透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「紅梅」

2022-08-15 | G 源氏物語

「紅梅 真木柱の女君のその後」

 柏木(衛門督)の弟・按察大納言(あぜちのだいなごん、紅梅大納言)は妻を亡くして鬚黒の娘・真木柱と再婚している。大納言には先妻との間に二人の娘(大君と中の君)がいる。真木柱も再婚で、亡き蛍兵部卿宮との間に生まれた娘・宮の御方がいる。そう、二人とも子連れ再婚。三人の娘たちは年も近く、大の仲良し。

大納言と真木柱の間にも息子・大夫の君(若宮)が生まれている。登場人物は皆血縁関係がある。帖のはじめに載っている登場人物系図で関係を確認しながら読んだ(*1)。


大納言は大君を東宮に入内させる。そして大君の妹・中の君を匂兵部卿宮(匂宮)と縁づかせたいと思っている。で、大納言はみごとに色づいた梅の花を息子の若宮に持たせて匂宮のところに向かわせたりもする。だが、匂宮にはその気がない。真木柱の連れ子の宮の御方(東の君)に心惹かれているので。

この辺りの事情は次の様に書かれている。**大納言の意向は、宮の御方ではなく、実の娘である中の君を自分に、と思っているようだが・・・、と宮は考え合わせてみるが、自分の心は異なる人 ― 宮の御方に傾いているので、大納言からの手紙にはっきりした返事もしかねている。**(29頁)一方、宮の御方は匂宮の意向を受け入れる気にはなれない。将来は出家しようと固く決めているので。

匂宮が恋多き人であるということを知るに至り、中の宮の母親(北の方)は娘と匂宮の結婚をあきらめ、大納言もあきらめる。

すれ違いの恋は今も大昔も変わらずか。これで終わりではなく、政治的な思惑も読み解かないと・・・。


*1 柏木と按察大納言、この兄弟の母親はあの朧月夜の姉。

1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔 
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋


寅さんの答え

2022-08-15 | E 朝焼けの詩


撮影日時2022.08.15 05:02AM 

「男はつらいよ 寅次郎物語」。 満男君が寅さんを柴又駅まで送っていく。駅前で、満男君が寅さんに問う。「人間は何のために生きてんのかな?」

寅さん、「何だお前、難しいこと聞くなあ、ええ?」と、しばらく考える。で、「うーん、何て言うかな。ほら、ああ、生まれてきてよかったなって思うことが何べんかあるじゃない、ね。そのために人間生きてんじゃねえのか」と答える。

昭和20年8月15日、敗戦の日。人は満男君と同じように「何のために生きるのか・・・」と自問しただろう。それぞれ違う答え。でもそこに生きる意義を見出し、生き抜いて来たに違いない。