歌番号 167 拾遺抄記載
詞書 亭子院のおまへに前栽うゑさせ給ひて、これよめとおほせことありけれは
詠人 伊勢
原文 宇恵多天々 幾美可志女由不 者奈奈礼者 多麻止美衛天也 川由毛於久良无
和歌 うゑたてて きみかしめゆふ はななれは たまとみえてや つゆもおくらむ
読下 栽ゑたてて君かしめゆふ花なれは玉と見えてやつゆもおくらん
解釈 わざわざに前栽に植え立てて貴方様が大事に柵をして育てた花ですから、それで玉と見間違えるように露も置くのでしょう。
歌番号 168 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 己天須久須 安幾者奈个礼止 者川可利乃 幾久多比己止尓 女川良之幾可奈
和歌 こてすくす あきはなけれと はつかりの きくたひことに めつらしきかな
読下 来ですくす秋はなけれとはつかりのきくたびごとにめつらしきかな
解釈 雁がやって来ないで過ごす秋の季節はありませんが、初雁の声を聴くたびごとに秋の季節感を感じます。
歌番号 169 拾遺抄記載
詞書 少将に侍りける時、こまむかへにまかりて
詠人 大弐高遠
原文 安布左可乃 施幾乃以者可止 布美奈良之 也万多知以川留 幾利八良乃己万
和歌 あふさかの せきのいはかと ふみならし やまたちいつる きりはらのこま
読下 相坂の関のいはかとふみならし山たちいつるきりはらのこま
解釈 相坂の関の、その岩路と踏み均す、山が立ち並ぶ中を、霧を払って、信濃の霧原の馬よ。
歌番号 170 拾遺抄記載
詞書 延喜の御時の月次を仰ふ屏風に
詠人 つらゆき
原文 安不佐可乃 施幾乃之美川尓 可个美衛天 以満也比久良无 毛知川幾乃己万
和歌 あふさかの せきのしみつに かけみえて いまやひくらむ もちつきのこま
読下 あふさかの関のし水に影見えて今やひくらんもち月のこま
解釈 相坂の関に湧く岩清水に月影が見えて、今は手綱を牽いているでしょう、あの信濃の望月の馬を。
歌番号 171 拾遺抄記載
詞書 屏風に、八月十五夜、池ある家に人あそひしたる所
詠人 源したかふ
原文 美川乃於毛尓 天累川幾奈美遠 加曽不礼者 己与比曽安幾乃 毛奈可奈利个留
和歌 みつのおもに てるつきなみを かそふれは こよひそあきの もなかなりける
読下 水のおもにてる月並みをかそふれはこよひそ秋のもなかなりける
解釈 水の表に照り映す月の日数を数えてみると、今宵こそは秋の最中の十五夜でありました。
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