旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

貧困・格差問題にどう立ち向かうのか

2015-01-06 14:04:39 | 政治経済

 

 「ピケティ現象」という言葉が言われている。フランスの経済学者トマ・ピケティが書いた『21世紀の資本』に由来する。
 彼は、英米仏や日本の100年以上にわたる経済統計を分析してこの書を著し、「資本主義の下では資産を持つ人がますます富み、持たない人々との格差が広がり続ける。富も貧困も世襲されていく」と分析している。(毎日新聞13日付社説)
 これは、アベノミクスなる政策の下でますます助長されている、株や土地を持つ富裕層や大企業はもうかり、必死に働く持たざる層や零細企業が苦しんでいる日本の現状を説明するために書いてくれたような本だ。
 パートや派遣など非正規労働者が2000万人を超え、年収200万円以下のワーキングプアが1000万人を超えたと言われて久しい。昨年末の内閣府の発表によれば、2013年度の家計貯蓄率はマイナス1.3%になったという。マイナスというのは戦後初めてのことで、国民の多くは貯蓄の取り崩しを始めたということを示している。
 ワーキングプアの子弟たちは教育も満足に受けられず、貧困は再生産されていくだろう。前記したピケティの分析、「富も貧困も世襲されていく」と言う言葉が恐ろしい。富はまだしも、「貧困の世襲」という言葉には身の毛がよだつ。

 すでに150年前、この現象を予言した者がいる。カール・マルクスだ。彼は『資本論』(ピケティによれば「19世紀の資本」か?)で、「資本主義的蓄積の一般的法則」を次のように要約している。
 「一方の極での富の蓄積は、同時に反対の極での、すなわち自分の生産物を資本として生産する階級の側での、貧困、労働苦、奴隷状態、無知、粗暴、道徳的堕落の蓄積なのである」(大月書店版840頁)
 ピケティは、続く百数十年の統計を分析して、マルクスの「一般的法則」を証明したと言えるのではないか?
 マルクスはその上に立って、生産物を生み出す生産手段を、資本家の手から社会全体の手に移して、生まれる富を社会全体の所有物とする社会主義社会を展望した。ピケティは、格差解消のための国際協調による富裕税の創設を提起している。
 マルクスの言う根本的解決策を探求するのか、ピケティの処方箋的解決策を求めるのか…、いずれにせよ人類は、21世紀をかけてこの問題に立ち向かうことになるのではないか。


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