透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「虹の岬」辻井 喬

2016-09-19 | A 読書日記

諸々のみ佛の中の伎芸天何のえにしぞわれを見たまふ (*1、*2)

この短歌の作者である歌人川田 順と彼の弟子で大学教授夫人森祥子(こちらは仮名)との道ならぬ「大人の恋」の軌跡。辻井喬の『虹の岬』/中公文庫、10年ぶりの再読(過去ログ)。

 

川田 順は住友本社総理事の座を目前に辞任した一代の歌人。森祥子は17歳で母親の薦めで大学教授のもとに嫁ぎ、3人の子どもがいる平凡な主婦。ふたりは運命的な出会いをしてしまった・・・。

川田 順は斉藤茂吉とも交流があって、祥子と結婚した後、ふたりで強羅の別荘に茂吉を訪ねるところも出てくる。**「男同士の話ばかりしていても奥さんは退屈でしょう、息子に案内させますから、この近くを少し御覧になりませんか、公園も見晴し台もあります」**(266頁)と茂吉は散策を薦める。この息子とは茂吉の次男、北杜夫のこと。

物語の本筋とは関係ないが、北杜夫(*3)のファンとして、「へ~、こんなことがあったんだ」と思った。


 
秋篠寺本堂(旧講堂)撮影20131116

*1 秋篠寺の歌碑の除幕式のことが小説の終盤に出てくる。
*2 伎芸天  過去ログ
*3    北杜夫の「木霊」も人妻との恋の物語 過去ログ


 


 


「三大怪獣 地球最大の決戦」

2016-09-19 | E 週末には映画を観よう

 

■ 休みだ、雨だ、映画を観よう ということで「三大怪獣 地球最大の決戦」のDVDを借りてきて観た。

1964(昭和39)年、先の東京オリンピックの年に公開されたゴジラ映画だが、私は子どもの頃にこの映画を観ている。ゴジラは子どもと子どもの心を持ち続けている大人のための娯楽映画だ。

地球三大怪獣ゴジラ・ラドン・モスラが力を合わせて富士山麓で宇宙怪獣キングギドラと戦い、ついにキングギドラを追い払って地球を滅亡の危機から救うというシンプルなストーリー。

キングギドラは黒部ダム近くの峡谷に落下した隕石から生まれるが、そのシーンは衝撃的。キングギドラには金星の高度な文明を5000年前に完全に滅ぼし、金星を死の星にしてしまったという「過去」がある。金星人の末裔ということになるサルノ女王が、この映画のドラマ的要素の主人公。このあたりの奇想天外な設定に突っ込み無用。


ラドンは阿蘇山の火口から出現し、モスラはザ・ピーナッツ演ずる双子の小美人が
インファント島から呼びよせる。ゴジラは生まれた経緯からして当然海から出現。

キングギドラは八岐大蛇(やまたのおろち)から想を得たらしいが、なかなか優れた造形の怪獣だと思う。


松本城の天守閣の瓦が飛散するシーンは覚えていた。松本城で彼らが激しく戦ったとばかり思っていたが、記憶違いだった。松本城の直上を飛翔するキングギドラの風圧で瓦が飛んだのだ。

*****



火の見櫓が映し出される。 **お知らせします。ゴジラとラドンは箱根方面より富士山麓に向かう公算が大きくなりました。いつでも避難できるよう、準備してください。**という放送がこの火の見櫓のスピーカーから流れる。

富士山近くの集落の住民が避難するが映し出される。茅葺きの民家が点在する山の斜面の集落が実に美しい。昭和30年代にはこんな風景が全国で見られたのだ。

半鐘の音が聞こえている。住民に避難を促すために連打しているのだ。消防団員が半鐘を叩くシーンがあれば最高だったのに・・・。

映画っておもしろい。


* 懐かしき「妖星ゴラス」も本作と同じ本多猪四郎監督の作品