旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

国立劇場で歌舞伎を愉しむ

2014-08-15 10:19:32 | 文化(音楽、絵画、映画)

 昨日は娘のオペラ公演慰労を兼ねて、親子で国立劇場の歌舞伎を観てきた。公演の名称は、「昭和26年 国立劇場歌舞伎俳優研修修了生・既成者研修発表会 第20回稚魚の会・歌舞伎会合同公演」という長い名前である。
 聞けばこの人たちは、いわゆる大歌舞伎の血統派の人々ではなく、真に歌舞伎が好きでこの道に入った人たちであるが、血統派でないだけに決して大歌舞伎で主役を演じることはないという。その人たちが年に1回、晴れて主役を演じて研修の成果を発表すのがこの催しであるそうな。会場からは演技の度に「○○屋!」などの声がかかっていたが、それだけに彼らのひたむきな演技を応援する人も多いのだろう。
 私が昨日見る契機となった中村梅乃さんも、中学生の時から「どうしてもやりたい」とこの道に入ったと聞いたが、舞台(菅原伝授手習鑑)では「松王丸女房千代」と「御台園生の前」という大役を演じ、その立ち居振る舞い、女形としての美しさ、声の張りともども見事な演技であった。

 『菅原伝授手習鑑』は、ご存じ、大宰府に流された菅原道真の息子菅秀才を、敵方藤原時平の手兵から守ろうとする物語。最後はわが子を身代りにして菅秀才を守るのであるが、その身代わりの子の親が敵方に仕える松王丸であったことに観衆は驚き涙する。いわゆる忠義のためにわが子をも供する、子もまた親の意を悟り孝行に徹する…という日本人の中に長く流れる忠孝精神の物語である。

 この物語の「車引」、「賀の祝」、「寺子屋」三幕を見事に演じた歌舞伎会・稚魚の会の人たちに拍手を送る。大歌舞伎では脇役しか演じえないこの人たちにもっと出番をつくることはできないのだろうか? 料金は大歌舞伎1万5千円前後、昨日は3千5百円、実に5分の一だ。この値段の公演が広まれば、歌舞伎はもっともっと普及するのではないか。

                        


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