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竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

拾遺和歌集 巻16 歌番号1030から1034まで

2025年04月24日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1030

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 佐幾之止幾 奈本己曽美之可 毛々乃者奈 知礼者於之久曽 於毛飛奈利奴留

和歌 さきしとき なほこそみしか もものはな ちれはをしくそ おもひなりぬる

読下 さきし時猶こそ見しかももの花ちれはをしくそ思ひなりぬる

解釈 咲いたとき、だからこそ眺めた桃の花、この花が散ってしまうことは残念なことだと思うようになりました。

 

歌番号 1031

詞書 帥のみこ、人人にうたよませ侍りけるに

詠人 弓削嘉言

原文 也万佐止乃 以部為者可須美 己免多礼止 加幾祢乃也奈幾 寸恵者止尓美由

和歌 やまさとの いへゐはかすみ こめたれと かきねのやなき すゑはとにみゆ

読下 山さとの家ゐは霞こめたれとかきねの柳すゑはとに見ゆ

解釈 山里の住まいに霞が立ち籠っているが、それでも垣根の柳の枝先はその霞の先に見えます。

 

歌番号 1032 拾遺抄記載

詞書 春、物へまかりけるに、つほさうそくして侍りける女ともの野へに侍りけるを見て、なにわさするそととひけれは、ところほるなりといらへけれは

詠人 賀朝法師

原文 者累乃々尓 止己呂毛止武止 以不奈留八 布多利奴者可利 美天多利也幾三

和歌 はるののに ところもとむと いふなるは ふたりぬはかり みてたりやきみ

読下 はるののにところもとむといふなるはふたりぬはかりみてたりやきみ

解釈 春の野に野老(ところ)を探すと言うけれど、二人が寝るほどの「ところ」は見つけましたか、貴女たち。

注意 山芋を野老(ところ)と言い、その野老と女同士が野合で寝る「ところ」との言葉遊びです。この時代、僧侶は男性同士の同性愛が前提で、その裏返しの背景があります。

 

歌番号 1033 拾遺抄記載

詞書 返し

詠人 よみ人しらす

原文 者留乃々尓 保留/\美礼止 奈可利个利 与尓止己呂世幾 比止乃多女尓八

和歌 はるののに ほるほるみれと なかりけり よにところせき ひとのためには

読下 春ののにほるほる見れとなかりけり世に所せき人のためには

解釈 春の野に掘りに掘って探してみたけれど「ところ」はありませんでした、まず、世の有り様に逆らうような人のためには。

注意 「よにところせき」は、掛詞よりも単純に「世に処塞き」と解釈しただけの方が良いようです。

 

歌番号 1034

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 加幾久良之 由幾毛布良奈无 左久良者奈 満多佐可奴万者 与曽部天毛美武

和歌 かきくらし ゆきもふらなむ さくらはな またさかぬまは よそへてもみむ

読下 かきくらし雪もふらなん桜花またさかぬまはよそへても見む

解釈 空を掻き曇らせて雪も降って来ないだろうか、桜花、まだ、咲かない間は雪を枝に花のように見立てて眺めましょう。

注意 和歌の季節感とお約束は梅の花ですが、意表を突いて桜の花です。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1025から1029まで

2025年04月23日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1025

詞書 斎院子の日

詠人 したかふ

原文 飛止毛止乃 万川乃知止世毛 飛佐之幾尓 以徒幾乃美也曽 於毛飛也良留々

和歌 ひともとの まつのちとせも ひさしきに いつきのみやそ おもひやらるる

読下 ひともとの松のちとせもひさしきにいつきの宮そ思ひやらるる

解釈 一本の松に千年の寿命であっても久しいのに、五木(いつき)、その言葉の響きのような、斎院(いつき)の宮の五千年とも思える久しい寿命を思い浮かべなさい。

 

歌番号 1026

詞書 右大将実資下臈に侍りける時、子の日しけるに

詠人 清原元輔

原文 於以乃世尓 加々留美由幾者 安利幾也止 己太可幾美祢乃 万川尓止八々也

和歌 おいのよに かかるみゆきは ありきやと こたかきみねの まつにとははや

読下 おいの世にかかるみゆきは有りきやとこたかき峯の松にとははや

解釈 私が年老いるこの世にあって、このような立派な御幸があったでしょうか、(子の日の小松でさえ千年の寿命と言いますから、)小高き峰に生える立派な松に聞いてみたいものです。

 

歌番号 1027 拾遺抄記載

詞書 正月叙位のころ、ある所に人人まかりあひて子の日の歌よまんといひ侍りけるに、六位に侍りける時

詠人 大中臣能宣

原文 万川奈良波 比久比止遣不者 安利奈末之 曾天乃美止利曽 可比奈可利个留

和歌 まつならは ひくひとけふは ありなまし そてのみとりそ かひなかりける

読下 松ならは引く人けふは有りなまし袖の緑そかひなかりける

解釈 松の木であったなら根を引く人が今日はいたでしょう、でも、気を引く人もいない私の緑の袖模様はまったくに甲斐がありませんでした。

 

歌番号 1028

詞書 除目のころ、子の日にあたりて侍りけるに、按察更衣のつほねより松を箸にてたへものをいたして侍りけるに

詠人 もとすけ

原文 比久比止毛 奈久天也三奴留 三与之乃々 万川者祢乃比遠 与曽尓己曽幾个

和歌 ひくひとも なくてやみぬる みよしのの まつはねのひを よそにこそきけ

読下 引く人もなくてやみぬるみよしのの松は子の日をよそにこそきけ

解釈 引く人もいなくて止めてしまった子の日の行事、み吉野の松は、その子の日の行事のことをよそ事のように聞きなさい、あなたの出番じゃないのだと。

 

歌番号 1029

詞書 康和二年、春宮蔵人になりて月のうちに民部丞にうつりて、ふたたひよろこひをのへて、右近命婦かもとにつかはしける

詠人 したかふ

原文 飛久比止毛 奈之止於毛飛之 安川左由美 以満曽宇礼之幾 毛呂也之川礼者

和歌 ひくひとも なしとおもひし あつさゆみ いまそうれしき もろやしつれは

読下 ひく人もなしと思ひしあつさゆみ今そうれしきもろやしつれは

解釈 引く人もいないと思っていました梓弓、その言葉の響きではありませんが、今こそ、嬉しいものです、思いもかけずに矢が二つも当たってしまうとは。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1020から1024まで

2025年04月22日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1020 拾遺抄記載

詞書 ひとに物いふとききて、とはさりけるをとこのもとに

詠人 中宮内侍

原文 加須可乃々 於幾乃也計者良 安左留止毛 美恵奴奈幾奈遠 於保寸奈留可那

和歌 かすかのの をきのやけはら あさるとも みえぬなきなを おほすなるかな

読下 かすかののをきのやけはらあさるとも見えぬなきなをおほすなるかな

解釈 春日の野の萩を野焼きした野原、探し求めても見つけることが出来ないと言う無き菜を生えさせる、その言葉のような、噂の正体が見えない私の無き名、その噂の仇名が生まれたようです。

 

歌番号 1021 拾遺抄記載

詞書 女のもとになつなの花につけてつかはしける

詠人 藤原長能

原文 由幾遠宇寸美 加幾祢尓川女留 加良奈川奈 々徒左者万久乃 保之幾々美可奈

和歌 ゆきをうすみ かきねにつめる からなつな なつさはまくの ほしききみかな

読下 雪をうすみかきねにつめるからなつななつさはまくのほしききみかな

解釈 雪が融けて薄くなったので、垣根の側で摘んだ唐ナズナ、その言葉の響きのように、なずむ仲でありたいとの思いがする、貴女であります。

 

歌番号 1022

詞書 東三条院御四十九日のうちに、子の日いてきたりけるに、宮の君といひける人の許につかはしける

詠人 右衛門督公任

原文 堂礼尓与利 万川於毛飛可无 宇久飛寸乃 者川祢可比奈幾 个不尓毛安留可奈

和歌 たれにより まつをもひかむ うくひすの はつねかひなき けふにもあるかな

読下 たれにより松をもひかん鴬のはつねかひなきけふにもあるかな

解釈 誰に託して子の日の松の根を引かせようか、例年なら目出度いはずの鶯の初音がしても、喪中なので甲斐がない、今日であります。

 

歌番号 1023

詞書 子の日

詠人 恵慶法師

原文 飛幾天美留 祢乃比乃万川者 本止奈幾遠 以可天己毛礼留 知与尓可安留良无

和歌 ひきてみる ねのひのまつは ほとなきを いかてこもれる ちよにかあるらむ

読下 ひきて見る子の日の松はほとなきをいかてこもれるちよにかあるらん

解釈 神事での引いて眺める子の日の松、小松で丈も余りないが、どうして、この小さな子の日の松に籠っているのでしょうか、千代の幸があるらしいが。

注意 神道神事に対する僧侶の立場です。

 

歌番号 1024

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 志免天己曽 知止世乃者留者 幾川々美女 万川遠天多由久 奈尓可飛久部幾

和歌 しめてこそ ちとせのはるは きつつみめ まつをてたゆく なにかひくへき

読下 しめてこそちとせの春はきつつ見め松をてたゆくなにかひくへき

解釈 禁制の場所を示すしめ縄を行うからこそ、そこに千年の寿命を祝う春はやって来るのを見なさい、それだからこそ、松を手をだるくするほどに、どうして、子の日の松の根を引くでしょうか。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1015から1019まで

2025年04月21日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1015 拾遺抄記載

詞書 北白河の山庄に、花のおもしろくさきて侍りけるを見に、人人まうてきたりけれは

詠人 右衛門督公任

原文 者留幾天曽 比止毛止比个留 也万左止者 々奈己曽也止乃 安留之奈利个礼

和歌 はるきてそ ひともとひける やまさとは はなこそやとの あるしなりけれ

読下 春きてそ人もとひける山さとは花こそやとのあるしなりけれ

解釈 春が確かにやって来て人も訪れる山里では、花こそが宿の主役であります。

 

歌番号 1016

詞書 くらまにまうて侍りけるをりに、みちをふみたかへてよみ侍りける

詠人 安法法師

原文 於保川可奈 久良万乃也万乃 美知志良天 可須美乃奈可尓 万止不个不可奈

和歌 おほつかな くらまのやまの みちしらて かすみのうちに まとふけふかな

読下 おほつかなくらまの山の道しらて霞の中にまとふけふかな

解釈 おぼつかないことです、鞍馬の山のうす暗い山道を知らないで、霞が立つ中のその道に迷ってしまいました。

 

歌番号 1017 拾遺抄記載

詞書 延喜十五年斎院屏風に、霞をわけて山寺にいる人あり

詠人 きのつらゆき

原文 於毛飛己止 安利天己曽由計 者留可寸三 美知左万多个尓 多知奈可久之曽

和歌 おもふこと ありてこそゆけ はるかすみ みちさまたけに たちなかくしそ

読下 思ふ事ありてこそゆけはるかすみ道さまたけにたちなかくしそ

解釈 心に期することがあるからこそ行くことが出来る、だから、春霞よ、その行く道を妨げるように立ちて隠さないでくれ。

 

歌番号 1018 拾遺抄記載

詞書 小一条のおほいまうちきみの家の障子に

詠人 よしのふ

原文 堂己乃宇良尓 可須美乃布可久 美由留可奈 毛之本乃个不利 多知也曽不良无

和歌 たこのうらに かすみのふかく みゆるかな もしほのけふり たちやそふらむ

読下 たこの浦に霞のふかく見ゆるかなもしほのけふりたちやそふらん

解釈 田子の浦に霞が深く立ちて見えるようです、さらにそれに海人の藻塩焼く煙が立って添えているのでしょうか。

 

歌番号 1019

詞書 山さとにしのひて女をゐてまうてきて、あるをとこのよみ侍りける

詠人 よみ人しらす

原文 於毛飛己止 以者天也三奈无 者留可須美 也万地毛知可之 多知毛己曽幾計

和歌 おもふこと いはてやみなむ はるかすみ やまちもちかし たちもこそきけ

読下 思ふ事いはてやみなん春霞山ちもちかしたちもこそきけ

解釈 今は思い慕っている気持ちを言い出すことなく止めて置こう、春霞の立つ山路が近い、その言葉の響きではありませんが、噂に立てば、その噂を私の貴女への思いだとして聞いてください。

 

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拾遺和歌集 巻16 歌番号1010から1014まで

2025年04月18日 | 拾遺和歌集 現代語訳 巻16

歌番号 1010 拾遺抄記載

詞書 おなし御時、梅の花のもとに御いしたてさせ給ひて、花宴させ給ふに、殿上のをのこともうたつかうまつりけるに

詠人 源寛信朝臣

原文 遠利天美留 加比毛安留可奈 武女乃者奈 遣不己々乃部乃 尓本日万佐利天

和歌 をりてみる かひもあるかな うめのはな けふここのへの にほひまさりて

読下 折りて見るかひもあるかな梅の花けふここのへのにほひまさりて

解釈 手折って眺める甲斐があるようだ、梅の花よ、今日、九重の場にあって、一層に色どりが優ります。

 

歌番号 1011 拾遺抄記載

詞書 内裏の御遊侍りける時

詠人 参議伊衡

原文 加佐之天者 志良可仁末可不 武女乃者奈 以満者以川礼遠 奴可武止寸良无

和歌 かさしては しらかにまかふ うめのはな いまはいつれを ぬかむとすらむ

読下 かさしてはしらかにまかふ梅の花今はいつれをぬかむとすらん

解釈 頭に翳していると、白髪頭に混じってしまう白梅の花、今は、さて、どちらが白髪と抜けばいいのか。

 

歌番号 1012

詞書 清和の七のみこ六十賀の屏風に

詠人 つらゆき

原文 加曽布礼止 於保川可奈幾遠 和可也止乃 武女己曽者留乃 加寸遠志留良女

和歌 かそふれと おほつかなきを わかやとの うめこそはるの かすをしるらめ

読下 かそふれとおほつかなきをわかやとの梅こそ春のかすをしるらめ

解釈 貴方の歳の数を数えても定かではないのだが、私の屋敷の梅こそは、貴方が過ごした春の数をきっと知っているでしょう。

 

歌番号 1013

詞書 題しらす

詠人 よみ人しらす

原文 止之己止尓 佐幾者可波礼止 武女乃者奈 安者礼奈留加者 宇世寸曽安利个留

和歌 としことに さきはかはれと うめのはな あはれなるかは うせすそありける

読下 年ことにさきはかはれと梅の花あはれなるかはうせすそありける

解釈 年毎に咲き替われと願う、梅の花よ、でも、賞賛すべきその香りは、毎年に失せることなく漂わせます。

 

歌番号 1014

詞書 円融院御時三尺御屏風十二帖歌の中

詠人 源したかふ

原文 武女可恵遠 加利尓幾天於留 比止也安留止 乃部乃可須美八 多知可久寸可毛

和歌 うめかえを かりにきてをる ひとやあると のへのかすみは たちかくすかも

読下 梅かえをかりにきてをる人やあるとのへの霞はたちかくすかも

解釈 梅の枝を借りに来て手折る人が居るかと思って、野辺の霞はその咲き誇る梅を立ち隠すでしょう。

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