歌番号 202
詞書 題しらす
詠人 ふかやふ
原文 可者幾利乃 布毛止遠己女天 多知奴礼者 曽良尓曽安幾乃 也万八美衛个留
和歌 かはきりの ふもとをこめて たちぬれは そらにそあきの やまはみえける
読下 河霧のふもとをこめて立ちぬれはそらにそ秋の山は見えける
解釈 河霧が山の麓を覆うように立ち込めるので、雲海により空に浮かぶかのように秋の山が見えました。
歌番号 203 拾遺抄記載
詞書 ちくふしまにまうて侍りける時、もみちのかけの水にうつりて侍りけれは
詠人 法橋観教
原文 美川宇美尓 安幾乃也万部遠 宇川之天者 々多者利比呂幾 尓之幾止曽美留
和歌 みつうみに あきのやまへを うつしては はたはりひろき にしきとそみる
読下 水うみに秋の山へをうつしてははたはりひろき錦とそ見る
解釈 琵琶湖の湖に秋の山の姿を映して、その様子はまるで機織りの幅の広い錦の布のように見えます。
歌番号 204 拾遺抄記載
詞書 二条右大臣の粟田の山さとの障子のゑに、たひ人もみちのしたにやとりたる所
詠人 恵慶法師
原文 以満与利者 毛美知乃毛止尓 也止利世之 遠之武尓堂飛乃 比加須部奴部之
和歌 いまよりは もみちのもとに やとりせし をしむにたひの ひかすへぬへし
読下 今よりは紅葉のもとにやとりせしをしむに旅の日かずへぬへし
解釈 これからは紅葉した山の麓に宿りをすることは止めましょう、立ち去るのを残念に思って旅の日程がどんどん経ってしまうでしょうから。
歌番号 205 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 止不比止毛 以満者安良之乃 也万可世尓 比止万川武之乃 己恵曽加奈之幾
和歌 とふひとも いまはあらしの やまかせに ひとまつむしの こゑそかなしき
読下 とふ人も今はあらしの山かせに人松虫のこゑそかなしき
解釈 ここに尋ねて来る人も、今はもういないでしょう、木枯らしの嵐、その山風に人が待つと言う名を持つ松虫の声も悲しく聞こえます。
歌番号 206 拾遺抄記載
詞書 延喜の御時、中宮の御屏風に
詠人 つらゆき
原文 知里奴部幾 也万乃毛美知遠 安幾々利乃 也寸久毛美世寸 多知可久寸良无
和歌 ちりぬへき やまのもみちを あききりの やすくもみせす たちかくすらむ
読下 ちりぬへき山の紅葉を秋きりのやすくも見せす立ちかくすらん
解釈 季節が過ぎ行き散ってしまうでしょう山の紅葉を、秋霧が簡単には見せないとばかりに立ち込めて隠しているようです。
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