スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋王戦&スピノザの異議

2016-12-20 19:09:21 | 将棋
 16日に指された第42期棋王戦挑戦者決定戦変則二番勝負第一局。対戦成績は敗者組の佐々木勇気五段が4勝,勝者組の千田翔太五段が3勝。
 振駒で佐々木五段の先手。千田五段の2手目が△3二金という変則的な序盤戦でしたが相矢倉に。後手が入城せずに先攻し,片矢倉にした先手が棒銀で攻め合う将棋に。
                                     
 後手が△8六歩と取り込んで先手が受けた局面。▲8三歩と先手を取って受けるのは放置して△8七歩成~△8四香で後手が勝ちになる局面だったようです。
 後手は△6五歩で勝てるという読みだったようですが,▲2二歩成から攻め合われると一手負けになると読み直し修正を迫られることに。選択されたのは△8九とで,これは△8七歩成以下の詰めろになっているので最善だったようです。
 後手の読みはここで▲5七金寄△6五歩で勝ちというもの。先手もそうみたようで▲5八金と下に逃げ道を求めました。今度は読んでいない手を指され,また後手は修正が必要に。それでも△2七歩と叩いて▲同飛に△3六角の飛車金両取りを掛けたのは,手番を渡して怖いようですがまた最善だったようです。
 先手は▲5三桂不成と詰めろで銀を取って△同金に▲3三桂と打ち込みました。読み筋は△同桂▲7一角で勝ちというもの。ただしそれで本当に勝ちかどうかは不明で,さらに実戦は△同銀と取られたので今度は先手に修正の必要が生じたのですが,ここではもう手段がなくなっていたようです。
 ここまで進んでしまえば▲同銀成と取るのは仕方ないでしょう。ですが△8七歩成▲同歩の後に△2七角成で飛車を取られました。
                                     
 飛車がいなくなると先手の攻めは足りません。ここから▲2二歩成△同金と進めましたがその局面は勝ちと後手は読み切っていたようです。戻って▲3三桂と打ち込んでいったのが敗着。▲2八飛と逃げておけばまだ難解な戦いが続いていたようです。
 勝者組の千田五段が勝ったので挑戦者に決定。同時に六段昇段を果たしています。千田五段のタイトル戦出場は初。第一局は来年の2月5日です。

 『デカルトの哲学原理Renati des Cartes principiorum philosophiae pars Ⅰ,et Ⅱ, more geometrico demonstratae』の第一部定理七備考でスピノザがデカルトの論証に疑問を呈するとき,まずスピノザが主張しているのは,デカルトが何を容易といい,何を困難といっているのかが分からないということです。したがってデカルトが論証のために援用しているふたつの公理のうち,これはひとつめの公理に関係しているといえるでしょう。スピノザはその疑問の理由について,どんなものであっても絶対的な意味で容易とか困難とかいわれることはあり得ず,もしもそういわれ得るとしたらそれはその原因に関してなのであり,原因に関してそのようにいわれる以上,異なった原因については同一物が同一時に,容易であるとも困難であるともいわれ得るからだという主旨のことをいっています。
 スピノザはこのために蜘蛛の比喩を用いています。すなわち蜘蛛は人間が大きな困難をもってしか,すなわち大変に困難な原因をもってしか張ることができない網を容易に張ります。だからといって蜘蛛は人間が容易になすことについて容易になすというものではありません。つまり網を張ることが大きなことであり,それをなすから人間がなす小さなこともなせるというものではないのです。よってこれだけでひとつめの公理は不十分になるのであり,論証を崩すだけであればこれで十分だと僕は考えます。スピノザはこの後で,人間は天使にさえなすことが不可能と思われる多くのことを容易になすといっていますが,この部分はある種のサービスと僕は思います。というのはこの一文は,人間が蜘蛛よりも困難な多くのことをなすという意味にもなりますが,もしデカルトの公理が正しければ,人間は天使がなすことはすべて容易になすということも帰結させるからです。つまりここでは純粋に哲学的な事柄だけが述べられているのではなく,宗教的なことも意図的に記述されているというのが僕の判断です。
 これは,ライオンの自然権が部分的に人間の自然権を凌駕するからといって,ライオンの自然権が人間の自然権より完全な自然権であることにはならないこととパラレルな関係にあります。ここでは完全ということが困難ということに置き換えられているのです。

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