旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

久しぶりの居酒屋「浅草一文」

2012-03-02 20:33:00 | 

 

 何年ぶりかで (ひょっとすると10年ぶりかもしれない)「浅草一文」に行った。江戸風といわれる佇まいの居酒屋で、昔はよく出かけたがこのところ遠ざかっていた。ひょんなことから会社の若者たちと出向くことになった。以前と変わらぬ風情で、よく飲みよく食べて楽しい一夜であった。
 店に上がるとまずその日の飲み料を見計らう現金を払って「木札」を購入する。この店では注文した料理や酒代を、この一文、五文、十文などの木札で支払う。木札がなくなると一滴の酒も飲めないので補充するしかない。「少々公的資金を注入するか…」とか言いながら、年長者や高収入者が円を取り出し木札を購入する。それでも足りなくなると全員に増資を呼び掛け、一律に何円かを拠出して木札を補充する。いよいよ金がなくなればそこでオシマイ。すごすごと帰るしかない。

     

 江戸っ子は宵越しの金はもたぬとか言っていたが、これは、所詮は大した金はもっていなかったことを示していたにすぎず、なけなしの金を払って飲みつくしていたに違いない。この日は総勢7名、まず一人3千円を投じ、その後私とT女史が公的資金と称して各1万円を投じ、これで十分に酔いかつ食べた。公的資金とか言っても会社の金など一切使わず、力に応じて金を出し合っているところにこの会の誇りがある。

 マグロを注文すると、骨つきマグロをハマグリの貝殻でそぎ落としながらタレに浸して食べるという凝りようで、料理は一般に人気があったが、最高の人気は「ネギま鍋」。マグロの切り身と千寿ネギを主な材料とした鍋で、当店独特のどす黒いだし汁で煮る。最初は3人前ぐらいを頼んでみんなでつついていたが、どんどん追加してかなり食った。




 
  当店独特のだし汁

 それにつれて酒も飲んだ。浅草には一般に良い酒を置いた店が少ないといわれているがこの店の酒はよいとされている。ただ、本醸造中心で一合(正味は一合ないだろう)6百円から9百円は高いと思った。おそらく原価の4,5倍とっているだろうが、もう少しコストパフォーマンスを考えてほしい。立派な料理で相応の金をとっているのだから、仕入れて売るだけの酒は原価の2.3倍の値段にならないかというのが私の持論だ。
 まあしかし、久しぶりに大満足した浅草の一夜であった。 


 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿