荷宮和子『バリバリのハト派』という本を読んでいたら、日本における独自のファンタジー変遷論を展開していて(アニメ『聖戦士ダンバイン』まで引用する愉快さ)、そのなかで佐藤さとるの「コロボックル物語」シリーズを高く評価していて、懐かしい思いにとらわれてしまった。小学生のときに図書室で借りては読んでいたのだ。そうすると、偶然にも、息子が、第1作『だれも知らない小さな国』(講談社、原著1959年)を借りてきていた。嬉しくなって、返す前に自分も読んだ。
子どもたちがモチノキの樹皮を剥いでトリモチを作るというくだりしか覚えていなかったが、やはりとても面白い。そうか、これは戦争中の話だったんだなというのは新鮮な発見。原著は1959年で、最初は100部余りの私家版だったという。この魅力的な挿絵は村上勉という画家によるもので、1969年の改版時に登場している。こういったものを読むと、自分はオトナになるまで何をしてきたんだろう、と、ちょっと感傷的になったりして。
ここに登場する小人=「こぼしさま」たちは、アイヌ伝説のコロボックルをルーツとしている(それで呼び方も似ている)。身長は3センチ程度。人間に対してはあえてゆっくり喋るが、ふだんは聞き取れないくらい早口で「ルルルル。」という声を発する。
これで思い出したのは、動物のサイズが小さいほど時間の進み方が早いという話で仰天させてくれた、本川達雄『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書、1992年)である。佐藤さとるがこの理論を知っていたわけではないだろうが、「こぼしさま」が早口なのは生物学的にも正しいわけだ。
これによると、哺乳類にとっての時間は身長の3/4乗に比例する(マクマホンの説明)。身長3センチということは、人間の1/50程度。すると「こぼしさま」の寿命は2年程度ということになってしまう。一方、この物語では、主人公の男の子が大人になるまで、同じ「こぼしさま」が見ているということになっている。
従って、コロボックルは一般則よりも長生きだという結論。