タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

たかがシップ、されど

2016-08-08 21:23:43 | 産科

上の写真は篠山市石住の 咲南(さなみ)ちゃん、7月1日生まれ。
「いつも明るく笑っていてください。
3回目なので頭の中は冷静で、お腹の中から出てくる感覚が分かりました。
入院中はゆっくり過ごせ、リフレクソロジーがとても気持ち良かったです。」

3人目ともなると、お産が気持ちよく感じることだって有りますからね。
何人でも産めるような気になってくるのではないでしょうか。

何気なく、みなさんは妊婦健診と言えば、超音波検査のことだと思っておられるでしょう。
それはそれで間違いでもないし、尿検査や血圧、体重も重要なのですよ、
などと言っても分かってもらえないのです。

開業した頃は、画期的な擬似立体超音波という装置を導入したのですよ。
それまでは超音波と言えば、平面的な2次元の超音波しか無かったのです。
当初より体外受精もしていたので、不妊治療用の経膣超音波も導入していました。
擬似立体式では、現在の4D超音波には及びませんが、けっこう胎児の顔がリアルに見えたものです。

篠山に転居してからは、カラー4D超音波の装置をいち早く導入したのですよ。
町医者であっても、常に最新の機械だけは揃えていたのですね。
今、ちょっと欲しい超音波の機械と言えば、手の平サイズの小型のものや、
往診に持っていけるようなものではなく、
エラスティック超音波という装置でしょうか。
腫瘍の硬さまで手で触れるように分かるものです。
乳がん検診などには重宝する可能性が有るのですよ。
まだ一般的では有りませんが。

ところで、4D超音波にはデメリットも有って、
プローベが重くて大きくて、検査する人間の手首や肩を痛めるのですよ。
私も最近、肩が痛くて。
痛いとシップを貼る、というのが一方法ですね。あるいはサポーターとかでしょうか。
と、ここまでが前置きでした。

妊婦さんにシップって大丈夫だと思われますか?
腰が痛くてシップを貼っている、という妊婦さんをよく見かけます。
でもね、シップは禁忌なのですよ。とくに妊娠後期の妊婦さんは。
理由は、プロスタグランジン阻害薬を含んでいるからです。

赤ちゃんが生まれて、産声をあげる時、それは水中でのへその緒の呼吸から、肺呼吸に変わる瞬間なのですよ。
これにプロスタグランジンの抑制が関係しているのです。
だからシップを貼れば、胎児が羊水の中で呼吸してしまうかもしれませんね。
そうすれば溺れてしまいますよ。他にも理由が有ります。

胎児がへその緒で呼吸している時、肺は水で満たされていますから、
静脈血は肺では浄化できません。
代わりにへその緒で浄化しているわけです。
だから静脈血も動脈血も混ぜこぜなわけです。
心臓から出る大動脈と、肺に向かう肺動脈は動脈管という管でつながっているのですよ。
生まれて半日もすれば、この管は塞がってしまいます。
動脈血と静脈血が完全に分かれてしまう、という意味です。

シップに含まれる、プロスタグランジン抑制剤は、この動脈管を縮めてしまう作用も有るので、
生まれる前に塞がってしまうのですね。
すると血流が滞って、胎児が死んでしまうことも有るのです。

でもね、昔はこの薬は、切迫早産の薬として使われていたのですよ。
禁止されたのは、比較的新しいことなのです。
医学って、ホントにコロコロと変わりますからね。
私も若かりし頃は、この薬を切迫早産に使っていましたが、
生まれてきた早産の小さな赤ちゃんの電解質バランスが崩れていたことが有ります。
それ以来使用していなかったのですが、最近になって禁止されたというわけです。

みなさんもたかがシップと思われるでしょうが、
妊娠中は貼ってはいけないのですよ。
ご主人にマッサージしてもらうのが一番良いのですね。