Sightsong

自縄自縛日記

李和晋『新潟』@コ本や

2024-09-21 17:59:05 | 韓国・朝鮮

山吹町のコ本やにて。

詩人の金時鐘さんは、自らが逃げてきた済州島と、1959年からの北朝鮮帰国事業のことを想い、1970年に詩集『新潟』をものした。

そして李和晋さんは新潟を訪れ、帰国事業で使われたであろうバス通りや曽我ひとみさんが拉致された通りを歩き、撮影する。写真群は『新潟』の構成で配置されている。李さんは「近くて遠い他者の生きた/生きている時間の延長上に、ルーツを複数化し、乱反射させていくことを試みます」と書いている。このような写真作品でこちらの視線を乱すのはみごと。

引き裂かれたものはさまざまだ。もとより金時鐘さんの使うことば(かつての支配者のことば)自体が「ごつごつ」している。ことばにも時間にも人間の縁にも立脚地にも断絶がある。以前にアーティストの阪田清子さんが『新潟』のテキストの上に塩の結晶を置いた作品があった。簡単に扱ってはならないことばがある。

求めあう/金属の/化合のように/干潟を/満ちる/潮がある。/一つの石の/渇きのうえに/千もの波が/くずれているのだ。
(金時鐘『新潟』より、抜粋)

●済州島
ハン・ガン『別れを告げない』
杉原達『越境する民 近代大阪の朝鮮人史』
ヤン ヨンヒ『スープとイデオロギー』
済州島、火山島
済州島四・三事件の慰霊碑と写真展
済州島の平和博物館

済州島四・三事件69周年追悼の集い〜講演とコンサートの夕べ
『済州島四・三事件 記憶と真実』、『悲劇の島チェジュ』
オ・ミヨル『チスル』、済州島四・三事件、金石範
文京洙『済州島四・三事件』
文京洙『新・韓国現代史』
金石範、金時鐘『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか 済州島四・三事件の記憶と文学』
金石範講演会「文学の闘争/闘争の文学」
金石範『万徳幽霊奇譚・詐欺師』 済州島のフォークロア
金石範『新編「在日」の思想』
水野直樹・文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』
済州島四・三事件と江汀海軍基地問題 入門編
金時鐘『背中の地図』
金時鐘講演会「日本と朝鮮のはざまで」
金時鐘『朝鮮と日本に生きる』

金時鐘『境界の詩 猪飼野詩集/光州詩片』
細見和之『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』
『海鳴りの果てに~言葉・祈り・死者たち~』
『海鳴りのなかを~詩人・金時鐘の60年』
梁石日『魂の流れゆく果て』(屋台時代の金石範)
仲里効『悲しき亜言語帯』(金時鐘への言及)
林海象『大阪ラブ&ソウル』(済州島をルーツとする鶴橋の男の物語)
金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って』(済州島から大阪への流れ)
藤田綾子『大阪「鶴橋」物語』
鶴橋でホルモン(与太話)
三河島コリアンタウンの伽耶とママチキン
尹東柱『空と風と星と詩』(金時鐘による翻訳)
『越境広場』創刊0号(丸川哲史による済州島への旅)
徐京植、高橋哲哉、韓洪九『フクシマ以後の思想をもとめて』(済州島での対談)
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』(沖縄と済州島)
宮里一夫『沖縄「韓国レポート」』(沖縄と済州島)
長島と祝島(2) 練塀の島、祝島(祝島と済州島)
野村進『コリアン世界の旅』(つげ義春『李さん一家』の妻は済州島出身との指摘)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
吉増剛造「盲いた黄金の庭」、「まず、木浦Cineをみながら、韓の国とCheju-doのこと」
「岡谷神社学」の2冊
沖縄国際大学南島文化研究所編『韓国・済州島と沖縄』

●北朝鮮帰国事業
ヤン ヨンヒ『スープとイデオロギー』
小栗康平『伽倻子のために』、『泥の河』
李恢成『伽揶子のために』
水野直樹・文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』
井筒和幸『パッチギ!』
テッサ・モーリス=スズキ『北朝鮮へのエクソダス』
和田春樹『北朝鮮現代史』
『海鳴りのなかを~詩人・金時鐘の60年』
『東京のコリアン・タウン 枝川物語』
道岸勝一『ある日』
菊池嘉晃『北朝鮮帰国事業』、50年近く前のピースの空箱と色褪せた写真


関東大震災101周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式

2024-09-08 09:04:35 | 韓国・朝鮮

韓国・朝鮮人犠牲者追悼式(2024/9/7)。

101年前の関東大震災のとき、デマに憎悪感情を煽られた一般市民が多くの韓国・朝鮮人を殺した。追悼式の前に公民館で上映されたドキュメンタリーを視ていると、最近のクルド人排斥の動きとどうしても重なってみえてしまう。

参加者は年々増えているように思えるがどうだろう。最初に李政美(い・ちょんみ)さんの歌、<京成線>。

友人の版画家リョクさんは、僕が文芸誌『オフショア』に書いたプンムル(農楽)についての文章を読んで来てくれた。プンムルでは金属の長い響きとチャンゴの短い響きが組み合わさり、みんな練り歩くものだから四方八方から聴こえて、やはり例外的な体験だった。シン・ミンジャさん、香村かをりさん、玉響海月さん(去年、ザイ・クーニンさんが使うチャンゴを貸してくださった)。

Fuji X-E2, XF35mmF1.4

●関東大震災
『オフショア』第三号に「プンムルと追悼」を寄稿
辻野弥生『福田村事件』
関東大震災99周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
関東大震災97周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
呉充功『隠された爪跡』、関東大震災96周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
伊藤ルイ『海の歌う日』
藤原智子『ルイズその旅立ち』
『ルイズその絆は、』
亀戸事件と伊勢元酒場
加藤直樹『九月、東京の路上で』
藤田富士男・大和田茂『評伝 平澤計七』
南喜一『ガマの闘争』
田原洋『関東大震災と中国人』
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」
山之口貘のドキュメンタリー(沖縄人の被害)
平井玄『彗星的思考』(南貴一)
道岸勝一『ある日』(朝鮮人虐殺の慰霊の写真)
『弁護士 布施辰治』(関東大震災朝鮮人虐殺に弁護士として抵抗)
野村進『コリアン世界の旅』(阪神大震災のときに関東大震災朝鮮人虐殺の恐怖が蘇った)


ハン・ガン『別れを告げない』

2024-08-18 13:46:10 | 韓国・朝鮮

ハン・ガン『別れを告げない』(白水社、2021/2024年)。

恐ろしくて逃げられず一気に読了した。1948年、アメリカと傀儡の軍事政権は「アカ」をつぶすために済州島の住民3万人前後を無差別に殺した。その記憶を抱えていた母親、生死の間の世界で語る自分と友人。記憶はつねに一次的な感覚と直結している。冷たさ、痛さ、重さ。事件のあとに日本に小舟で逃亡してきた金時鐘さんにとって、それが、父親が歌った〈クレメンタインの歌〉の声の記憶だったように。

●済州島
杉原達『越境する民 近代大阪の朝鮮人史』
ヤン ヨンヒ『スープとイデオロギー』
済州島、火山島
済州島四・三事件の慰霊碑と写真展
済州島の平和博物館

済州島四・三事件69周年追悼の集い〜講演とコンサートの夕べ
『済州島四・三事件 記憶と真実』、『悲劇の島チェジュ』
オ・ミヨル『チスル』、済州島四・三事件、金石範
文京洙『済州島四・三事件』
文京洙『新・韓国現代史』
金石範、金時鐘『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか 済州島四・三事件の記憶と文学』
金石範講演会「文学の闘争/闘争の文学」
金石範『万徳幽霊奇譚・詐欺師』 済州島のフォークロア
金石範『新編「在日」の思想』
水野直樹・文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』
済州島四・三事件と江汀海軍基地問題 入門編
金時鐘『背中の地図』
金時鐘講演会「日本と朝鮮のはざまで」
金時鐘『朝鮮と日本に生きる』

金時鐘『境界の詩 猪飼野詩集/光州詩片』
細見和之『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』
『海鳴りの果てに~言葉・祈り・死者たち~』
『海鳴りのなかを~詩人・金時鐘の60年』
梁石日『魂の流れゆく果て』(屋台時代の金石範)
仲里効『悲しき亜言語帯』(金時鐘への言及)
林海象『大阪ラブ&ソウル』(済州島をルーツとする鶴橋の男の物語)
金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って』(済州島から大阪への流れ)
藤田綾子『大阪「鶴橋」物語』
鶴橋でホルモン(与太話)
三河島コリアンタウンの伽耶とママチキン
尹東柱『空と風と星と詩』(金時鐘による翻訳)
『越境広場』創刊0号(丸川哲史による済州島への旅)
徐京植、高橋哲哉、韓洪九『フクシマ以後の思想をもとめて』(済州島での対談)
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』(沖縄と済州島)
宮里一夫『沖縄「韓国レポート」』(沖縄と済州島)
長島と祝島(2) 練塀の島、祝島(祝島と済州島)
野村進『コリアン世界の旅』(つげ義春『李さん一家』の妻は済州島出身との指摘)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
吉増剛造「盲いた黄金の庭」、「まず、木浦Cineをみながら、韓の国とCheju-doのこと」
「岡谷神社学」の2冊
沖縄国際大学南島文化研究所編『韓国・済州島と沖縄』


杉原達『越境する民 近代大阪の朝鮮人史』

2024-04-04 22:56:11 | 韓国・朝鮮

杉原達『越境する民 近代大阪の朝鮮人史』(岩波現代文庫、1998/2023年)を読む。

1922年に済州島と大阪を結ぶ定期航路ができ、「君ヶ代丸」が就航した。釜山~下関はおもに日本人が使い、君ヶ代丸はおもに済州島の者が使った。つまり安い労働力だ。それにより大阪に住む済州島出身者は急増し、住民の1割くらいを占めるようになった。このあたりの歴史や厳しい生活水準については、金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って ―朝鮮人街猪飼野の形成史―』にも書かれている。本書の独特な点は、それを生活圏の目線で描いていること。だから日韓併合、強制労働の開始、日本の敗戦など大きな歴史的事件があるとしても、「生活をつなぐネットワークは、国家の暴力に屈服したり、すり抜けたり、拮抗したりしながら、1920年代以降から数十年以上にわたって、さまざまな形で成立してきたことへの想像力が求められている」とは至言。

済州島出身者が住み付いた中心の街が猪飼野で、「朝鮮人の街」というイメージに反発する地域在住の日本人たちの声を背景に、その地名は消滅した(1973年)。しかし猪飼野って良い地名である。金時鐘さんの『猪飼野詩集』だって、太田順一さんの写真集『女たちの猪飼野』だってそのあとに発表されたものだし―――それにしても良い写真。たしか性能がひどくてゴーストやフレアが出まくるズミルックス35mmF1.4を使っているはずだ。久しぶりにあのあたりを訪ねて干物を買ったり美味しい韓国料理を食べたりしたい。太刀魚もあるにちがいない。

●済州島
ヤン ヨンヒ『スープとイデオロギー』
済州島、火山島
済州島四・三事件の慰霊碑と写真展
済州島の平和博物館

済州島四・三事件69周年追悼の集い〜講演とコンサートの夕べ
『済州島四・三事件 記憶と真実』、『悲劇の島チェジュ』
オ・ミヨル『チスル』、済州島四・三事件、金石範
文京洙『済州島四・三事件』
文京洙『新・韓国現代史』
金石範、金時鐘『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか 済州島四・三事件の記憶と文学』
金石範講演会「文学の闘争/闘争の文学」
金石範『万徳幽霊奇譚・詐欺師』 済州島のフォークロア
金石範『新編「在日」の思想』
水野直樹・文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』
済州島四・三事件と江汀海軍基地問題 入門編
金時鐘『背中の地図』
金時鐘講演会「日本と朝鮮のはざまで」
金時鐘『朝鮮と日本に生きる』

金時鐘『境界の詩 猪飼野詩集/光州詩片』
細見和之『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』
『海鳴りの果てに~言葉・祈り・死者たち~』
『海鳴りのなかを~詩人・金時鐘の60年』
梁石日『魂の流れゆく果て』(屋台時代の金石範)
仲里効『悲しき亜言語帯』(金時鐘への言及)
林海象『大阪ラブ&ソウル』(済州島をルーツとする鶴橋の男の物語)
金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って』(済州島から大阪への流れ)
藤田綾子『大阪「鶴橋」物語』
鶴橋でホルモン(与太話)
三河島コリアンタウンの伽耶とママチキン
尹東柱『空と風と星と詩』(金時鐘による翻訳)
『越境広場』創刊0号(丸川哲史による済州島への旅)
徐京植、高橋哲哉、韓洪九『フクシマ以後の思想をもとめて』(済州島での対談)
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』(沖縄と済州島)
宮里一夫『沖縄「韓国レポート」』(沖縄と済州島)
長島と祝島(2) 練塀の島、祝島(祝島と済州島)
野村進『コリアン世界の旅』(つげ義春『李さん一家』の妻は済州島出身との指摘)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
吉増剛造「盲いた黄金の庭」、「まず、木浦Cineをみながら、韓の国とCheju-doのこと」
「岡谷神社学」の2冊
沖縄国際大学南島文化研究所編『韓国・済州島と沖縄』


『オフショア』第三号に「プンムルと追悼」を寄稿

2023-09-16 09:23:32 | 韓国・朝鮮

『オフショア』第三号に「プンムルと追悼」を寄稿しました。もちろん他の方の文章もぜひ。読み応えがあります。目次は以下に↓
編集・発行人の山本佳奈子さんには次のようにご紹介いただいています。
関東大震災朝鮮人虐殺からの100年を目前にして
音楽ライターの齊藤聡(さいとう・あきら)が書いたのは、一般社団法人ほうせんかによる韓国・朝鮮人犠牲者追悼式のようす。フリージャズや即興演奏と、朝鮮のプンムルが、どう、つながるのか? ほうせんかによる追悼式、今年は9/2(土)開催とのことです。
 
●関東大震災
辻野弥生『福田村事件』
関東大震災99周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
関東大震災97周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
呉充功『隠された爪跡』、関東大震災96周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
伊藤ルイ『海の歌う日』
藤原智子『ルイズその旅立ち』
『ルイズその絆は、』
亀戸事件と伊勢元酒場
加藤直樹『九月、東京の路上で』
藤田富士男・大和田茂『評伝 平澤計七』
南喜一『ガマの闘争』
田原洋『関東大震災と中国人』
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」
山之口貘のドキュメンタリー(沖縄人の被害)
平井玄『彗星的思考』(南貴一)
道岸勝一『ある日』(朝鮮人虐殺の慰霊の写真)
『弁護士 布施辰治』(関東大震災朝鮮人虐殺に弁護士として抵抗)
野村進『コリアン世界の旅』(阪神大震災のときに関東大震災朝鮮人虐殺の恐怖が蘇った)

辻野弥生『福田村事件』

2023-09-16 09:16:38 | 韓国・朝鮮

辻野弥生『福田村事件』(五月書房)。

ちょうど百年前の関東大震災のとき、デマに煽られた市民や軍人が多くの韓国・朝鮮人を殺した。このときの判断基準は「話し言葉が日本人のように聞こえるか」程度のものであって、そのために地方出身の被害者もまた多かった。福田村(いまの野田市)で刃を向けられたのは香川県から来た薬の行商人たち。

沖縄の詩人・山之口貘も、関東大震災のとき日本刀を持った男がうろうろする殺伐とした時空間を体験している(NHKのドキュメンタリー『貘さんを知っていますか』)。実際、多くの沖縄人が犠牲になった。そんな事例が少なくなかったことは知っているので、あらためて読んでみても驚きはない。いまさら人間って!なんて嘆息するのはイノセントに過ぎるというものだ。けれども、驚きはなくても恐怖はある。

この本には、千葉県下で朝鮮人と誤認して日本人を殺害した事例のリストが掲載されている。うちのすぐ近所でも、浦安町で2人、行徳村で3人が被害に遭っている。やはり恐怖は具体的なところからあらわれる。

さて森達也さんの映画を観にいくかどうか。

●関東大震災
関東大震災99周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
関東大震災97周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
呉充功『隠された爪跡』、関東大震災96周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
伊藤ルイ『海の歌う日』
藤原智子『ルイズその旅立ち』
『ルイズその絆は、』
亀戸事件と伊勢元酒場
加藤直樹『九月、東京の路上で』
藤田富士男・大和田茂『評伝 平澤計七』
南喜一『ガマの闘争』
田原洋『関東大震災と中国人』
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」
山之口貘のドキュメンタリー(沖縄人の被害)
平井玄『彗星的思考』(南貴一)
道岸勝一『ある日』(朝鮮人虐殺の慰霊の写真)
『弁護士 布施辰治』(関東大震災朝鮮人虐殺に弁護士として抵抗)
野村進『コリアン世界の旅』(阪神大震災のときに関東大震災朝鮮人虐殺の恐怖が蘇った)


『玄海灘』

2023-09-04 08:26:41 | 韓国・朝鮮

調布市せんがわ劇場で演劇『玄海灘』を観てきた(原作:金達寿、脚色:有吉朝子、演出:志賀澤子)。

1943年の植民地朝鮮。日本からの独立運動を行う者も日本に媚びる者もいる。しかしほとんどの者はそのあいだで揺れ動いている。統治側もある者は高圧的、ある者は同情というパターナリズムから抜け出すことができない。断絶をなまなましい形で示す舞台だった。

以前に金達寿の原作を買ったら本人の署名が入っていた。独特の字で、数年前に神奈川近代文学館の「生誕100年・金達寿展」で原稿を見たら、「寿」の丸め方が「み」や「あ」と同じで、嬉しくなってしまった。

●金達寿
生誕100年・金達寿展@神奈川近代文学館
『金達寿小説集』
金達寿『玄海灘』
金達寿『朴達の裁判』
金達寿『わがアリランの歌』


関東大震災99周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式

2022-09-05 06:33:39 | 韓国・朝鮮

99年前の関東大震災のあと「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んでいる」とのデマが流され、多くの人たちが民間人によって殺された。

荒川河川敷では毎年追悼式をやっており、2年ぶりに足を運んだ。李政美(イ・ヂョンミ)さんが歌い、農楽(プンムル)の演奏があった。打楽器のチャンゴやケンガリ、笛のテピョンソ(ホジョク)。

李政美さん

渡辺つむぎ《風よ鳳仙花の歌をはこべ(プンムル)》

香村かをりさん

慎民子(シン・ミンジャ)さん

Leica M8, Summicron 50mmF2.0

●関東大震災
関東大震災97周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
呉充功『隠された爪跡』、関東大震災96周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
伊藤ルイ『海の歌う日』
藤原智子『ルイズその旅立ち』
『ルイズその絆は、』
亀戸事件と伊勢元酒場
加藤直樹『九月、東京の路上で』
藤田富士男・大和田茂『評伝 平澤計七』
南喜一『ガマの闘争』
田原洋『関東大震災と中国人』
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」
山之口貘のドキュメンタリー(沖縄人の被害)
平井玄『彗星的思考』(南貴一)
道岸勝一『ある日』(朝鮮人虐殺の慰霊の写真)
『弁護士 布施辰治』(関東大震災朝鮮人虐殺に弁護士として抵抗)
野村進『コリアン世界の旅』(阪神大震災のときに関東大震災朝鮮人虐殺の恐怖が蘇った)


ヤン ヨンヒ『スープとイデオロギー』

2022-06-26 11:20:50 | 韓国・朝鮮

渋谷のユーロスペースで、ヤン ヨンヒ『スープとイデオロギー』(2021年)。

済州島四・三事件(1948年)と北朝鮮帰国事業(1959年~)との関連には驚いてしまった。

四・三事件では、朝鮮半島分断に反対する島民数万人を米国統治下の韓国警察が無差別に虐殺した。もとより大阪の鶴橋や東京の三河島などに出稼ぎ者の街が出来上がっていたが、さらに密航での脱出者が続出した。映画の語り手=監督の母親も脱出して大阪にたどり着いた。そして北朝鮮帰国事業では、北朝鮮は国力増強のために自国を楽園のように宣伝し、10万人以上の在日コリアンを呼び寄せた。それは膨れ上がる財政負担を削減したい日本政府の思惑とも合致していた。母親も監督の兄3人を北に送り出し、仕送りを続け、毎年のように平壌を訪れていた。(つまり、日本国内では韓国系の民団と北系の総連とがこの問題を巡り対立しており、母親と亡くなった夫とは総連の活動家だった。)

このふたつがどう関連するのか。四・三事件で「アカ」とみなされた脱出者は軍政下韓国では死を意味するし、事件の原因となった韓国政府など信用できなかった。かつての支配国・日本は自分たちのルーツではなく、生活は楽ではない。それゆえ希望をもって北を視ていたということである。そう言われれば納得するけれど、これまで気づくことがなかった。

恐怖のためか秘密を胸の内に留めていた母親が、ある時期に監督にこのことを打ち明けた。そして済州島の研究者たちに体験を語ってから、母親の認知症が一気に進む。記憶の喪失と記憶の掘り起こしとがせめぎあう(!)。

映画の終盤では母親と監督が済州島に渡り、事件から70年後の式典に出席する。僕もその直後に済州島に行って、記念館や写真展を観た。済州島は火山島、黒い溶岩を使って塀が作られている。それはおもしろいものだなと漫然と眺めただけだったのだけれど、映画では、一家が殺された家の塀が敢えて残された場所もあるとの指摘。やはり見ても見えていないことがある。

悲惨な四・三事件をドラマ仕立てで描いた映画『チスル』ともまったく違うアプローチによる、すばらしいドキュメンタリー映画。

済州島の黒い溶岩塀(2018年)

映画の丸鶏もいいけれど済州島の太刀魚もまた食べたい(2018年)

●済州島
済州島、火山島
済州島四・三事件の慰霊碑と写真展
済州島の平和博物館

済州島四・三事件69周年追悼の集い〜講演とコンサートの夕べ
『済州島四・三事件 記憶と真実』、『悲劇の島チェジュ』
オ・ミヨル『チスル』、済州島四・三事件、金石範
文京洙『済州島四・三事件』
文京洙『新・韓国現代史』
金石範、金時鐘『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか 済州島四・三事件の記憶と文学』
金石範講演会「文学の闘争/闘争の文学」
金石範『万徳幽霊奇譚・詐欺師』 済州島のフォークロア
金石範『新編「在日」の思想』
水野直樹・文京洙『在日朝鮮人 歴史と現在』
済州島四・三事件と江汀海軍基地問題 入門編
金時鐘『背中の地図』
金時鐘講演会「日本と朝鮮のはざまで」
金時鐘『朝鮮と日本に生きる』

金時鐘『境界の詩 猪飼野詩集/光州詩片』
細見和之『ディアスポラを生きる詩人 金時鐘』
『海鳴りの果てに~言葉・祈り・死者たち~』
『海鳴りのなかを~詩人・金時鐘の60年』
梁石日『魂の流れゆく果て』(屋台時代の金石範)
仲里効『悲しき亜言語帯』(金時鐘への言及)
林海象『大阪ラブ&ソウル』(済州島をルーツとする鶴橋の男の物語)
金賛汀『異邦人は君ヶ代丸に乗って』(済州島から大阪への流れ)
藤田綾子『大阪「鶴橋」物語』
鶴橋でホルモン(与太話)
三河島コリアンタウンの伽耶とママチキン
尹東柱『空と風と星と詩』(金時鐘による翻訳)
『越境広場』創刊0号(丸川哲史による済州島への旅)
徐京植、高橋哲哉、韓洪九『フクシマ以後の思想をもとめて』(済州島での対談)
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』(沖縄と済州島)
宮里一夫『沖縄「韓国レポート」』(沖縄と済州島)
長島と祝島(2) 練塀の島、祝島(祝島と済州島)
野村進『コリアン世界の旅』(つげ義春『李さん一家』の妻は済州島出身との指摘)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(「Nostalgia for Che-ju Island」)
吉増剛造「盲いた黄金の庭」、「まず、木浦Cineをみながら、韓の国とCheju-doのこと」
「岡谷神社学」の2冊
沖縄国際大学南島文化研究所編『韓国・済州島と沖縄』


「表現の不自由展」の安世鴻

2022-04-02 23:09:05 | 韓国・朝鮮

「表現の不自由展」がようやく東京でも開かれ、初日に国立まで足を運んだ。

とはいえ政治的な文脈でのみ語られるのは社会にとっても作家にとっても不幸なことにちがいない。10年前の2012年に安世鴻の写真展が中止された事件があって、地裁と高裁の命令により、ニコンサロンはその写真展を不承不承開いた。そのときも物々しい警備だったが、今回はさらに大袈裟な騒ぎ。

ともかくも安世鴻の作品をふたたび観ることができた。韓紙に焼き付けられ、やはりたいへんな力がある。

丸木夫妻の《ピカドン》も発見。連作《原爆の図》の前にこのような絵本があったとは。

●安世鴻
安世鴻『重重 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の女性たち』
安世鴻『重重 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の女性たち』第2弾、安世鴻×鄭南求×李康澤
新藤健一編『検証・ニコン慰安婦写真展中止事件』


長生炭鉱ピーヤ

2021-03-20 10:15:38 | 韓国・朝鮮

山口県宇部市で石炭を産出していた宇部炭鉱は複数の炭鉱の総称であり、そのひとつが宇部空港近くの長生炭鉱であり、海底下に広がっている。1942年2月3日、坑内に海水が流入し、183人の炭鉱労働者が亡くなった。その4分の3は強制連行された朝鮮半島出身者であった。いまも遺体は海底坑道に放置されたままである。

西岐波や床波の海岸から、海上へと突き出るピーヤ(排気・排水筒)を2本見ることができた。これは伊藤智永『忘却された支配 日本のなかの植民地朝鮮』(岩波書店、2016年)の表紙にもなっている。

Fuji X-E2、Sigma 400mmF5.6、Pentax-M 35mmF2.0

●炭鉱
上野英信『追われゆく坑夫たち』
上野英信『眉屋私記』
『上野英信展 闇の声をきざむ』
伊藤智永『忘却された支配』
西嶋真治『抗い 記録作家 林えいだい』
奈賀悟『閉山 三井三池炭坑1889-1997』
熊谷博子『むかし原発いま炭鉱』
熊谷博子『三池 終わらない炭鉱の物語』
熊谷博子『作兵衛さんと日本を掘る』
山本作兵衛の映像 工藤敏樹『ある人生/ぼた山よ・・・』、『新日曜美術館/よみがえる地底の記憶』
本橋成一『炭鉱』
三木健『西表炭坑概史』
勅使河原宏『おとし穴』(北九州の炭鉱)
友田義行『戦後前衛映画と文学 安部公房×勅使河原宏』
本多猪四郎『空の大怪獣ラドン』(九州の仮想的な炭鉱)
佐藤仁『「持たざる国」の資源論』
石井寛治『日本の産業革命』
森元斎『国道3号線 抵抗の民衆史』


生誕100年・金達寿展@神奈川近代文学館

2020-12-14 08:32:42 | 韓国・朝鮮

在日コリアン作家・金達寿の生誕100年を記念した展覧会に足を運んだ(神奈川近代文学館)。

かれは日韓併合下の朝鮮に生まれ、戦中戦後、日本語で作品を書き続けた。金石範、李恢成、金時鐘らと同様に、「占領者のことばを使って表現する」という、自身のアイデンティティを揺さぶられる事態を文学に昇華していった人だと言うことができる。

会場には、『玄界灘』『朴達の裁判』の原稿や、パイオニアの金史良(朝鮮戦争に身を投じて消える)からの手紙なんかが展示され、また金芝河を支援するスピーチのテープを聴けたりもして、とても面白かった。小松川事件の李珍宇(大島渚が『絞死刑』で描いた)や金嬉老への支援をしていたということは意識しておらず発見。

僕の『玄界灘』には署名が入っていて、「寿」の字が可愛いなと思っていたのだけど、原稿を見ると、「あ」や「み」の丸いところが同じ感じ(当たり前だ)。そして右肩上がり。こういう展示は作家に親しみがわいてきて楽しい。

●金達寿
『金達寿小説集』
金達寿『玄海灘』
金達寿『朴達の裁判』
金達寿『わがアリランの歌』


関東大震災97周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式

2020-09-07 20:58:28 | 韓国・朝鮮

関東大震災での韓国・朝鮮人犠牲者追悼式。2020年9月5日、荒川河川敷にて。浪花の歌う巨人・パギやん(趙博さん)、それからプンムル。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

 

●関東大震災
呉充功『隠された爪跡』、関東大震災96周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式
伊藤ルイ『海の歌う日』
藤原智子『ルイズその旅立ち』
『ルイズその絆は、』
亀戸事件と伊勢元酒場
加藤直樹『九月、東京の路上で』
藤田富士男・大和田茂『評伝 平澤計七』
南喜一『ガマの闘争』
田原洋『関東大震災と中国人』
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」
山之口貘のドキュメンタリー(沖縄人の被害)
平井玄『彗星的思考』(南貴一)
道岸勝一『ある日』(朝鮮人虐殺の慰霊の写真)
『弁護士 布施辰治』(関東大震災朝鮮人虐殺に弁護士として抵抗)
野村進『コリアン世界の旅』(阪神大震災のときに関東大震災朝鮮人虐殺の恐怖が蘇った)


金徳洙『枝鼓散調』

2019-10-05 12:22:39 | 韓国・朝鮮

金徳洙『枝鼓散調』Gogeum Production and Entertainment、-2018年)を聴く。

Kim Duksoo 金徳洙 (janggu)

サムルノリの金徳洙(キム・ドクス)によるチャング・ソロ。

なるほど、長短間の呼吸と長短の流れ。叩いた音も響きも一様ではない。これを生命になぞらえる人がいるのも不思議ではない。


呉充功『隠された爪跡』、関東大震災96周年/韓国・朝鮮人犠牲者追悼式

2019-09-08 09:19:01 | 韓国・朝鮮

1923年の関東大震災直後、多くの朝鮮人や中国人がデマに扇動された民間人によって虐殺された。かれらが殺された場所のひとつである荒川河川敷では、毎年追悼集会が開かれている。今回はじめて足を運んだ(2019/9/7)。

集会に先立って、呉充功『隠された爪跡』(1983年)の上映があった。

映画に出てくるアボジは、震災の直前に植民地朝鮮から仕事を求めて渡ってきており、虐殺事件を目の当たりにした。もとより朝鮮では、コメ不足の日本に送るための朝鮮米を増産させ、農民をさらに貧窮に追いやった。日本に来た多くの労働者たちにとって、自由渡航とはいえ、それは積極的な選択による自己責任を伴う自由などではなかった。東京のここ墨田区でも、亀戸や向島では工場労働者の需要があった(それが亀戸事件にもつながっている)。

映画で示される当時の状況は、悪い冗談のように現在に重なってくる。上からのデマ、植民地主義のために在日コリアンを「不逞」扱いしていた官吏、虐殺への直接的・間接的な関与、市民が率先してのヘイトと行動、後日の隠蔽工作。荒川河川敷では犠牲者の遺骨を掘り起こす作業がとらえられているが、実は、遺骨はその前に既に軍によって別の場所に遺棄されていたのだった。

エンドロールには地域別の犠牲者がリストアップされる。わたしの自宅の近くでも3人。時間も土地もすべてつながっている。

(ところで、荒川を撮った場面では、2回、板橋文夫「グッドバイ」が流された。これが収録された『渡良瀬』は映画製作前年の1982年である。)

映画の上映後、河川敷まで歩いて移動。件当時の四ツ木橋は既に撤去されている。追悼式の会場はそれがあった場所の少し下流にある木根川橋の下である。また旧四ツ木橋の少し上流には新四ツ木橋がある。平和運動の大木晴子さんとも久しぶりにお会いできて、いろいろお話をした。

ここで、李政美さんが歌い、竹田裕美子さん(アコーディオン)、矢野敏弘さん(ギター)、Swing MASAさん(アルトサックス)が伴奏した。ぢょんみさんの歌声は透き通るようで濡れた情がある。彼女の名曲「京成線」では、「低い鉄橋の/その下には/埋もれたままの/悲しみ眠る」と歌われている。

MASAさんの地を踏みしめるブルースも素晴らしい。MASAさんを東京で観る機会はさほど多くないが(あとで話すと、呼ばれればね、と)、もっと多くの人に体感して欲しい。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●関東大震災
伊藤ルイ『海の歌う日』
藤原智子『ルイズその旅立ち』
『ルイズその絆は、』
亀戸事件と伊勢元酒場
加藤直樹『九月、東京の路上で』
藤田富士男・大和田茂『評伝 平澤計七』
南喜一『ガマの闘争』
田原洋『関東大震災と中国人』
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」
山之口貘のドキュメンタリー(沖縄人の被害)
平井玄『彗星的思考』(南貴一)
道岸勝一『ある日』(朝鮮人虐殺の慰霊の写真)
『弁護士 布施辰治』(関東大震災朝鮮人虐殺に弁護士として抵抗)
野村進『コリアン世界の旅』(阪神大震災のときに関東大震災朝鮮人虐殺の恐怖が蘇った)

●李政美
板橋文夫+李政美@どぅたっち(2012年)
李政美『わたしはうたう』(1997年)

●Swing MASA
山谷夏祭り(ジンタらムータ、Swing MASA、中川五郎)(2017年)
Swing MASA 爆音JAZZ(JazzTokyo)
(2016年)