Sightsong

自縄自縛日記

松丸契@東池袋KAKULULU

2020-08-31 07:46:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

東池袋のKAKULULU(2020/8/30)。

Kei Matsumaru 松丸契 (as)

松丸契のアルト独奏は何回目なのだろう。これまで下北沢のNo Room for Squaresでほぼ真っ暗にして行われてきたわけだけれど、この日は窓から陽が差し込む2階の木の部屋。それが演奏者の孤独な作業に影響しているかどうかはわからないが、聴く側の意識としては風景と一体で取り入れることができて、どちらもおもしろいのではないか。

何しろ90分間と長いため、聴く側が飽きたり音を意識しなくなったりすることがないよう、十分な変化が付けられなければならない。実際、表現は多彩だった。

はじめはやや音価を長めにして、一音ごとに部屋の反響を全員で確かめる感覚。部屋のつくりのためか、聴く側の意識のせいか、管の響きよりも息の響きのほうが後に残るように思えた。やがて演奏は「楽器の運動」へと移行する。イメージを乗せるというよりも、楽器操作のメカニズムが主体となったもの。それは感情とセットになったイメージが乗りやすい領域にシフトしてゆき、音色の艶もそれによって目立つようになった。

次第に重音が混ぜられてゆき、ゆっくりとそれが中心にも座るようになった。そして松丸さんはピアノのほうに向き、エキセントリックなものも含めさまざまな音を試行する。音のひとつひとつはピアノのペダルによって残響を付けられ、確かめられる。それは本人にでもあり、また場全体にでもあるだろう。なだらかなプロファイルの山を持つ音はそのような作業に乗りやすくもあるが、きれいな音を味わうという快感原則に堕することはない。音域は拡げられ、ふたたび「楽器の運動」にも戻った。ペダルから足を外した際の変化も印象的。

ここまで聴いていて、既存のなにかの引用がないことに驚かされた。

楽器の運動、楽器の響き、速度、部屋の響き。それに加えて、音の消滅が要素として出てきた(ペダルからの脱出とつながっていたのかなと後で思いついた)。ストッパーはマウスピースをくわえる口元にある。その結果キー操作に意識が集まる。そしてベンドなどにより周波数が変えられ、重音などにより音色が大きく変えられた。

もちろんサックスは単音の旋律楽器であるから、旋律の創出に向けた努力という過程自体もおもしろい。同じ音に執拗に戻ってはフレーズが発展させられる。聴く側はそこに小さな驚きを積み重ねる。

松丸さんはピアノに背を向けて、直接的な音を出すようになった。その結果なのか、旋律は明るく、音色は内向きにくぐもったものとせずメタリックな感覚にもなった。音の連なりは長くなってゆき、明の説明はできないながら、クライマックスの雰囲気がもたらされてきた(それが「運動」の器楽か)。

音を出す苦しみが見え、キー操作から息遣いや音色に場の意識が戻ってきた。はじめにあった、息が場に取り残されなかなか消えない感覚もまた戻ってきた。また音と音のつながりが連続的にもなってきた。

ふたたびピアノのペダルで残響を強調する。ここで不思議に思えたことは、残響があると聴く意識はぼんやりと過去に向かい、ないと現在に引き戻されることである。また残響はピアノだけでなく鍵盤の横に置かれたコップからも出そうとしていたようにみえたが、これは穿ちすぎかもしれない。

終盤は、運動へ、シンプルで力の強い音へ、繰り返しと発展へ。これらの絶えざる往還が、時間の流れを伸び縮みさせるようにも思えた。旋律の繰り返しの結果、何かの場所が見出されたような安心があったが、他の人はどうとらえていただろう。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●松丸契
瀬尾高志+松丸契+竹村一哲+高橋佑成@公園通りクラシックス(2020年)
松丸契+永武幹子+マーティ・ホロベック@なってるハウス(JazzTokyo)(2020年)
松丸契@下北沢No Room For Squares(2020年)
松丸契+片倉真由子@小岩コチ(2020年)
細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO(2019年)
松丸契『THINKKAISM』(2019年)
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)


廣木光一+吉野弘志@下北沢Lady Jane

2020-08-30 10:03:00 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のLady Jane(2020/8/29)。

Koichi Hiroki 廣木光一 (g)
Hiroshi Yoshino 吉野弘志 (b)

達人ふたりのデュオ。配信アルバム『Alvorada』のレコ発のような形だが、アルバムは5年前の録音であり、新曲も増えている。また収録曲の演奏の雰囲気もちょっと違っていておもしろい。

割と新しい「なんやらかやら」と「二丁目の春」を経て、ノエル・ローザの「祈りのかたち」。廣木さんと青木カナさんとの新譜『Raizes』にも収録されている曲だが、吉野さんも気に入って採譜したのだという。はじめの弓弾きの音色からすでにうたになっている。廣木さんの弱い軋みの中から輝くように転がり出てくる宝石。

ジョビンの「Luiza」。廣木さんの和音はときに引いてしまうほど素晴らしいのだが(たとえば、渋谷毅さんとのデュオ『Águas De Maio 五月の雨』の「Beyond the Flames」、2分過ぎの音)、ここでは、ベースソロのあとにそれをさらりと弾いてみせた。『Alvorada』ではベースソロに入る直前であり、それが記憶にあったためにまた新鮮だった。また別の和音も最後に2回、3回目は軽く弾いてふたりで笑う。気持ちの昂りを表現する「Luiza」の演奏としてみごと。

続いて、やはりジョビンの「O Boto」(アマゾンの小イルカのことだそうだ)。高めの音域での滑空するような弓弾きが絶品であり、ピチカートに移ると廣木さんが雲のように入った。テーマに入るとふたりともノるのがまた良い。

セカンドセットはミンガスの「Orange Was the Color of Her Dress」から。息を合わせて気持ち良く進むところも、廣木さんが敢えてもたつくところもにくい。なんだったかジョビンの曲を経て、シコ・ブアルキの「O Que Sera」、そして吉野さんのために廣木さんが作った「ベーシストの孤独」。ピチカートにギターが寄り添う。

ブアルキ「Samba De Orly」、そしてアンコールはカルトーラの「Alvorada」。ベースとギターとがじつに柔らかく絡み、間合いも音楽の機微もすべてわかっているようだ。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●廣木光一
HIROKI BAND@本八幡cooljojo(2020年)
廣木光一+ナスノミツル+芳垣安洋@本八幡cooljojo(2019年)
HIROKI BAND@南青山ZIMAGINE(2019年)
廣木光一+渋谷毅『Águas De Maio 五月の雨』(2018年)
廣木光一+永武幹子@cooljojo(2018年)
高田ひろ子+廣木光一@本八幡cooljojo(2017年)
安ヵ川大樹+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
Cooljojo Open記念Live~HIT(廣木光一トリオ)(JazzTokyo)(2016年)
廣木光一(HIT)@本八幡cooljojo(2016年)
廣木光一『Everything Shared』(2000年)
廣木光一『Tango Improvisado』(1995年)

●吉野弘志
吉野弘志+永武幹子@アケタの店(2020年)
吉野弘志@アケタの店(2019年)
西島芳 triogy@本八幡cooljojo(2018年)
西島芳 triogy@下北沢Apollo(2018年)
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
向島ゆり子『Right Here!!』(1995-96年)
ジョセフ・ジャーマン


マクイーン時田深山@下北沢Apollo

2020-08-30 09:01:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のApollo(2020/8/29)。暑くてまぶしい夏の昼間に暗くて涼しい地下の部屋。

Miyama McQueen-Tokita マクイーン時田深山 (十七絃箏)

深山さんはプラスチックを買わない・使わないということをライフスタイルに取り入れているのだが、やむなく出てしまったプラごみを使った即興を行った。これが、最初の「Shiroi Yoru」(『Sonobe』にも収録)における低音をやさしく撫でる感覚とはずいぶん変わり、驚きを与えてくれるものになった。左手で異音を出しつつ、プラや右手を使って弦に触れる。やがて両手で弾きはじめるのだが、しばしば左手で弦を押しては音を歪ませる。その結果として一音がとても強い。そしてある領域を基盤として左手で高低を行き来した。

セカンドセットはビョークの「The Anchor Song」。越生の山猫軒でリコーダーのライアン・ウィリアムスとデュオで演奏したことを話に聞いていて、興味津々だった。ビョークとは違う響きを持つ「I live be the ocean...」の呟きとともに箏の最低音を効果的に使っている。なんどか左手首で弦の振動を止め、まるで喉がうぐっと鳴るような雰囲気も出している。竜尾を撫でる音は声の艶。(深山さんがビョークの大ファンだと知ったのはついこの間のことである。)

続いて即興。高音から中音域を流れるように奏で、左手で2本の弦をつまみあげる。この動きによって、単の響きと複の響きとが混じりあって実に良いあんばいになった。ときに全音域を跳躍するようにしてジャズのバップも思わせるノリになった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●マクイーン時田深山
マクイーン時田深山@下北沢Apollo(2020年)
アンノウン・ミラーズ『Your Ten Is My Twelve』(-2020年)
『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(JazzTokyo)(2019年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)


ラッパとタイコ@阿佐ヶ谷天

2020-08-29 09:19:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿佐ヶ谷天(2020/8/28)。

1st set
Teruhito Yamazawa 山澤輝人 (ts)
Kuniyoshi Yamada 山田邦喜 (ds)
2nd set
Houhi Suzuki 鈴木放屁 (ts)
Takenori Saeki 佐伯武昇 (perc)
3rd set
Hideo Tokioka 時岡秀雄 (ts)
Kaori Komura 香村かをり (チャンゴ、チン)

テナーと打楽器のデュオを3セット。

ファーストセット、山澤+山田。冷静なのか奔流で暴れるようなことがないドラムスで、様々なパターンにより打音を放つ。シンプルゆえにずれや変化に焦点が当てられる。山澤さんは終始抉るようなブルースを吹いた。大きなヴィブラートの片方で濁り、もう片方でそれがリリースされたりして、情と濁りのグラデーションがとても良かった。

セカンドセット、鈴木+佐伯。放屁さんはやはり飽くことなく波動砲を放ち続ける。その一方で佐伯さんはあらゆるものを叩く。リミッター外しが放屁さんとマッチしておもしろい。放屁さんは4番のリードをなんども取り替えていたのだが、それを含めて、終わったあとに山澤さんから調子いまいちでしょうとツッコミがあった。(いや、いつもながらにのけぞったけれども)

サードセット、時岡+香村。血流を止めて時が来るのを待っているかのような、時岡さんのテナー。それが即興の場を作り出すために模索する香村さんのチャンゴと相まって良いサウンドが醸成された。ちょっと間を置いてもういちど始めた演奏は、韓国的なものに時岡さんが近づいていくもので、もろもろの要素が混じった時岡さんのメロディが興味深いものだった。香村さんの音は強弱と時間の伸び縮みが特徴的。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●山澤輝人
Meg with Reed Dukes@武蔵境810 Outfit Cafe(2019年)
Sono oto dokokara kuruno?@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)

●鈴木放屁
Meg with Reed Dukes@武蔵境810 Outfit Cafe(2019年)
日本天狗党、After It's Gone、隣人@近江八幡・酒游館(2019年)
Sono oto dokokara kuruno?@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)

●時岡秀雄
原田依幸@アケタの店(2018年)

●香村かをり
梅津和時+香村かをり@白楽Bitches Brew(2020年)
三浦一壮+丸田美紀+香村かをり+木村由@なってるハウス(2020年)
金剛督+香村かをり+大由鬼山@包丁処たち花(2020年)


秋山徹次+すずえり@水道橋Ftarri

2020-08-24 07:46:47 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2020/8/23)。

Tetuzi Akiyama 秋山徹次 (g)
Suzueri すずえり (prepared p, self-made instruments)

すずえりさんはモーターなどを使ってピアノにちょっかいを出し続けるが、そこにスペクタクル性はない。むしろシンプルな設定であり、それだけに、茶運び人形のような自動的なものと、自律的なものと、和音も含めピアノをピアノらしく鳴らすあり方とが混在するおもしろさに集中できた。

いつの間にか変わっている響きがその変容を反映しているわけだけれど、それはふたりによって作られている。その中でも静かに強烈な音を打ち込んでくる秋山さんのギターには、わかっていても驚かされる。ぐにゃりと急停止する音など曲がることを恐れない五寸釘である。

想像したよりも奇妙に美しさが提示された2セット。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●秋山徹次
ヨアヒム・バーデンホルスト+ガレス・デイヴィス+秋山徹次@水道橋Ftarri(2020年)
ドーヴィッド・シュタッケナース+秋山徹次+中谷達也@東北沢OTOOTO(2020年)
アーサー・ブル+秋山徹次、神田さやか@Ftarri(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
エリザベス・ミラー+クレイグ・ペデルセン+秋山徹次+中村としまる@Ftarri(2018年)
「響きの今」(ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、ピーター・エヴァンス、秋山徹次)@両国門天ホール(2018年)
高島正志+古池寿浩+秋山徹次「Blues Frozen Xīng ブルース 凍てついた星」@Ftarri(2018年)
Sound of the Mountain with 秋山徹次、中村としまる『amplified clarinet and trumpet, guitars, nimb』(JazzTokyo)(2017年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
池田謙+秋山徹次@東北沢OTOOTO(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)

●すずえり
エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri(2019年)
すずえり@Ftarri(2019年)
すずえり+大城真『Duo』(2018年)
ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、すずえり、大上流一、石川高、山崎阿弥@Ftarri(2018年)
角銅真実+横手ありさ、田中悠美子+清田裕美子、すずえり+大城真@Ftarri(2018年)
フタリのさとがえり@Ftarri(2018年)
Zhao Cong、すずえり、滝沢朋恵@Ftarri(2018年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
すずえり、フィオナ・リー『Ftarri de Solos』(2017年)


Force@阿佐ヶ谷Yellow Vision

2020-08-21 07:58:05 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿佐ヶ谷のYellow Visionで、吉田哲治さんの新バンドForce(2020/8/20)。

FORCE
Tetsuji Yoshida 吉田哲治 (tp)
Masafumi Minato 湊雅史 (ds)
Komari 小林真理子 (b)
Ippei Kato 加藤一平 (g)

ジャズロックだと宣伝しているが、個性的なメンバーでもあり、なかなか普通ではなかった。

そのことは最初の「Early Morning」でわかる。ギター、ベース、ドラムスがときおりシンクロし、ある領域にずどどと入っていき快感。楽園的な「Rainy Season」、変態的にベースとギターとが絡む「Laughter」。

この最後の曲でも、セカンドセット冒頭の「Reverb」でも露わになったのは、どじゃーんというサウンドの中でも、ちょっと寂しそうでワビサビ的な感覚を捨てない吉田哲治さんのトランペット。湊さんのキメ技もアソビもいいし、コマリさんのひたすら下から浮揚させるエレベもとてもいい。

「IM1」はコマリさんがあるパターンを出して始まり、ストップ&ゴーの縦波的感覚。トランペットの周りをみんなが遊泳している。ジンジャーエール?ジンジャーエール?と言いながらの「City Lights」での長めにうたうトランペット、潔く料理をするようなドラムス。

「Touch」はドラムスからどや顔のファンク、と思っていたら、「Flower Song」ではバップ曲も引用しつつ、加藤さんがトランペットのフレーズに呼応する見せ場があった。アンコールは短めの「Parade」、ここでも妙なトランペットソロに始まって全員が絡み一気に走る。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●吉田哲治
吉田哲治+永武幹子@なってるハウス(2020年)
吉田哲治+栗田妙子@東中野セロニアス(2020年)
吉田哲治『December』、『Eternity』(2019年)
吉田哲治『Jackanapes』(2018年)
FIVES & 鈴木常吉『童謡』(1991年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』
(1988年)
生活向上委員会大管弦楽団『This Is Music Is This?』(1979年)

●小林真理子
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)

●加藤一平
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
シワブキ@なってるハウス(2019年)
騒乱武士『秋田・鎌鼬の里ライブ』(2019年)
鳴らした場合、20 Guilders@高円寺円盤(2018年)
波多江崇行+加藤一平@なってるハウス(2018年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
竹内直+加藤一平@セロニアス(2017年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)


梅津和時+香村かをり@白楽Bitches Brew

2020-08-18 22:06:40 | アヴァンギャルド・ジャズ

白楽のBitches Brew(2020/8/16)。店主の杉田さんご退院の記念ライヴ。

Kazutoki Umezu 梅津和時 (bcl, ss, as, cl, fl)
Kaori Komura 香村かをり (チャンゴ, チン, etc.)

ファーストセットはバスクラとチンとの手探りではじまった。やはりというべきか、韓国の音楽家との共演も多い梅津さんならではのプレイがそこかしこに出てくる。ソプラノを敢えて斜めにくわえてよれさせる音程も、アルトの艶も濁りも、韓国を色濃く感じさせる。バスクラはまた別で、叩きの要素がある。

香村さんはいろいろな打楽器を横に置いているが、基本的にはチャンゴとチンの組み合わせで攻める。細いスティックでは鋭い強弱と濃淡を、マレットでは柔らかく全体的に響くものを、という組み合わせに加え、左右の違い、強弱の違い、またひとかたまりの叩きの継続時間が異なり、シンプルでありながら奥が深い。

鐘の長い響きとバスクラのロングトーンや循環呼吸とのシンクロもおもしろい。

セカンドセットに入り、アルトのでかく圧の強い音にあらためて驚かされる。ピッチは根本で揺るがず韓国的に揺らぐ。シンバルとつややかなアルトとでの祝いの時間もあった。ソプラノはむしろしなやかにピッチが変わっていく。韓国的といえば同じパターンで打楽器を叩き続けることの快感があって、セカンドセットにそれが多く出てきた。梅津さんのソプラノとアルトの2本吹きもやはり素晴らしいものだった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●梅津和時
リューダス・モツクーナス+大友良英+梅津和時@白楽Bitches Brew(JazzTokyo)(2019年)
ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン(2018年)
マイケル・ヘラー『Loft Jazz: Improvising New York in the 1970s』(2017年)
生活向上委員会2016+ドン・モイエ@座・高円寺2(2016年)
くにおんジャズ(2008年)
『鬼太郎が見た玉砕』(2007年)
金石出『East Wind』、『Final Say』(1993、1997年)
向島ゆり子『Right Here!!』(1995-96年)
梅津和時+トム・コラ『Abandon』(1987年)
梅津和時『竹の村』(1980年)

●香村かをり
三浦一壮+丸田美紀+香村かをり+木村由@なってるハウス(2020年)
金剛督+香村かをり+大由鬼山@包丁処たち花(2020年)


815展でのパフォーマンス(広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊

2020-08-16 08:13:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

浜町の好文画廊(2020/8/15)。

昨年に続き足を運んだ。酷暑ゆえ中に入るとほっとするが、早すぎてテーブルや椅子を運んだりうろうろしたり。長谷川美鈴さんは熱中症気味だとかで現れず、池田陽子さんは夏バテだと呟きながら力なく歩いてきた。「皆勤賞」だったという矢部優子さんも欠席。

Junji Hirose 広瀬淳二 (ts)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)
Takao Watanabe 渡辺隆雄 (tp)
Akira Endo 遠藤昭 (reading, dance)

皆さん、「遠藤さん今日はどうしましょう」と言いながらリラックスしている。さすがである。美術家の遠藤さんは、「適当に壁に向かってひとりひとりやってくれればいいよ」と。

そんなわけで、遠藤さんが古井由吉『子供の行方』を朗読し、3人が順次演奏する。広瀬さんはわりとオーソドックスなテナー(発泡スチロールが消えた)でギャラリーの中二階を歩き回りながら吹く。渡辺さんの粒だった音、池田さんの細いのか太いのか、魅力的な奔流。

終わってしばらくして、遠藤さんがまたやろう、と。こんどは3通りのデュオを演る横で遠藤さんが踊る。

この隙間だらけの空間に自由と平和への思いが満ち満ちている。

 

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●遠藤昭
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)

●広瀬淳二
広瀬淳二+カル・ライアル+クリスティアン・メオス・スヴェンセン+ダレン・ムーア@下北沢Apollo(2020年)
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
広瀬淳二+さがゆき@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる、エリザベス・ミラー+広瀬淳二@Ftarri(2018年)
広瀬淳二『No-Instrument Air Noise』(2017年)
ブライアン・アレン+広瀬淳二+ダレン・ムーア@Ftarri(2018年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
クリス・ピッツィオコス+吉田達也+広瀬淳二+JOJO広重+スガダイロー@秋葉原GOODMAN(2017年)
広瀬淳二+今井和雄@なってるハウス(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
広瀬淳二『SSI-5』(2014年)
広瀬淳二+大沼志朗@七針(2012年)
広瀬淳二『the elements』(2009-10年)

●渡辺隆雄
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
渡辺隆雄+早川岳晴『Hums For Midnight Amble』(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
オルケスタ・リブレ@神保町試聴室(2017年)
早川岳晴『kowloon』(2002年)

●池田陽子
ヨアヒム・バーデンホルスト+大上流一+南ちほ+池田陽子@不動前Permian(2020年)
池田陽子、増渕顕史、野川菜つみ、田上碧、メーガン・アリス・クルーン@Ftarri(2019年)
ヒゴヒロシ+矢部優子、プチマノカリス/山我静+鈴木ちほ+池田陽子@なってるハウス(2019年)
ガトー・リブレ、asinus auris@Ftarri(2019年)
Signals Down@落合soup(2019年)
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
Hubble Deep Fields@Ftarri(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
大墻敦『春画と日本人』(2018年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)


岡田ヨシヒロ@池袋Flat Five

2020-08-13 08:06:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

池袋のFlat Five(2020/8/12)。

Yoshihiro Okada 岡田ヨシヒロ (ds)
Guests:
Shoko Kumagai 熊谷祥子 (p)
Ayako Kanda 神田綾子 (voice)

はじめて足を運ぶバーだがいい雰囲気。

岡田ヨシヒロ(岡田ケイタ)さんのドラムソロは多彩。バスドラムで大きな流れを作っていたかと思えば、その主役が上半身のゆらぎに移行したりして。叩くか叩かないかの境界あたりで音を作っているのが印象的だった。

iphoneで撮影

●神田綾子
神田綾子+森順治@横濱エアジン(JazzTokyo)(2020年)
神田綾子+北田学@渋谷Bar Subterraneans(動画配信)(2020年)


デイヴィッド・ブライアント@Body & Soul

2020-08-12 08:02:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

南青山のBody & Soul(2020/8/11)。

David Bryant (p)
Marty Holoubek (b)
Shun Ishiwaka 石若駿 (ds)
Guests:
Shinobu Ishizaki 石崎忍 (as)
Winter Spencer (djembe)

最初の「In Your Own Sweet Way」(ブルーベック)から、繊細で柔軟極まりないデイヴィッド・ブライアントのピアノ世界が展開される。マーティ・ホロベックもまた柔軟、石若駿はブラシからある合図を自分で出して明確な意識とともにスティックに切り替えた。続いてマーティの「Let Others Be The Judge of You」では速いベース弾き。「Nita」(ブライアント)でのイントロから水彩のように透き通るピアノと言ったら。石若さんが最後にシンバルをスティックで擦って締めた。

選曲は興味深く、次にラルフ・タウナーの「Tramonto」を演った。美しいバラードでなんどもリスタートする感覚。ブラシは静かな火花のようだ。ここでアルトの石崎忍が入り、デイヴィッドの「Coat of Arms」(家紋だという)。ゆっくりテーマを吹くアルトに複雑なベースとドラムスが周囲で踊る。石崎さんは後半入りかねているようにみえた。

セカンドセットは「Snack Bar」(ホロベック)から。それまでとコントラストを付けるように強めのタッチ。複雑なコード進行でトリオが絡みあう。続く曽根麻央の「Kyte Flying」も複雑ながら美しく展開する。マーティのベースソロは妙に愉し気だがこれまでに演奏したことがあったのだろうか。またさらに難しそうな曲「Andantino」(ブライアント)はマーティをフィーチャーし、ピチカートの間を縫うようにピアノが入ってくるみごとさ。デイヴィッドの和音の多彩さも素晴らしい。そしてピアノソロをふたりが眺めたあとにバシンと入っていく阿吽の呼吸。スティックでの多層的リズムがまた良い。

ここで再び石崎さんが入り、スタンダードの「Darn That Dream」。ピアノのイントロが手元の世界に集中するようで、そのあとにアルトの艶を活かすデイヴィッド。マーティはうたを自分でもかみしめて弾いている。

なんと最後の曲は「Murray's Steps」(デイヴィッド・マレイ)。デイヴィッドはマレイのことを偉大なメンターだと言った。だがオクテットの演奏が強烈だった原曲とは違い、かなりアレンジされており、まったく別物になっている。流れてはテーマが顔を出す演奏はじつに鮮烈で驚かされた。そしてシンバルとつんのめるようなベースとが入り、円環を思わせるコード進行と大きな速度のうねり。加速するときのドラムスの貢献も特筆すべきである。デイヴィッドはマレイのオクテットに今年参加したはずで、そのときの経験が反映されているに違いない。終わったあとに訊いたら、そのとき録音もなされていたという。

アンコールは石崎忍とジャンベのウィンター・スペンサーが入り、「Footprints」(ショーター)。

やはりデイヴィッド・ブライアントは特別。いつかヘンリー・スレッギル、デイヴィッド・マレイ、スティーヴ・コールマン、ルイ・ヘイズ、マリア・グランド、ジョシュ・エヴァンス、ピーター・エヴァンスらとの共演の話をまとめて聴いてみたい。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●デイヴィッド・ブライアント
ジーン・ジャクソン@赤坂Crawfish(2019年)
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
マリア・グランド『Magdalena』(2018年)
ルイ・ヘイズ@Cotton Club(2017年)
エイブラハム・バートン・カルテットとアフターアワーズ・ジャムセッション@Smalls(2017年)
ルイ・ヘイズ『Serenade for Horace』(-2017年)
マリア・グランド『Tetrawind』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)
レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』(2011、12年)


今井和雄@東北沢OTOOTO

2020-08-10 23:41:29 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTO(2020/8/10)。

Kazuo Imai 今井和雄 (g)

ファーストセットは床に置いたギターの演奏からはじまった。金属棒が弦の間に挟んであり、それによるプリペアドの効果なのか、弦をゆるめに張ってあるのか、独特のノイズとともに音が放たれる。鎖を弦の上に垂らすことによる偶然性と自律性のせめぎ合い、石板の重量による暴力性。だがいきなりその石板を制御して音が走りはじめて驚いた。音の作り方には、触ったあとに楽器にまかせる自律性もみえた。

そしてギターを抱えて両手で掻きむしる。この強さからくる怖さと静かさが不思議にも共存している。弦をおさえつける音のブレーキとその逆の残響とが行き来する。今井さんは再び鎖を使うのだが、こんどは口にくわえて垂らす。弦との接触の音が不思議とヴォイスとのユニゾンのように聴こえたのだがなぜだろう。

なんにせよものすごい音の強度だ。

セカンドセットは鐘を鳴らし、左右の腕で音を拡散させてはじまった。弦の鳴りを抑えては急に響かせる、その両極端の行き来から、すさまじい速弾きに移行した。単音もスライドも高速で繰り出され、異常に楽理的で醒めた狂気を感じざるを得ない。スピードは変化し、旋律の探索自体が持つ強さに驚き続ける。耳を引きはがすことができない怖ろしさがある。やがて接触の程度、弾かなさの程度というグラデーションを感じさせる領域に音が拡がってきたように思えた(このスピードの中で)。そして木の棒を7本束ねたものを垂らし、鎖よりも慣性が大きいために異なる制御をみせた。

わかってはいるようなものだが、唯一無二の演奏家だということを再認識した。

●今井和雄
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
広瀬淳二+今井和雄@なってるハウス(2017年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+今井和雄@東松戸・旧齋藤邸(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
”今井和雄/the seasons ill” 発売記念 アルバム未使用音源を大音量で聴くイベント・ライブ&トーク@両国RRR(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
今井和雄『the seasons ill』(2016年)
Sound Live Tokyo 2016 マージナル・コンソート(JazzTokyo)(2016年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
今井和雄 デレク・ベイリーを語る@sound cafe dzumi(2015年)
今井和雄、2009年5月、入谷(2009年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)(今井和雄とのデュオ盤、1999年)


8.7ヴィオロン

2020-08-08 10:37:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿佐ヶ谷のヴィオロン(2020/8/7)。

Yasushi Ishikawa 石川寧 (tp)
Hideki Hashimoto 橋本英樹 (tp)
Kanji Nakao 中尾勘二 (tb)
Junji Mori 森順治 (as, bcl)
Guests:
Yusuke Morishita 森下雄介 (tp)
Shibahito Akano アカノシバヒト (尺八)

まずは4人で2セット。橋本さんが対話をするように自然にあれこれの音を出し、石川さんがリップと楽器との接点を確かめ、楽器が鳴ることのメカニズムを確かめるような音を出す。このあたりは話し方と似たようなところがある(吉野弘志さんのベースが氏の声と重なるように)。とはいえいつの間にかどっちがどっちの音だと惑わされるところがおもしろい。

森さんのアルトは全員の音領域の中をぐいぐいと掘り進み、バスクラは別のかたちで振動を与えてみせている。中尾さんはトロンボーンのみ、これがまた合の手のようでもあり、独り言のようでもあり、聴こえると笑ってしまう。

3セット目は楽器を持っている人は入ってくれということになった。森下さんのトランペットは手作業ミュートで色を加え、ときに幾何学的な感じに聴こえる。アカノさんは尺八で隙間に風を吹き込んでいる。それでも隙間が多いおもしろさがある。そして中尾さんはそれまでとは違ってドローンのような音でまた笑う。

Fuji X-E2、7 Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●橋本英樹
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
M.A.S.H.@七針(2016年)
森順治+橋本英樹@Ftarri(2016年)
M.A.S.H.@七針(2015年)

●森順治
神田綾子+森順治@横濱エアジン(JazzTokyo)(2020年)
Meg with Reed Dukes@武蔵境810 Outfit Cafe(2019年)
Ten meeting vol.2@阿佐ヶ谷天(フローリアン・ヴァルター)(2018年)
松風M.A.S.H. その3@なってるハウス(2018年)
松風M.A.S.H. その2@なってるハウス(2017年)
鳥の未来のための螺旋の試み@ひかりのうま(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
林ライガ vs. のなか悟空@なってるハウス(2017年)
リアル・タイム・オーケストレイション@Ftarri(2016年)
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)
本多滋世@阿佐ヶ谷天(2016年)
M.A.S.H.@七針(2016年)
森順治+橋本英樹@Ftarri(2016年)
M.A.S.H.@七針(2015年) 

●中尾勘二
ストラーダ@吉祥寺MANDA-LA2(2019年)
グンジョーガクレヨン、INCAPACITANTS、.es@スーパーデラックス(2016年)
中尾勘二@裏窓(2015年)
向島ゆり子+関島岳郎+中尾勘二『星空音楽會 Musica En Compostela』(2010年)
ふいご(2008年)
星の栖家『plays COMPOSTELA』(2005年)
川下直広『漂浪者の肖像』(2005年)
船戸博史『Low Fish』(2004年)
嘉手苅林次『My Sweet Home Koza』(1997年)
大島保克+オルケスタ・ボレ『今どぅ別り』 移民、棄民、基地(1997年)
渡辺勝『とどかずの町で』(1995、97年)

●森下雄介
鳥の未来のための螺旋の試み@ひかりのうま(2017年)

●アカノシバヒト
Meg with Reed Dukes@武蔵境810 Outfit Cafe(2019年)


Fado-mo-two@in F

2020-08-07 10:06:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

大泉学園のin F(2020/8/6)。

Yuki Saga さがゆき (vo, g)
Keiki Midorikawa 翠川敬基 (cello)
Special Guest:
Eiichi Hayashi 林栄一 (as)

さがゆき・翠川敬基・喜多直毅のトリオが「ファド化計画」から「ファドも計画」となり、その後、さがゆき・翠川敬基のデュオで「Fado-mo-two」。この日のスペシャルゲストは林栄一、だがライヴ前に正式メンバーとして加入することが決まり、次回はトリオで「Fado-mo-three」となるそうだ。なんにしてもすごいメンバーである。

「私の中のファド」などを経て「朝日のあたる家」で聴くほうも世界に入ってきた。ギターを強くはじくことでの感情の発露、色っぽいチェロのピチカート。アルトはあまりにも強いのにこの音楽とみごとに共存している不思議。浅川マキが歌った「赤い橋」ではどこからともなく聴こえるか細い糸のような音、それはチェロの弓弾きだと気づき繊細さに驚かされる。さがさんはチェロより遅れてテーマに入る。小女性も深い心も同時にみせるさがさんの世界、その入り口は艶々と紅をさした口のようである。

締めは、高田渡が歌った「ねこのねごと」。さがさん曰く、猫派(林さんは大の猫好きで猫ひっかき病になったことも)、犬派(翠川さんは著書で犬のことばかり書いている)、それにメダカ派(さがさんはメダカを育てている)。かわいいのにドライヴする音楽。

ともかくも22時に終えなければならぬということで、セカンドセットも予定通りにはじまった。「愛の語らい」などを経て、またしても浅川マキが歌った「かもめ」。三人の時間軸が自在に伸び縮みし、また戻ってきては静かな中でさがさんの歌が聴こえる。「奇妙な人生」でのギターをやさぐれた感じで鳴らして終えるのもよかった。

そしてマキさん3曲目、「ふしあわせという名の猫」。だがこれもマキさんの世界とはイントロからして違い、すべて新鮮に感じられる。さがさんはアルトに振り、次に左を向いてチェロに振る。続く「夢は夜ひらく」では笑いながら歌うのにドスがきいている。ぶっといアルトは60億分の1のヒョードルとしか言いようのないものだが、そんなパウンドを横目に平然とギャッと妙な音で刻む翠川さんもただものではない。

●さがゆき
さがゆき+高田ひろ子@中野Sweet Rain(2019年)
広瀬淳二+さがゆき@なってるハウス(2019年)
さがゆき+高田ひろ子@川崎ぴあにしも(2018年)
さがゆき+アニル・エラスラン『Shadows』(2018年)
ファドも計画@in F
(2018年)

●翠川敬基
ロシアのうた@音や金時(2020年)
喜多直毅+翠川敬基+角正之@アトリエ第Q藝術(2019年)
ファドも計画@in F(2018年)
夢Duo『蝉時雨 Chorus of cicadas』(2017-18年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
早川岳晴『kowloon』(2002年)
1999年、井上敬三(1999年)
翠川敬基『犬の細道』(1992年)
高柳昌行+ペーター・コヴァルト+翠川敬基『Encounter and Improvisation』(1983年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981、91、98年)
富樫雅彦『かなたからの声』(1978年)
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年) 

●林栄一
「飴玉☆爆弾」@座・高円寺(2020年)
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
<浅川マキに逢う>ライブ&上映会@西荻窪CLOPCLOP(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年)
林栄一+小埜涼子『Beyond the Dual 2』(2014-15年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
早川岳晴『kowloon』(2002年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999-2000年)
高瀬アキ『Oriental Express』(1994年)


鬼海弘雄『王たちの肖像』、森山大道『沖縄 s49』、ロバート・フランク『Part 1 オン・ザ・ロード』

2020-08-03 07:42:36 | 写真

土曜日に友人と写真展のハシゴ。

■ 鬼海弘雄『王たちの肖像』(JCIIフォトサロン)

浅草界隈で出逢った、独立独歩の人びと。なにか違うように思えてならないが、それは個々の人間が異物に他ならないからである。そのことを正面からあらわにする写真群。

やはり鬼海さんならではのトーンの変化に眼が悦ぶ。おそらく銀塩プリントをもとにデジタル出力しているのだろうけれど、どんなに眼を凝らして見てもそれはわからない。丁寧に筆でスポッティングされた箇所もそのままである。

■ 森山大道『沖縄 s49』(SUPER LABO STORE TOKYO)

わりと新しい神保町のギャラリー。1974年に森山大道が沖縄を訪れ、1週間ほどの那覇滞在中に、ハーフサイズのカメラで撮った写真群。森山大道はもうずいぶんと観たけれど沖縄とは珍しいからと思って覗いてみた。プリントされるたびにアクチュアルな力を持つ森山大道があった。地面からの熱気を吸い込んで肺が苦しいような気分。

■ ロバート・フランク『Part 1 オン・ザ・ロード』(gallery bauhaus)

昨年(2019年)に亡くなったばかりのロバート・フランク回顧展。『The Americans』も他の写真群もそうだけれど、独特の粗さに惹かれる。水平もなにもあったものではない、そんなものはプリントのときに斜めにすればよいしなんなら眼が歪んでしまっても構わない。NYのAstor Placeで撮られた建物と男の写真なんて、視ていると重力場がどうかしてしまう。

●鬼海弘雄
鬼海弘雄『眼と風の記憶』
鬼海弘雄『東京ポートレイト』
鬼海弘雄『しあわせ インド大地の子どもたち』
『日中戦争』、鬼海弘雄写真展『東京夢譚』

●森山大道
『1968年 激動の時代の芸術』@千葉市立美術館
牛腸茂雄『見慣れた街の中で』、森山大道『記録23号/パリ+』、渡辺眸『天竺』
比嘉良治『海と岩の語りを読む・琉球列島』、森山大道『1965~』
森山大道「NAGISA」、沢渡朔「Cigar - 三國連太郎」、「カメラとデザイン」、丸尾末広
中藤毅彦、森山大道、村上修一と王子直紀のトカラ、金村修、ジョン・ルーリー
森山大道展 レトロスペクティヴ1965-2005、ハワイ
森山大道と須田一政

●ロバート・フランク
鈴木清 パリ・フォト報告会
スリランカの映像(6) コンラッド・ルークス『チャパクァ』


松風鉱一+上村勝正+石田幹雄@本八幡cooljojo

2020-08-02 12:00:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2020/8/1)。

Koichi Matukaze 松風鉱一 (fl, ts, as, cl)
Katsumasa Kamimura 上村勝正 (b)
Mikio Ishida 石田幹雄 (p)

予定ではベースは吉野弘志さんだったが事情があって上村勝正さんに交代。まったくバンドサウンドが違ったものになりそうだが、どっちも聴きたい。松風さんはcooljojo初登場。

最初はフルートで楽園的な「Mr. Strongman」。続く「K2」ではうねうねとした旋律でかすれた音のテナー、ここにベースが不穏に刻む。石田さんのピアノは多くのフラグメンツが有機的につながってゆくようであり、テナーのうねりとも軌を一にしておりさすが。アルトでのバラード「2020春」では、かすれたヴィブラートにささくれた音が貼りついており、松風さんの唯一無二の音にうなってしまう。

テナーでの「水色の円と線」(「Blue Blackの階段」と同じくお弟子さんがタイトルを付けたらしい)は不思議なコード展開で、ピアノは不思議に不思議を重ね、ベースはスワロウのように色っぽく入る。「The Man」はハービー・マンに触発された曲だそうで当然フルート。変わったパターンのあとに入ってくるピアノの和音が強くてそのたびに新しい。

またテナーに持ち替えての「E.E.E.」では、ピアノの哀し気なイントロから入り、エロチック感を漂わせる曲。ベースがそれをぶんぶん揺らしている。そのままテナーで「島の朝」。モンクも思わせるメロディーだが松風さん的でもある。ノッてくると軋みとともに全員が走る。

セカンドセット。テナーでの「Hawk Song」を経て、珍しくクラリネットで、また珍しくスタンダードの「After You've Gone」。「Outside」ではかすれた音とキュッと楔のように刺さる高音とが混在し、眼が醒める。可変速のピアノ、悠然と合わせるベースが一緒に遊んでいる感覚でとても良い。

そのままアルトでの「Shallow Dream」のあとは最後までテナー。「ゲストハウスで昼寝」では、一回だけ松風さんが入り遅れてにやっと笑った瞬間があった。「Big Valley」でのピアノは楔を打ち込みながら驚くほどのスピード感で進む。ノリノリのベースも嬉しい。最後は「築地Subway Station」。繰り返しのリフ、速くてかすれたフレーズ。ベースはむしろゆったりとしており、その重層的な時間間隔がおもしろい。石田幹雄のピアノは最後まで素晴らしく、重さを持ちながらも加速も急停止も自在。

松風さんも、ココ音良いなと言っていた。アンプなし生音のライヴ再現に期待。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.4、 XF60mmF2.4

●松風鉱一
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2020年)
夢Duo年末スペシャル@なってるハウス(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
平田王子+渋谷毅『Luz Do Sol*やさしい雨』(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その1)
松風M.A.S.H. その3@なってるハウス(2018年)
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
松風M.A.S.H. その2@なってるハウス(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
板谷博ギルティ・フィジック(1990、95年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
松風鉱一トリオ+大徳俊幸『Earth Mother』(1978年)
『生活向上委員会ライブ・イン・益田』(1976年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』 
反対側の新宿ピットイン
くにおんジャズ、鳥飼否宇『密林』