諸々のみ佛の中の伎芸天何のえにしぞわれを見たまふ (*1、*2)
この短歌の作者である歌人川田 順と彼の弟子で大学教授夫人森祥子(こちらは仮名)との道ならぬ「大人の恋」の軌跡。辻井喬の『虹の岬』/中公文庫、10年ぶりの再読(過去ログ)。
川田 順は住友本社総理事の座を目前に辞任した一代の歌人。森祥子は17歳で母親の薦めで大学教授のもとに嫁ぎ、3人の子どもがいる平凡な主婦。ふたりは運命的な出会いをしてしまった・・・。
川田 順は斉藤茂吉とも交流があって、祥子と結婚した後、ふたりで強羅の別荘に茂吉を訪ねるところも出てくる。**「男同士の話ばかりしていても奥さんは退屈でしょう、息子に案内させますから、この近くを少し御覧になりませんか、公園も見晴し台もあります」**(266頁)と茂吉は散策を薦める。この息子とは茂吉の次男、北杜夫のこと。
物語の本筋とは関係ないが、北杜夫(*3)のファンとして、「へ~、こんなことがあったんだ」と思った。
秋篠寺本堂(旧講堂)撮影20131116
*1 秋篠寺の歌碑の除幕式のことが小説の終盤に出てくる。
*2 伎芸天 過去ログ
*3 北杜夫の「木霊」も人妻との恋の物語 過去ログ