タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

臍帯の手触り

2016-08-10 21:45:05 | 産科

上の写真は、丹波市青垣町の碧羽(あおば)くん、7月9日生まれ。
「強くて純粋で、優しい子になってください。
優しい方ばかりで、たくさんお話もできました。
次も夫の立会いを希望します。」

ご主人と一緒にお産するだけで、とても安心して産める方が多いですよ。
とくに優しいお父さんですからね。
逆にお産でも仕事に行って付き添われないご主人も居られますが、
きっとお産なんて、たいしたことはないと思っておられるのでしょう。
とくに初めてのお産では、一生で一番たいへんな経験かもしれませんからね。

それでは今日は、たいへんなお産ということで、臍帯脱出のお話をしましょう。
両親学級でお産に対するバースプラン立てていただくのですが、
時にご主人が、へその緒を切りたいと言われるのです。
前の病院はさせてもらったとかで。
どうも結婚式のケーキカットと勘違いされているようです。

このへその緒ですが、触るとムニュムニュしているのですが、
医学用語では、キジョク感と呼びます。
漢字は奇褥感と書くのですが、びっくり箱の中のカエルを触ったような感じでしょうか。

さかごの時などは、あぐらをかいた隙間から、へその緒が垂れ下がってくることが有ります。
これを診察で、指の触覚だけで感じ取らないといけないのですよ。
頭が下に向いていても、頭と骨盤の間にへその緒を触れることは有ります。
経産婦さんの方がむしろ臍帯脱出を来たしやすいと感じています。
それは分娩が近づいても頭が降りてこないことが多く、
すきまができてしまうからです。

もしもお産の時にへその緒が垂れ下がってきたり、完全に脱出したりすれば、
緊急で帝王切開をしないといけません。
へその緒が挟まれると、心音が急激に悪くなりますから、超緊急の手術となります。
手術の準備ができるまで、お母さんの頭を下げて、骨盤を上向きにする体位を取ることがすすめられています。
ですが、それは機械式の分娩台に登っている時にしかできないでしょう。

タマル産でも臍帯下垂は時に経験しますが、急いで産んだりすることで、
幸いなことにこれまでは脳性マヒになる赤ちゃんはいませんでした。
ですがこれは運ですからね。

他院での事故報告が載っていましたが、
40歳代の経産婦さんで、満期に破水で夜中に入院し、
夜中の3時23分に臍帯脱出を確認し、もう1人の医師と麻酔科医に連絡、
近隣のNICUにも連絡し、4時ちょうどに手術を始め、4時05分に娩出するも、
仮死で生まれ、その後1歳7ヶ月で亡くなられたそうです。

夜中に、診察からたったの30分ほどで手術できているのですが、
日本ではベストな手術環境ですね。なかなか大きな病院でもこうはいきません。
それでも助けられなかったのは、臍帯脱出という病気が、救える病気ではないからですね。
もちろん脱出の程度によっては助かりもしたでしょう。
これで医療者が避難されては、誰もお産に手を出せなくなってしまいますよね。

世のお父さん、お産というのは、急に胎児が仮死になることが有るということは理解してくださいよ。
そんな時に仕事に行っている場合でしょうか。
それに奥さんが陣痛で苦しんでいるというのに、放っておける心境になれるのでしょうか。
赤ちゃんを産むお母さんも、お産までにご主人をしっかり教育しておいてくださいよ。
それにはソフロロジー教室に参加するのが一番良い方法ですからね。

ところで昨夜から今朝にかけて、赤ちゃんが4人も生まれたので、
私も病棟もてんてこまいです。
明日は1ヶ月ぶりの休みをいただけると良いのですが。