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旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

映画『武器なき闘い』を見て

2022-01-30 14:48:32 | 文化(音楽、絵画、映画)



 久しぶりに映画『武器なき闘い』を見た。既に4.5回は見たと思うが、見るたび感動が勝る映画だ。練馬区栄町のギャラリー「古藤」の山本薩夫監督映画特集(膳13本)の中の一本だが、山本監督映画の中でも最高傑作のひとつではないかと思っている。
 京都は宇治の料亭「花やしき」の御曹司で、京大教授の生物学者山本宣治(通称“山宣”)が、昭和4年の治安維持法改悪法案に反対する国会演説の前夜、右翼に殺害されるまでの短い生涯を描いたもの。とかく「弱い人間」の代表のように言われるインテリゲンチャであるが、科学的信念に裏付けられたインテリの強さを、これほど鮮明に示した例があるだろうか。
 見るたびに心に残る「山宣の名セリフ」をいくつか書き残しておく。
・若い活動家の結婚祝いに指輪をあげると、「ブルジョワ趣味だ」と突き返されて
 「いつか君に言いたかったことは、張り詰めた糸は切れやすいいうことや」
 …この若者はやがて闘いの激しさの中で裏切る…
・料亭の酒の燗番でチビチビやりながら、番頭さんに
 「一杯どうやや、こんな酒今に飲めなくなり、芋ばかり食わされるぞ」
・選挙演説の後、「先生本当に頼みますよ」と不安げな支持者たちに、
 「ウソを言わないのが私のとりえや。みんなの声は国会でそのまま話す」
・野党議員も全て懐柔され、治安維持法反対演説をやる者はいない。「君しかいない。日本の将来のため何としてもやってくれ」とオルグされて、彼は寂しく呟く
 「殺されてもやらんとあかんのかなあ…」

 彼の不安は的中する。しかし「ウソをつかない」唯一のとりえは彼を動かし、関西の全農党大会で「山宣ひとり孤塁を守る。だが私は怖くない。後ろに大衆が付いているから」と言い残して上京する。その夜、国家権力の差し金で殺害されたのである。

  
      


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