透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「生物の世界」今西錦司

2020-05-24 | H ぼくはこんな本を読んできた

 

 立花 隆の著書に『ぼくはこんな本を読んできた』(文藝春秋1996年3刷発行*1)がある。

文庫本の大半を処分した結果、自室の書棚に残る文庫本は約250冊となった。これらの本を載せるという試みをしてみようと思う。そう、「ぼくはこんな本を読んできた」。継続できるかどうか分からないが、休日の外出自粛によるネタ不足に対応するために始めたい。

『生物の世界』今西錦司(講談社文庫1976年第8刷)

この本のカバーは今のように目立つように、目立つようにという志向でデザインされていない。控えめで上品なデザインで実に好ましい。カバー裏面の本書紹介文を載せる(このパターンで続けて行こうと思う)。40年以上も前に読んだ本で、再読しないと内容紹介ができないから(と言い訳しておく)。

**これはふつうの生物学の本ではない。一つには予備工兵少尉として応召を予期した時代の「遺書」であり、一つには死物としての生物の学を生き物としての真の生物学たらしめる貴重な道標であった。
類縁原理の直感的認識を方法論に生物社会の構成原理を《棲み分け》にみる今西生物学の「棲み分け理論」、ダーウィン来の自然淘汰説を超える独自の進化の構想を、思想的自画像風に描く独特な文化論。**

自画像ということばは序にも出てくる。**この小著を、私は科学論文あるいは科学書のつもりで書いたのではない。それはそこから私の科学論文が生まれ出ずるべき源泉であり、その意味でそれは私自身であり、私の自画像である。**(3頁)

この自画像ということばは実に重い。どんな研究においても哲学的な背景からして独自性が無ければこのことばは使えないだろう。

再読したい。


*1 これからは手元にある本の発行年を記すことに統一する。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。