タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

HTLV-1の検査方法を変更しました

2016-08-17 20:58:02 | 産科

写真は、今入院中の赤ちゃんのお父さんたちです。
お盆には、たくさん赤ちゃんが生まれましたよ。
大きくなったら夏休みの誕生日になるね。

さて今日は、妊婦健診の検査項目の1つである血液検査の変更点についてお話しましょう。

妊娠初期の血液検査では、たくさんの項目を検査するのですが、
その中の1つにHTLV-1抗体というのが有ります。
もし陽性であっても、別にどうっていうことも有りません。
なぜなら一生涯のうちで、陽性の人のわずか0.3%の人だけが白血病になるだけだからです。

それでも厚生省としては、このウィルスを撲滅しようと計画しています。
方法はお母さんから赤ちゃんへの母子感染を防ぐことで、
時間をかけて減らす方針なのです。
方法は簡単で、お乳をあげない、ということです。
もし是非あげたいというお母さんは、数ヶ月などの短期間にしたり、
母乳をいったん凍結したりする方法もとれます。
母乳を禁止してもぜったいに母子感染しないとも限らないので、最終的にはお母さんの判断によりますが。

HTLV-1のウィルスを持っている人は、2015年の時点で、82万人と推計されています。
これは献血者の陽性率から計算しているのですよ。
2007年からの8年間で、26万人減少したと考えられるのです。
これは母子感染を防いだことによる結果です。
確かにこの調子でいけば、ウィルスのキャリアも減りそうですね。

5年ほど前から妊婦健診の際に、この検査をするように厚生省より指導されました。
もちろんタマル産では開業した17年前から全員に検査していますよ。
以前はというか先日までは一般的なPA法というスクリーニング検査だったのですが、
この夏からより感度の高い、CLEIA法というスクリーニング検査に変えました。
PA法ではどうしても検査をすり抜けてしまうことが有るからです。
CLEIA法の方が費用がかかるのですが、妊婦健診の費用は一定なので、値上げはできませんけれどね。

妊婦健診の費用は日本全国14回で12万円ほどの定価なのですが、
篠山では11万円ほど、丹波市では7万円ほどしか払ってもらえないのですよ。
ちなみに大きな病院ではこの差額で赤字になっても後で助成されるからいいのですよね。

そしてスクリーニング検査で陽性になると、
今度は確定検査でウエスタンブロット法という精密検査に回ります。
ところがこの検査は、20%以上が判定不能と出てしまうのです。
タマル産でも今年になって2人の方がスクリーニング検査で陽性だったのですが、
精密検査では2人とも判定不能と出てしまいました。
こういう時は、お乳をあげるあげないは、お母さんに判断していただくしかないわけですよ。
さらに精密検査でPCR法というのも有るのですが、
現在のところは研究室レベルの検査で、一般的ではありません。

HTLV-1というウィルス、みなさんは別に知らなくてもいい検査かもしれませんが、
人類をウィルスから護るために、血液を提供しているようなものですね。
そしてそれは検査費用は増えたけれど助成は増えないので、
結局産婦人科医が自腹を切っているという話でした。
あまりせこい話ばかりしていてはいけませんね。
それでも記憶に残りましたか?