ア・プレイス / 14.P.S.アイ・ラヴ・ユー
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The BEATLES / Please Please Me その2

2009年09月23日 12時21分18秒 | Beatles
(続き) 実際に聴いてみると、懐かしいような、それでいて新鮮なような、奇妙な感覚にとらわれる。懐かしいというのは、このステレオ・ヴァージョン、左右のバランスが左チャンネルがインスト、右チャンネルがヴォーカルという往年のパターンをほぼ踏襲しているからで、大昔東芝から沢山でていたステレオ録音のコンパクト盤だのを思い出せるのだ。なにしろ、当時日本で広く出回った編集盤「ビートルズ!」、「ビートルズNo.2」、「ビートルズNo.5」といったアルバムは全てモノラルだったので、あえてステレオ録音を聴きたければコンパクト盤で....みたいな複雑な状況になっていたのである。なので、このステレオ・ヴァージョンを聴くと、大昔、初めてステレオ版の「プリーズ・プリーズ・ミー」だとか「フロム・ミー・トゥ・ユー」「サンキュー・ガール」などをコンパクト盤で聴いて、その音の異同にギョっとした感覚が甦ってしまったりするのだ。

 次に新鮮さとは、これこそ新リマスターの効果だろう。オーバーにいえば瞠目したくなるくらいに激変した「音の太さ」と「ヴォーカルの鮮度」である。その大時代的なチャンネルの振り分けの是非はともかくとして、とにもかくにも、ここではヴォーカルとインストが左右に切り離された物理的条件の良さが物をいっているののだと思う。左チャンネルで聴こえるインスト、特にベースの太さと、くっきりと粒だったヴォーカルの鮮度感、コーラスの音離れは、これまで聴いたことも無いビートルズの音だと思う。
 ついでにいえば、リンゴのドラムはこのリマスターでは、ベースに比べるとけっこう大人し目のバランスだが、「蜜の味」で左チャンネルで聴こえるリンゴの刻むブラシの生々しさなど特筆ものだし、ほんのわずかだが、時にドラムス・ブースの空気感のようなものまで感じとれるのも、これまでよりぐっとSN比がよくなり静寂感がましたからだろう。あと、オーバータビングされたおぼしき楽器(ハーモニカとかピアノ)が忽然と右チャンネルに現れる時の妙にリアルな感触も、そのバランスに賛否はあるだろうが、個人的にはけっこう楽しめた。

 という訳で、このステレオ・ヴァージョンだが、-これはモノラル・ヴァージョンと同様-日本人が好みそうな、あざといまでにエッジを際だたせたり、分析的に細部を描写するような方向とは違ったポリシーで整音されことは明らかだ。少なくともパッと聴き、派手な音ではないのも確かであり、「期待したけど、全然音良くなってねーじゃん」みたいな意見は、おそらくこうした面からきているのだろう。ちなみに今回のリマスターでは基本的な左右のバランスは以前のものを踏襲していると思うが、あの泣き別れのバランスに多少は考慮したのか、両側の音をいくらか真ん中に音を寄せているような気もする。ちなみにいえば、今の技術を使えば、ボーカルを真ん中にして、インストを左右に散らすことも、元が2チャンネルのソースであっても、やってやれないことはないと思うのだが、さすがにそこまでいじらないのは、相手がビートルズだからなのか、それとも保守的な英国の見識が反映したというべきなのだろうか。
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The BEATLES / Please Please Me その1

2009年09月23日 11時49分49秒 | Beatles
 1963年の発表のビートルズ、歴史的デビュー・アルバムである。ブライアン・エプスタインの東西奔走もあって、ようやくEMIと契約に漕ぎ着けたビートルズが、1962年のデビュウ・シングルの「ラブ・ミー・ドゥ」がますまずヒット、続く「プリーズ・プリーズ・ミー」が念願のナンバー1ヒットになったことを受け、急遽制作されることとなったもので、収録された14曲のうち4つは既発シングル収録曲だから、当日録音されたのは10曲ほどだが、ビートルズはこれをほぼ一日(10時間くらいだったらしい)で録音が終了したとか、当日のジョンは風邪を引いていて、最後の「ツイスト&シャウト」は喉がつぶれる寸前だったので、ほとんどぶっつけであのテイクを決めたとかいうエピソードは、ビートルズ・デビュウ期を彩る伝説のひとつになっている。

 ポールのカウントから始まる「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」に始まり、ジョンの絶叫で締めくくる「ツイスト・アンド・シャウト」まで、当時のビートルズのもっていたフレッシュで荒々しいパワーがビビッドに伝わってくるアルバムだが、同時に「アスク・ミー・ホワイ」「P.S.アイ・ラヴ・ユー」「ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット」といったバラード系の作品も魅力的だ。ビートルズはデビュー当時からロック系の作品とは、ひと味違ったこうしたメロディックな感覚があったこと忘れられないところで、いわばこれらを両極として、その中間に6曲のカバー作品なども折り込み、デビュウ・アルバムの仕上がりとしは意外にも多彩な仕上がりになっているのだ。まぁ、このあたりはキャバーン・クラブその他での経験がものをいっているのだろうが、このアルバムにはデビュウ作らしいその瑞々しさ、若々しさといった魅力は当然あるにしても、それと同時に「既に十分に鍛錬され、手の内が沢山あるバンド」というプロ的な感覚が物をいっていることも忘れられないと思う。

 さて、今回の新リマスターでは、初期の4作が従来のモノラルからステレオ・ヴァージョンに切り替わったのが話題といってもいいだろう。ここでも何度も書いているとおり、もちろんモノラル・ヴァージョンも発売されてはいるのだが、あちらは分売もされないマニア向けの限定発売だから、アーティスト側もここにいたって公式音源として、晴れてステレオ・ヴァージョンを認定した....といってもいいかもしれない。とにかく、その是非についてはこれからも、笑えるほどに議論噴出であろうが、なにはともあれ、これからしばらくの間は泣いても笑っても、「公式なビートルズの音」はコレなのである。(続く)
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The Beatles (Long Card Box With Bonus DVD)

2009年09月22日 16時17分20秒 | Beatles
 こちらは現在、日本でも大ベストセラーを記録中のビートルズの全作品(14作品)をステレオ・ヴァージョンで収めたボックス・セット(ザ・ビートルズ・ボックス)である。大昔の既発音源を単に整音処理して、丸ごとセットしてた価格も3万円はしようかという代物が、この不況下で軽々と大ベストセラーにしまうビートルズは、解散して40年経った今も化け物アーティストであり続けていることを実感してしまう。今回のビートルズのリマスター音源としては、先日取り上げたモノラル音源を収めたボックスも同時に発売されているが、あれはあくまでもマニア向けの限定盤だから(もちろん分売もされない)、これからのビートルズは初期、中期、後期に関わらず、ここに収録された音が基準になって行くことになるのだろう。

 さて、今回はセットにボーナス・ディスクとして入っている各アルバムのミニ・ドキュメンタリーを収録したDVDを観てみた(ちなみにこのドキュメンタリーはそれぞれのアルバムにも収録されている模様)。ミニ・ドキュメンタリーというから、リミックスのプロセスでも公開されているのかと思ったら、そういうもんではなく(当たり前か-笑)、全部12枚あるビートルズのオリジナル・アルバムについて、アルバム収録された曲はもちろんだが、メンバーや関係者の証言を流しつつ、当時の動画や静止画をシンクロさせながら5分程度にまとめている。ちょうど「アンソロジー」のダイジェスト版のような体裁だが、おそらくあれで集めた豊富な素材や製作に注ぎ込んだ予算の大きさがものをいっているのだろう。短いとはいえ、映像処理や音源の扱いなど、ビートルズに相応しい無茶苦茶リッチな仕上がりになっている。

 ちなみに私の購入したのは輸入盤なので、日本語の字幕がついていないのだが、英字幕にしておけば、ここに出てくる位の証言ならば、こちらの頭に既に入っているビートルズに関する知識でなんとなく補完できてしまうのが、なんだか当方の哀しきファン気質を感じさせて、何故だかとても可笑しい....などと、どうでもいいことを書いたついでに、せっかくだから、ここからはしばらくは今回でたモノとステレオ音源の比較でもしつつ、ビートルズの音楽を今一度クロノジカルに眺めていきたいと思う。なにせ6万円の買い物である、HMVじゃこのボックスセットを「一生ものの家具」みたいな言い方しているけれど、家具なら飾っておくだけじゃなく、使わないともったいないもんね。
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Beatles In Mono (ザ・ビートルズ・モノ・ボックス)

2009年09月13日 16時10分56秒 | Beatles
 09年09月09日発売ということで大いに盛り上がるビートルズのリマスター盤であるが、昨日、我が家にも到着した。先日も書いたとおり、今回のリマスターは2本立てであり、まずは今後これがレギュラーの公式音源となる全曲ステレオでリマスターされたもの。そして、何かとマニアで話題になるモノラル・ヴァージョンのリマスター化となる。前者ついては分売もされるが、今回の発売は、いわゆる「大人買い」をするリスナーのためのボックス・セットがメインというなのは間違いないだろう(87年にはボックスセットとか出たかどうか記憶にない)。当然、私はその両方を予約したが、さすがに国内盤は高すぎるので、輸入盤で購入した。それでも両方で6万円近くの買い物となってしまい、初めて聴くならいざしらず、既に何種類のフォーマットで所有している「同じ音楽」を聴くのに、これだけの大枚をはたくとは、我ながらマニアの悲しい性を感じずにはいられない。

 さて、まずは「In Mono」から聴いてみた。こちらは「イエローサブマリン」と「レット・イット・ビー」を除く全オリジナル・アルバムが、紙ジャケ仕様で白いボックスに収まっているが、これの「売り」としては、やはり中期ビートルズのモノラル・ヴァージョンが聴けるというところだろう。「ペパーズ」や「ホワイト・アルバム」といったアルバムの音楽は、ステレオ・ヴァージョンより、モノラル・ヴァージョンの方が音圧、音のまとまりといった点で、大昔からビートルズの意図したサウンドに近いといわれているし、それを肯定するかのようなジョージ・マーティンからの「お墨付き」があったりもしたせいで、音にうるさいマニアから需要がけっこう高いのである。また、ステレオとモノとはリミックスに際して、聴こえてくる音の細かい異同、収録時間の長短なども少なからずあって、そのあたりも、マニアには見逃せない点になっているのは周知のとおりだ。いずれにしても、キャピトル盤に続いて、モノラル・ヴァージョンもようやく粗悪な海賊盤業者の餌食から解放されたというところだろうか。

 とりあえず、今「プリーズ・プリーズ・ミー」を聴いているところだ。久しぶりにメインのオーディオ・システムに電源を入れ、あまりに子細とはいえないものの、とりあえず旧盤と聴き比べしてみたが、ことリマスターによる音質の向上という点に関していうと、少なくとも旧盤とそれほど極端な違いはないように感じる。少なくも洋楽アーティストの国内リマスター時にあるような、メーターを振り切りそうなくらい不自然に音圧を上げてみるとか、異常に高域と低域をブーストするみたいな「あざとさ」は一切ない。リマスターの方向性としては、むしろ昨今のリマスターとは逆に、音の暴れやノイズを出来る限り抑制して、「聴き飽きない落ち着いてサウンド」を目指しているようにすら感じる。この時期のビートルズのサウンドは、ボーカル、ギター2、ベース、ドラムというシンプルそのものなアンサンブルだが、その隙間だらけサウンドから一瞬浮かび上がる静寂感といった部分は旧盤にはなかなか感じとれなかった感触だと思う。

 そんな訳なので、このモノ・リマスター盤、音がシャープになって、ディテールが一層細かく聴き取れるようになった....みたいな分析的高解像度が大好きな日本人が好むリマスターとは、ちょっと違うかなという感じだが、ボーカルのリアルさ、全体のサウンドの「太さ」のようなものは、大分向上しているように感じている。ひとくちにいえば「SNをぐっと向上させ、アナログライクな太い音に仕上げ直した」といったところだろうか(さぞやむずかしいリマスタングだったろう)。聴こえてくる音楽では、特にジョンのボーカルの生々しさが素晴らしい。個人的にあまり好みではない「アンナ」とか「ベイビー・イッツ・ユー」が、こんなにじっくりと聴けたのは久しぶりだ、リマスターのせいだと思いたい。もちろんラストの「ツイスト&シャウト」の絶叫ぶりも一層リアルになってぐっと来るし、なにしろ「これからはこの音だ」という感が強い....おっと、これからはモノじゃなく、ステレオ・ヴァージョンなのか、そっちも近日中に聴いてみよう。うーむ、楽しみである。
 
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ビートルズ 新リマスター盤 発売決定!

2009年04月14日 12時36分44秒 | Beatles
 まさにファン待望である。ビートルズの一連のアルバムが初めてCD化されたのが1987年だから、ほぼ四半世紀(22年振り)の新リマスターである。ビートルズについては、その間に大作「アンソロジー」は出たし、「イエローサブマリン」「ルット・イット・ビー....ネイキッド」「ラブ」といったリミックス盤、ベスト盤「1」、そして近年だとキャピトル編集盤なども出たから、なにかと話題に事欠かないところはあったとしても、ことオリジナル・アルバムについては、初出以来、原典固守の姿勢を崩さず全く音なしの構えだったからである。恐らくジョージ・マーティンの意向でそうなったのだろうが、ファンはやきもきしていた。

 それはそうである。ビートルズと並ぶ大物は次々にリマスターが試みられ、その都度賛否はあったとしても、聴こえてくる音は大きく変化してきた経緯をファンは十分承知していたし、ことビートルズに関しても、何度か試みられたリミックスや、キャピトル盤で獲得した音圧を聴くにつれ、オリジナル盤についても、今の基準で施されたノイズ除去、音圧増強、EQ調整でもって、CDというフォーマットを限界まで使った新しいサウンドを聴いてみたいと常々待望していた訳だ。というか、そもそもビートルズ以外の大物で、ここ十年くらいの間リマスターされなかったアーティストなどもはや居ないとった状況で、どうしてEMIはこんなおいしい商売ネタを放置しているだろう....という下世話な憶測を呼んだくらいだったのである。

 さて、今回の新リマスター盤の特徴といえば、リマスタード・サウンドがどう仕上がっているかは、聴いてみないとわからないものの、フォーマット上の変更としては「プリーズ・プリーズ・ミー」「ウィズ・ザ・ビートルズ」「ハード・デイズ・ナイト」「ビートルズ・フォー・セール」がステレオ・ヴァージョンで収録されることだ。「パストマスターズ」に収録されたトラックがどういう扱いになるか今一歩判然としないところもあるが、いずれにしても、これでビートルズの公式音源はすべてステレオが標準になるということだろう。ちなみに後方に追いやられることになるモノラル音源についても、EMIは商売に抜かりはない、紙ジャケその他、マニア向けの仕様にしたモノラルボックスということで、一括で発売されるようだ(オリジナル・シングルも発売するという噂もある)。

 という訳で、発表の暁には、リミックスのディテール、異同、音質の仕上がりなどを巡って、またぞろ侃々諤々の議論になるに違いない。あと、今から出てくることが必ず予想がされるのが、旧CDの方が良かったという向きが現れて、その論に説得力があったりすると、今度はそちらが高値を呼んだり、希少化したりするだろうなということ、これは絶対出る(笑)。
 ついでに書けば、個人的にはCDの上位フォーマットであるSACDやDVD-Aでぜひ出して欲しかった。おそらくビートルズであれば、リマスターに当たってはCDより遙かにオーバースペックな環境でデジタル・マスターが作られているに違いないので、それに少しでも近づいたフォーマットで聴きたいというのは人情だと思う。ともあれ、9月9日全世界同時発売である。
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PAUL MCCARTNEY / Nearly 10 Years

2008年04月30日 12時38分23秒 | Beatles
 ここでもけっこうな数レビュウしていた通り、昨年の後半からこの冬くらいまでかなり頻繁にポールの作品を聴いていた(Walkmanでだが)。特にここ10年間に出した近作は、どれも一聴して枯れた風情なのが、どうしようもなくポールの年齢を感じさせて気にはなった気になったものの、聴きこむとこれがなかなか滋味があるというか、渋い良さを感じさせて、寒い冬の最中、外を移動中の町中や車中でずいぶんお世話になったものだった。
 で、そうなると、またぞろやり作りたくなってくるのが私家版ベストである。Walkman上のリスト機能をつかってあれやこれやと試みていくうちに以下の構成で落ち着いたのだが、個人的にはこういう曲順、選曲だとここ10年のポールが渋い良さを要領よく堪能でき、楽しめる。後半のメドレーから大作「雨粒を洗い流して」そして「フリーダム」と流れて行く構成はいかにも自分の趣味が出た感じで(笑)、かなりノッて聞ける。

01.ファイン・ライン (Flaming Pie `97)
02.エヴァー・プレゼント・パスト (Memory Almost Full `07)
03.シー・ユア・サンシャイン (Memory Almost Full `07)
04.ジェニー・レン (Chaos And Creation In `05)
05.ドライヴィング・レイン (Driving Rain `01)
06.アイ・ドゥ (Driving Rain `01)
07.プロミス・トゥ・ユー・ガール (Chaos And Creation In `05)
08.ディス・ネヴァー・ハプンド・ビフォア (Chaos And Creation In `05)
09.愛するヘザー (Driving Rain `01)

10.ヤング・ボーイ (Flaming Pie `97)
11.イフ・ユー・ウォナ (Flaming Pie `97)
12.ヴィンテージ・クローズ (Memory Almost Full `07)
13.ザット・ワズ・ミー (Memory Almost Full `07)
14.フィート・イン・ザ・クラウズ (Memory Almost Full `07)
15.ハウス・オブ・ワックス (Memory Almost Full `07)
16.雨粒を洗い流して (Driving Rain `01)
17.フリーダム (Driving Rain `01)
18.グレイト・デイ (Flaming Pie `97)
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ポール・マッカートニー・アンソロジー

2008年02月15日 22時01分40秒 | Beatles
 ビートルズ解散後のポール・マッカートニーのソロ活動をヴィデオ・クリッブやライブ・フィルムで振り返るアンソロジーである。なにしろDVD3枚組の大作なので、正月に1枚目だけ観たっきりなのだが、1枚目だけの印象なのだが、まず曲順がクロノジカルではなく、なんとなく雑然とならんでいてどうも居心地悪い、おおざっぱにみればディスク1は70年代、ディスク2は80年代以降ということなるんだろけれど、私の場合こういうのは、やっぱりきちんとクロノジカルに並んで欲しいと思ってしまう人なので、こういうの構成はどうも気持ち悪いのである。
 また、正直いうがビートルズに比べるとポールの映像作品はやっぱ訴求力に欠ける気がする。「メイビー・アイム・アメイズド」「ハート・オブ・ザ・カントリー」「マムーニア」とか珍しい曲も多いのだが、映像としてなんかスナップ写真に音楽つけたみたいなものが多いし、ウィングスになってからのものは多少ビデオクリップらしい体裁は整ってくるものの、まだまだ販促用に作った宣伝フィルムという感じで、今観ると安っぽかったり、あまりに古くさかったりで、ディスク1の計21曲を観た時点で、もうお腹いっぱいになってしまい、ディスク2はしばらくいいやと思ってしまったところである。もう一ヶ月も経過しているので、このままいくとお決まりの長期間放置となってしまいそうなのだが....。
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PAUL McCARTNEY / Back In The U.S. concert film

2008年01月09日 23時26分24秒 | Beatles
 しばらく前にレビューした「Back In The U.S.」の映像版である。年末レンタルしてきて観たものだが、音だけのCDだとポールの声の衰えだとか、バンドの演奏が雑だとか、けっこう荒っぽいところばかり感じてしまったのだけれど、さすがに映像がついていると全く違った印象を受ける。とにかくポールが元気だし(もっと座ってキーボート弾いて歌っているかとも思ったのだけど、意外と立ちぱなしなんだよね)、バンドも実に豪快なノリまくっているという感じで観ていて、とにかく楽しい。当たり前だけど、CDには入っていないMCなども聴けるのもいい。ジョージの「サムシング」を歌うところなど、あのMCが入っているからこそ、ウクレレで歌うのが納得できようものだし、「ゲッティング・ベター」をやる前のMCもなかなかだ。

 ただ、ちと気にくわないのは、やたらとオフステージが挿入されることで、ステージ始まるまでの移動だの、リハなどはいいとしても、いざステージが始まってからも、それが随所に挿入され、あげくに当時奥さんだったへザーとラブラブだったシーンがこれでもかって割って入るのはちと興ざめにならないでもなかったかな。ただ、まぁ、生粋のビートルズ・ファンの私としては、「オールマイ・ラヴィング」歌いながら、過去のビートルズのフィルムが流れて、ファンが涙ぐんでいるところなどは、こっち「うんうん」ってな感じで共感を覚えてしまう。私はひねくれ者だから、コンサートの感動でもそんなに盛り上がったりしないのだが、ポールだけはなんとなく素直になれちゃうんだな(笑)。「ロング・アンド・ワインディング・ロード」の歌い始めで、ポールが感極まって、涙声になるあたりなど、ぐっと来てしまう。

 ちなみに、CDとはジャケットもほぼ同一だし、演奏内容も同じかと思っていたのだが、選曲、構成はもちろん違うし、テイクもかなり違う(編集されてきちん完走しない曲もいくつかある)。前述の「ロング・アンド・ワインディング・ロード」などまさに映像だけのスペシャル・ヴァージョンだろうが、個人的には「ヘイ・ジュード」はCDの演奏の方がポールもバンドも観客もいいノリだったように思うし、ヴォーカルとドラムだけで後半のコーラス盛り上げるところなんか、ドラムンベース風のイタコがばっちり決まっていてカッコ良かったんだけどなぁ。
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PAUL McCARTNEY / Memory Almost Full

2007年12月15日 23時51分41秒 | Beatles
 10月あたりからぼちぼちと聴き始めた「ここ10年のポール・シリーズ?」もいよいよゴール、なにしろこの6月に出たポールの最新作が本作なのである。前作はポールの一人多重録音による作品だったが、今回はそれと同路線のものと先のツアー・メンバーも参加したバンド編成で収録されたものが混在している作品となっている。プロデューサーはバンドでアルバム一枚分を録音してあったにも関わらずポール一人だけの多重録音スタイルで録音することを主張したらしいナイジェル・ゴドリッチに替わって、「Driving Rain」で担当したデビッド・カーンに戻っている。老境を向かえたポールの等身大の姿を伝えたいと思うがあまり、全てをポールに手がけてもらいたがったナイジェルのプロデュース・ワークはポールにはちと息苦しかったのかもしれない。

 さて、内容だが、こうした経緯をほぼ忠実に反映した出来だ。つまり「Driving Rain」と「Chaos And Creation In The Backyard」の間くらい発表されたらしっくりとくるような、つまりバンドっぽいノリとホーム・ミュージック的にインティメートな感触が妙に混在しているような仕上がりといえる。また、ここ数作の中では久方ぶりポールらしい外向的なポップ・ミュージックに多少回帰したようなところもあり、しかもそれが冒頭の数曲に集中していることもあってか、アルバム全体の印象としてはかなり明るくポップな印象が強い。そのせいか日本盤のキャッチは「あの頃のポールが戻ってきた」である。あと、おもしろいというか、おやと思ったのはアナログ盤でいえばB面に当たる後半の曲(7曲目から)がメドレー形式になっていることで、もちろん「アビー・ロード」みたいなど怒濤のメドレーって訳ではなく、とりあえず繋げてみましたみたいなところがあるメドレーではあるんだけれど、こういう小細工をするポールは久々に聴いたような気がする。

 とりあえず、数回聴いただけだが、全体から受ける手応えからいうと「Driving Rain」の重厚さ、「Chaos And Creation In The Backyard」の枯淡の境地といったものに比べると、近2作とかなり似通った雰囲気の曲も多く、今一歩「この作品だけの売り」みたいなものが見えてこないアルバムという気もするがどうだろうか。まぁ、作品の成り立ちからして、このアルバム「Driving Rain」と「Chaos And Creation In The Backyard」の落ち穂拾いみたいなところがないでもなさそうだし、所属するレーベルがEMIから替わり前作からけっこうい短いインターバルで出されたことも考えると、ちとリリースを急ぎすぎたような感じもするのだが....。
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ポール・マッカートニー・ライブ!!

2007年12月04日 23時26分22秒 | Beatles
 90年発表のポール大復活ライブ。これまでレビュウしたとおりこの作品の後、「Paul Is Live」、「Back In The U.S.」という割と競合するライブも出すことになるのだけれど、選曲、パフォーマンスともにやはりこれが一番優れた出来ではないか。この後でた2作品は、例えば選曲面でいうと、本作との競合を避ける配慮をせざるおえないものになっていると思うし、何度も書いているが、封印していたビートルズ・ナンバーを惜しげもなく解禁するという新鮮な驚きや、ポールの後塵を拝するバンドメンの質もこの時のやはりこのアルバムが一番だったと思うからだ(ついでに書けば音質面でもこのアルバムのバランスが最上だった個人的には思う)。

 選曲面でいうと、その後、どんどん比重が増していくビートルズの作品もこの時はまだ半分程度であり(とはいえ、ビートルズ全活動時期をフォロウした選曲ではある)、「フラワーズ・イン・ザ・ダート」からの作品や直近のソロ、ウィングス時代といったソロ期の作品(これまたベスト的選曲だ)が残り半分と、全体にバランス良くポールの全活動を俯瞰できるようになっていている点は、このアルバムがポールにとってある種の総決算であったことを伺わせるに十分であり、このアルバムにある種の重厚感と風格を与えている。ただ、昔はそうでもなかったが、今となってはアルバム随所にリハーサル・セッションがリンクトラックの如く入るのは、いかにも無駄な感じがするようになってしまった(その意味では前後して出た抜粋盤なんか、おもしろいかもしれない)。

 パフォーマンス的には、個人的にはクリス・ウィッテンのドラムである点がポイントが高い。ビートルズやウィングス、そして直近のソロと、ポールの音楽には基本的にタイトな白人系のドラムがよく似合うし、ニューウェイブ出身と思われるウィッテンのドラムはある意味キャラに濃さがないところプラスに作用しているように思えるのだ。ちなみにこれはこの時期のバンド全体にいえることなのだが....。
 そんな訳で、ポールのライブとしては、やはりこれが最強だと思う。なにしろ最後が「ゴールデン・スランバー/キャリー・ザット・ウェイト/ジ・エンド」のメドレーなのだ。これをやられたビートルズ・ファンはもう黙るしかない。
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