タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

ピース

2012-04-11 20:21:50 | 産科
妊婦健診に来られていた妊婦さんの話によれば、
その方のお姉さんが大きな病院でお産された際、
糖尿病でだいぶ、「おどされた」と言われるのです。

私も知らぬ間に、おどしていることがあるのでは、と反省します。
医師は患者さんに指導をする時、
最悪の結果を言うことがあります。
ちゃんと言うことを聞かないと、こんな風になっちゃうよ、というやつです。

うちの子が保育園の時、園長先生に、「やまんば」が出るから、
早く帰るように、と言われていた、そんな感じでしょうか。

前に勤めていた病院では、部長が、1人の患者さんに数時間にも及ぶ説明をされていました。
これが、いつもの風景なのです。
今で言うインフォームドコンセントですね。
はっきり言って、実際の治療よりも説明の方が長くかかっているのです。
丁寧な説明が悪いと言っているのではなくて、
インフォームドコンセントの悪い所は、すべての起こりうる事態を説明することにあります。

お産を例にとりましょうか。
一度、帝王切開をしているとします。
10年前なら、次はちゃんと普通に産みたいという妊婦さんがたくさん居られました。
ところがこのインフォームドコンセントとやらが出て来たおかげで、
もし子宮の前回の傷が裂けたら、赤ちゃんが死んじゃうんだよ、とか
急に傷から大量の出血があれば、お母さんの命にもかかわるんだよ、などと
とにかく、おどすのです。
ここまで言われては、頑張って産みたいという人は無くなってしまうでしょう。
おかげで、ここ10年ちょっとで、帝王切開率はうなぎ上りです。
これがインフォームドコンセントとやらの、実態なんです。

医師が患者さんをおどすのには訳があります。
最悪の事態を言っておけば、それより良ければ感謝してもらえるからです。
逆にだいじょうぶですよ、と言って、大丈夫じゃなかったら、恨まれるからです。
医師は裁判にならないようにと、とにかく逃げ口上を言っておくのですね。

だから今ではタマル産のような医療機関は無くなってきているのです。
さかご?産むんだったら、私が面倒みましょう、とか
一度帝王切開してたって、普通に産みたいのなら産ませてあげましょう、
こんなこと言う医師は少なくなってしまったという意味です。

ところで上の写真、診察室の机の上に鎮座しています。
私がよく出没する、神戸、六甲山の石ころ亭、というお店で買ったものです。
その石にはピース、と刻まれています。
いつも心に平安を。

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今日も赤ちゃんが産まれました。現在研修中の3人も、お産続きで勉強になります。