旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

裏磐梯・五色沼の旅(5)--福島の酒

2008-06-27 18:22:53 | 

 

 福島県はまた酒どころである。銘酒の多い東北の中でも、酒蔵の数は一番多い。私が『蔵元のすすめる飲み屋』を書いた時(1996年)の調査では、蔵の数は92を数え、山形の57、秋田の53をはるかにしのぎ、東北ではトップであった。現在はどのくらいになっているのだろう。
 大手では「栄川」、「花春」、「会津ほまれ」、「奥の松」など、東京でもたくさん出回っており、「大七」などは生もと造りが有名で、すばらしい酒だ。
 中でも会津には、いい蔵がひしめき合っている。前記した大手(栄川、花春、会津ほまれ)のほか、「末廣」や「奈良萬」は名酒を造って確固たる地位をを築いており、最近では、小さい蔵で、広木酒造の「飛露喜」(会津坂下町)、喜多の華酒造の「星自慢」(喜多方市)、曙酒造の「天明」(会津坂下町)などが、たまらない名酒を醸している。会津ではないが田村市の玄葉本店の「あぶくま」などとともに、500石以下の小さい蔵でありながら、(いや、ちいさい蔵だからこそ、と言うべきか)純米酒を中心に素晴らしい酒を造っている。(広木酒造は今や千数百石の蔵になったが)

 今度の旅で嬉しかったことの一つに、宿泊した国民休暇村に、「会津の地酒」として、広木酒造の「泉川」、曙酒造の「天明」、東山酒造の「会津娘」はじめ、蔵元を忘れたが「春高桜」、「ゆり」、「写楽」などが揃えられ、いずれも純米酒、純米吟醸、大吟醸であったことだ。そして燗酒は「末廣」であり、すべて立派なものであった。しかも枡の中に据えられたコップには、枡にあふれんばかりに注がれ、量的にも充足感があった。
 われわれは二泊したが、義兄と二人で上記の酒を10杯飲んで、帰る日の朝ウェイトレスに「地酒をたくさん飲んでいただきありがとう」と御礼を言われた。

 私はこれらの蔵を回りたかったのであるが、いかんせん時間がなく、会津若松市の市中にある「末廣酒造」嘉永蔵だけを訪ねた。ちょうど蔵元は青森にご出張中であったが、奥様(専務取締役)にお目にかかり、蔵や建物の隅々から、建物内にある音楽ホール、クラシックカメラ博物館にいたるまで案内していただいた。
 創業1850年、徳川慶喜や野口英世の書をはじめ、幕末から現代に至る歴史を語る豊富な収集品に目を見張った。多くの蔵がそうであるように、地元の旧家として、単に酒を造るだけではなかったのだ。
                             


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