Sightsong

自縄自縛日記

アンノウン・ミラーズ『Your Ten Is My Twelve』

2020-02-29 15:20:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンノウン・ミラーズ『Your Ten Is My Twelve』(-2020年)を聴く。

Unknown Millers:
Ryan Williams (recorder)
マクイーン時田深山 Miyama McQueen-Tokita (箏)

リコーダーと箏とは地味なデュオのようにも思えるのだが、聴いてみるとそれは誤った予断であるとわかる。

ライアン・ウィリアムスのリコーダーはとても幅広い音を出している。管が息で共鳴するリコーダーならではの素朴な響きもあり、それが低い音になると深さを増す(長いものも使っているのかな)。ヴィブラートは一様ではなく、ときに尺八のようにも強さを変える風のようにも聴こえる。

これに箏がさまざまな撥音で絡んでいる。減衰するときの響きは単純な減衰曲線を描いておらず、弾くときの強さや音色の揺れ動きとともに魅力的だ。弾くときや消すときの踏み込みに強い意思が感じられて、それがまた良い。深山さんの演奏は渡米前後に観ているのだが、音の強靭さがその間に増したように思えた(あるいは気付いていなかった)。精神論的にいえば「覚悟」。

このデュオは観ることができなかったのだが、山猫軒での演奏は場と一体化して素晴らしいものであったらしい。そのときはビョークの「Anchor Song」も演奏したそうだ。伝統も越境もポップスもこの音世界のバウンダリーに入っているようでおもしろい。

●マクイーン時田深山
『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(JazzTokyo)(2019年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)


カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Life Goes On』

2020-02-29 12:22:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Life Goes On』(ECM、2019年)を聴く。

Carla Bley (p)
Andy Sheppard (ts, ss)
Steve Swallow (b)

ジャケットを連作のような形にして出しているトリオでの演奏の3枚目にあたる。『Trios』(2012年)、『Andando el Tiempo』(2015年)よりもさらにゆっくりと落ち着いて音楽を創っていて、そのことがとても印象的だ。止まっては再スタートする。

4曲から成る「Life Goes On」での静かなピアノ、甘酸っぱさを持続させる独特なベース、そこにふくよかで豊かなサックスがときおり入ってくる。カーラのピアノは静かだからといってコードのバッキングでサウンドを色付けするだけではなく、大きなうねりの波にもなっている。

本盤が録音されたときと同じ2019年5月に、ドイツのケルンでライヴを観ることができた。その際にカーラは「Beautiful Telephones」についてドナルド・トランプに捧げたものだと話していて、なんのことだかわからなかった。実は、トランプがホワイトハウスの執務室にはじめて入って、「いままでこんな美しい電話機を見たことがない」と口走ったことを題材にしていたのだった。もちろん直接的な使い方ではなく、カーラならではの美しいピアニズムによって人間の愚かさや馬鹿馬鹿しさをシニカルに覆っているように聴こえる。

最後の「Copy Cat」でやはりゆっくりと、しかしそれまでよりも、スワロウのベースがサウンドを前へ前へと押し動かしはじめて、3人で希望の世界を創ってみせている。

淡々と演奏していながらも無限の想像力と機微を含み持つ音楽。もう泣きそうである(泣いている)。聴くたびになんだろうこれはと思うのだろうな。

●カーラ・ブレイ
カーラ・ブレイ@ケルンStadtgarten(2019年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Andando el Tiempo』(2015年)
イロ・ハールラ+ウルフ・クロクフォルシュ+バリー・アルトシュル『Around Again - The Music of Carla Bley』(2015年)
チャーリー・ヘイデンLMO『Time/Life』(2011、15年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ(1988年)
スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(2011年)
ポール・ブレイ『Homage to Carla』(1992年)
ポール・ブレイ『Plays Carla Bley』(1991年)
ゲイリー・バートンのカーラ・ブレイ集『Dreams So Real』(1975年)
ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ(1968年)
スペイン市民戦争がいまにつながる

●スティーヴ・スワロウ
カーラ・ブレイ@ケルンStadtgarten(2019年)
スティーヴ・キューン『To And From The Heart』(-2018年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Andando el Tiempo』(2015年)
スティーヴ・キューン『Jazz Middelheim 2015』(2015年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
チャーリー・ヘイデンLMO『Time/Life』(2011、15年)
スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(2011年)
ケニー・ホイーラー『One of Many』(2006年)
ポール・モチアン『Flight of the Blue Jay』(1996年)
日野元彦『Sailing Stone』(1991年)
ゲイリー・バートンのカーラ・ブレイ集『Dreams So Real』(1975年)
ゲイリー・バートン+スティーヴ・スワロウ『Hotel Hello』(1974年)
アート・ファーマー『Sing Me Softly of the Blues』(1966年)
ポール・ブレイ『Complete Savoy Sessions 1962-63』(1962-63年)

●アンディ・シェパード
カーラ・ブレイ@ケルンStadtgarten(2019年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Andando el Tiempo』(2015年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
アンディ・シェパード『Surrounded by Sea』(2014年)
キース・ティペット+アンディ・シェパード『66 Shades of Lipstick』、シェパード『Trio Libero』(1990年、2012年)
アンディ・シェパード、2010年2月、パリ
ケティル・ビヨルンスタ『La notte』(2010年)
アンディ・シェパード『Movements in Color』、『In Co-Motion』(2009年、1991年)


アース・タンズ『Atem』(JazzTokyo)

2020-02-29 08:45:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

アース・タンズ『Atem』(Neither/Nor Records、2017年)。

>> #1964 『Earth Tongues / Atem』

Joe Moffett (tp, objects)
Dan Peck (tuba, cassette player, objects)
Carlo Costa (perc)

●ジョー・モフェット
ジョー・モフェット『More of It and Closer』(JazzTokyo)(-2018年)
ジョー・モフェット『More of It and Closer』(-2018年)

●ダン・ペック
ジョー・モフェット『More of It and Closer』(-2018年)
ハリス・アイゼンスタット『Recent Developments』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)
イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
イングリッド・ラブロック『ubatuba』(2014年)
トニー・マラビー『Scorpion Eater』、ユメール+キューン+マラビー『Full Contact』(2008、13年)
ネイト・ウーリー『(Sit in) The Throne of Friendship』(2012年)
PEOPLEの3枚(-2005、-2007、-2014年)

●カルロ・コスタ
ジョー・モフェット『More of It and Closer』(-2018年)


ピーター・エヴァンス『Being & Becoming』(JazzTokyo)

2020-02-29 08:37:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

ピーター・エヴァンス『Being & Becoming』(More is More Records、2019年)。

>> #1966 『Peter Evans / Being & Becoming』

Peter Evans (tp, piccolo tp)
Joel Ross (vib)
Nick Jozwiak (b)
Savannah Harris (ds, perc)

●ピーター・エヴァンス
ピーター・エヴァンス@Jazz Art せんがわ2018(JazzTokyo)(2018年)
ピーター・エヴァンス+ウィーゼル・ウォルター『Poisonous』(2018年)
マタナ・ロバーツ「breathe...」@Roulette(2017年)
Pulverize the Sound、ケヴィン・シェイ+ルーカス・ブロード@Trans-Pecos(2017年)
コリー・スマイス+ピーター・エヴァンス『Weatherbird』(2015年)
ピーター・エヴァンス『House Special』(2015年)
Pulverize the Sound@The Stone(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
トラヴィス・ラプランテ+ピーター・エヴァンス『Secret Meeting』(2015年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
PEOPLEの3枚(-2005、-2007、-2014年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス+アグスティ・フェルナンデス+マッツ・グスタフソン『A Quietness of Water』(2012年)
『Rocket Science』(2012年)
MOPDtK『(live)』(2012年)
ピエロ・ビットロ・ボン(Lacus Amoenus)『The Sauna Session』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ピーター・エヴァンス+サム・プルータ+ジム・アルティエリ『sum and difference』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス+スティーヴ・ベレスフォード『Check for Monsters』(2008年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 


ヴィム・ヴェンダース『夢の崖てまでも』

2020-02-25 07:45:31 | アート・映画

ヴィム・ヴェンダース『夢の崖てまでも』(1991年)を観る。

公開当時観なかったのは、きっと、①豪華キャストがイヤ、②長いのがイヤ、③映画好きの友人が褒めていた、④サム・ニールが好みじゃなかった、くらいのしょうもない理由なのだが、その後観ようにもなかなか機会がなかった。今般クリテリオン版DVDが出たと知り入手したのだが、長さは公開時の158分の倍近い287分。ほとんど5時間である。そんなわけで、蜜柑やコーヒーを取りに立ったり、ときどきメールの返事をしたり、挿入曲をshazamでチェックしたりしながらゆっくりと観た。

実は厳かなほど壮大な物語を想像していた。たしかに壮大ではあるのだが、ジャン・ルノワールがそうだったように、それは隙間だらけで自由に満ちている。脈絡なくベルリンや北京や東京や南オーストラリアを旅するし、登場人物は大きな物語の一部というよりもあまりにも奇妙にそこに佇んでいる。

この居心地の悪さなど関係なく奇妙な人物がいるという点は、たぶんヴェンダース映画の特徴でもあった(『さすらい』、『まわり道』、『アメリカの友人』、『アメリカ、家族のいる風景』、思い出そうとしたらほとんどそうじゃないかと気がつく)。豪華キャストだってその意味で奇妙だ。そして隙間だらけのアナログなICTツールも同様に古びない。

悪夢のような世界で束縛から不器用に逃れ、自由と生命を求める人たちは、どうしたって奇妙なものに違いない。早く観ておくべきだったが、いま観てもいまの映画だった。

●ヴィム・ヴェンダース
ヴィム・ヴェンダース『世界の涯ての鼓動』
ヴィム・ヴェンダース『パレルモ・シューティング』
ヴィム・ヴェンダース『ランド・オブ・プレンティ』、『アメリカ、家族のいる風景』
ヴィム・ヴェンダース『ミリオンダラー・ホテル』
ヴィム・ヴェンダース『ベルリン・天使の詩』


ドーヴィッド・シュタッケナース+秋山徹次+中谷達也@東北沢OTOOTO

2020-02-24 09:07:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTO(2020/2/23)。

David Stackenäs (g)
Tetuzi Akiyama 秋山徹次 (g)
Tatsuya Nakatani 中谷達也 (perc)

ようやく中谷達也さんのプレイを観ることができた。驚くべきものなのだろうなと想像してはいたのだが驚いた。当然ながらドラムセットを使うのだが、きっと氏にとってのそれは他のパーカッショニストにとっての演奏器具と異なっている。叩く場所はここであり、それぞれの機能をこのように尊重しなければならぬ、という、ドラムセットの権力関係がハナからなきものにされている。

叩くものはぼろぼろと落ちてゆく(勢いのあまり落ちてしまった、のではなく、「落ちるもの」なのだ)。スネアからスネアへの移動は段階的ではなく連続的。シンバルも曲がって当然。これによる音は異常なほどバウンダリーが広く連続性が高い。

ところが右横の秋山さんの音がどうなっているのかわからない。中谷さんの音世界と別次元で別様に並行して存在している。ギターとアンプからは極めて違和感のある音ばかりが発せられ、そのたびに驚く。バスドラの音は誰が出しているのか。秋山さんのディストーションに反応し、ドーヴィッドさんの顔がぴくりと動いたのが見えた。かれは器具も使い、微細な音から楔のような大きな音まで繰り出す。

この三者のサウンドが地下室の中に轟き反響した。しばらく耳鳴りがした。エネルギー水準が高いとても良いサウンドだった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●中谷達也
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2014-16年)

●秋山徹次
アーサー・ブル+秋山徹次、神田さやか@Ftarri(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
エリザベス・ミラー+クレイグ・ペデルセン+秋山徹次+中村としまる@Ftarri(2018年)
「響きの今」(ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、ピーター・エヴァンス、秋山徹次)@両国門天ホール(2018年)
高島正志+古池寿浩+秋山徹次「Blues Frozen Xīng ブルース 凍てついた星」@Ftarri(2018年)
Sound of the Mountain with 秋山徹次、中村としまる『amplified clarinet and trumpet, guitars, nimb』(JazzTokyo)(2017年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
池田謙+秋山徹次@東北沢OTOOTO(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)


松丸契+片倉真由子@小岩コチ

2020-02-23 09:38:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

小岩のコチ(2020/2/22)。

Kei Matsumaru 松丸契 (as)
Mayuko Katakura 片倉真由子 (p)

これまでに共演はあるがデュオははじめてだとのこと。

スタンダード曲では意外にもスタイルが多様でおもしろい。最初の「Stella by Starlight」では強めのタッチで入るピアノも、エアが多めで擦れて入り、主旋律をなかなかみせないアルトも新鮮。松丸さんのアルトはアプローチを曲によってかなり変えているのかなという印象があった。「East of the Sun」では少し緩めに遅らせて中間音を目立たせたり、「My Shining Hour」ではちょっとアウトさせつつ擦れた音で攻めたり、「Body and Soul」では色っぽいトーンで入り、敢えて細い線を強調したり。「Without A Song」は半分は挑発だからジャズサックスとしてオーソドックスな感もあったり。

一方の片倉さんもさまざまな表現。「I Hear A Rhopsody」でのスインギーな入り方も、主旋律を巧みに取り込んだ構成もみごとだったし、「Body and Soul」での力強さも、自身のオリジナル「A Dancer's Melancholy」でのモチーフの発展のさせ方もとても良かった。

この日の松丸さんについては、ふたりのどちらかのオリジナル曲において、スタンダードでのアプローチの試行とはちがいより確信的なものに聴こえた。最近作って井上銘、曽根麻央といった面々とデュオで演奏したというオリジナル曲では、アルトの音色が芯からふくよかで、微妙な変化や装飾音も入れていて、かなり耳が吸い寄せられる。片倉さんの「A Dancer's Melancholy」ではエアが多く裏声のごとき音。「Parsley Sparsely」ではピアノと同時に始めて手馴れた感じがあった。

最後は素晴らしい「All The Things You Are」。

●松丸契
細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO(2019年)
松丸契『THINKKAISM』(2019年)
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)

●片倉真由子
片倉真由子『Ruby, My Dear』(2019年)
片倉真由子@Body & Soul(2019年)
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
レイモンド・マクモーリン+片倉真由子@小岩COCHI(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
北川潔『Turning Point』(2017年)


松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン

2020-02-23 08:44:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットイン昼の部(2020/2/22)。

Koichi Matsukaze 松風鉱一(as, ts, fl)
Takayuki Kato 加藤崇之(g)
Hiroaki Mizutani 水谷浩章(b)
Akira Sotoyama 外山明(ds)
Mikio Ishida 石田幹雄(p)

最初のフルートでの「Images in Alone」で地雷をつぎつぎに爆裂させる加藤さんのプレイにいきなり笑ってしまう(いま気付いたが、これは八王子のアローンのことだったのか)。それだけでなく、いつものように自由で、オルガン的だったり金属のハコを叩いているようだったり。

この日は「K2」「Folk Song」「Big Valley」なんかでのテナーも松風さんらしい空気感に満ちていて良かったが、むしろアルトのほうに惹きつけられた。「Outside」でも「Kikikaikai」でも耳をそばだてると高速の良いフレージングで感嘆する一方、それがバンドサウンドの中に埋没するでも徒に目立つでもなく、これが快感。

最後はテナーでの「w.w.w.」。ゆっくり目であるぶん、音の重なりがとても豊かだった。

●松風鉱一
夢Duo年末スペシャル@なってるハウス(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
平田王子+渋谷毅『Luz Do Sol*やさしい雨』(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その1)
松風M.A.S.H. その3@なってるハウス(2018年)
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
松風M.A.S.H. その2@なってるハウス(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
板谷博ギルティ・フィジック(1990、95年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
松風鉱一トリオ+大徳俊幸『Earth Mother』(1978年)
『生活向上委員会ライブ・イン・益田』(1976年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』 
反対側の新宿ピットイン
くにおんジャズ、鳥飼否宇『密林』


フレッド・フリス+ニコラス・フンベルト+マーク・パリソット『Cut Up The Border』

2020-02-16 17:37:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

フレッド・フリス+ニコラス・フンベルト+マーク・パリソット『Cut Up The Border』(RogueArt、2019年)を聴く。

Fred Frith (g, b, org, p)
Nicolas Humbert (composition)
Marc Parisotto (composition)

ニコラス・フンベルトとヴェルナー・ペンツェルによるドキュメンタリー映画『Step Across The Border』(1990年)は大変な傑作だった。旅するギタリストのフレッド・フリスを追いつつ、ジョン・ゾーン、ティム・ホジキンソン、イヴァ・ビトヴァ、アート・リンゼイ、Haco、ケヴィン・ノートン、トム・コラら癖のある面々のうごめきを捉え、このぐちゃぐちゃの社会に生きることを無数の意思の泡立ちで表現しおおせたものとなっていた。良いサントラもあった。

本盤は、その際に集積された録音のフラグメンツを、映画を撮ったフンベルトらがコラージュし、フリスも音を加えた作品である。ジョナス・メカスの声が遠くから聴こえ、ビトヴァやパヴェル・ファイトやコラやゾーンらしき音もまた現れては去っていく。「Clapping Rain」の雨音など奇妙に感動的。

結果的にこの素晴らしいノマドとマルチチュードの語り直しとなっている。

●フレッド・フリス
フレッド・フリス『Storytelling』(2017年)
ロッテ・アンカー+フレッド・フリス『Edge of the Light』(2010年)
フレッド・フリスとミシェル・ドネダのデュオ(2009年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
高瀬アキ『St. Louis Blues』(2001年)
突然段ボールとフレッド・フリス、ロル・コクスヒル(1981、98年)
『Improvised Music New York 1981』(1981年)

●ニコラス・フンベルト
ユセフ・ラティーフの映像『Brother Yusef』(2005年)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴの映像『Null Sonne No Point』(1997年)
ニコラス・フンベルト『Wolfsgrub』(1985年)


サーデット・テュルキョズ+エリオット・シャープ『Kumuska』

2020-02-16 10:21:21 | アヴァンギャルド・ジャズ

サーデット・テュルキョズ+エリオット・シャープ『Kumuska』(Intakt Records、2007年)を聴く。

Saadet Türköz (voice, lyrics)
Elliott Sharp (syn, bcl, glissentar)

エリオット・シャープのスタジオ録音の蔵出しモノ。

サーデット・テュルキョズは東トルキスタンから中央アジア、生まれ育ったトルコといった自身のルーツに関連するであろう歌を絞り出すように歌う。ときに童のようであったり他の動物のようであったりもするが、極端に憑依しなり替わることはない。それよりも生きる自分自身の身体に直に結びついている。

確かにエフェクトはかけられている。だがそれは、エリオット・シャープのバスクラやギター(グリセンター)やエフェクトやディレイに近寄り、重なり、離れることで、電気ではないエフェクト感のほうに接近している。そのことによりサーデットさんの肉声がさらに浮かび上がってくる。とても魅力的。

●サーデット・テュルキョズ
内橋和久+サーデット・テュルキョズ@Bar Isshee(2018年)
ユーラシアンオペラ東京2018(Incredible sound vision of Eurasia in Tokyo)@スーパーデラックス(2018年)

●エリオット・シャープ
アルフレート・23・ハルト『Pollock』(-1997年)
ウィリアム・フッカー『Shamballa』(1993年)


坪口昌恭+細井徳太郎@下北沢No Room For Squares

2020-02-16 08:43:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のNo Room For Squares(2020/2/15)。昨年オープンしたバーで、土日はライヴもやっている。はじめて来たがオーディオから出てくる音の押し出しが強いのに柔らかく、低音をお店全体で受け止めている。喫茶の時間にレコードをゆっくり聴きたくもある。

Masayasu Tzboguchi 坪口昌恭 (p, key)
Tokutaro Hosoi 細井徳太郎 (g)

初共演のふたりだが、リハから本番まで和やかに音楽を遊んでいる。(そうに違いないと思って来た。)

冒頭の「口笛」(細井)は口笛らしからぬ広がりを持った曲で、坪口さんのキーボードが昆布のような粘っこさを持っていることが少し新鮮。続く「Circle Dance」はポール・モチアンのオリジナルで、ジョー・ロヴァーノ、ビル・フリゼールとのトリオで演奏されている(『One Time Out』)。細井さんはシングルトーンから途中で和音を入れはじめ、最後にエフェクトで周波数を変えて締めた。モチアンバンドのような変態的なシンプルさがあった。坪口さんは興味深いことにフリゼールに大きな影響を受けたのだという。

3曲目は妙なタイトル「Room(しょうがない)」(石若駿)。坪口さんはこの演奏を、最近亡くなったライル・メイズへの追悼だと言った。スローに始まり、奇妙に転調し、主体がピアノからギターに移動した。「3+1=6+4」(細井)(何だそれ)。ピアノと、アンビエントな感じのギター。ざわめきの中でのピアノが静かに浮き出てきて素晴らしい。またピアノの上に置かれたキーボードでベース音を出し始めたのにも痺れた。

セカンドセットは「2020 chords」(ドリアン・コンセプト)(→コレかな)。ちょっとマジカルなピアノの旋律に太く塩辛いギターが入ってきて、さらにキーボードでのベースで複雑かつ分厚くなってゆく。それでふとまた元のシンプルなデュオに戻り、トンネルを抜けた感覚がおもしろい。

続いては、坪口さんの新譜Ortance『Escargot』から2曲。「Tutuola Drink」(エイモス・チュツオーラの『やし酒飲み』に触発された曲)では、ギターがベース的からキーボード的に変貌する一方で、ピアノはキーボードのベースにもシフトし、そういった素敵なコラージュ感。「Even Shuffle」ではあるコードに半音、全音、一音半、全音ふたつと足し算をすることで邦楽や沖縄音楽のテイストがいきなりあらわれるという不思議さ。途中で坪口さんのキーボードが駆動力をアップさせたようだった。

ここで、セロニアス・モンクの「Light Blue」と「Ugly Beauty」。リハをこっそり聴いていたら「Light Blue」では細井さんが最後に半音ずらして奇妙な策動をみせた。それが成功なのか失敗なのかわからなかったが、本番ではそれはせずカッコ良く攻めた。最後は「Trihedron」(坪口)、スタイリッシュにスイングするピアノ。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●坪口昌恭
Ortance@荻窪ベルベットサン(2019年)
The Music of Anthony Braxton ~ アンソニー・ブラクストン勉強会&ライヴ@KAKULULU、公園通りクラシックス(JazzTokyo)(2019年)
東京ザヴィヌルバッハ・スペシャル@渋谷The Room(2018年)
ホセ・ジェイムズ@新宿タワーレコード
(2015年)

●細井徳太郎
細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
李世揚+瀬尾高志+細井徳太郎+レオナ@神保町試聴室(2019年)
細井徳太郎+君島大空@下北沢Apollo(2019年)
秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)


アレサ・フランクリンの映像『Amazing Grace』

2020-02-12 07:42:40 | ポップス

アレサ・フランクリンのDVD『Amazing Grace』(1972年/2018年)を観る。

Aretha Franklin (p, celesta, lead vo)
Rev. James Cleveland (p, lead vo)
Cornell Dupree (g)
Rev. C.L. Franklin (vo)
Kenneth "Ken" Lupper (org, key)
Pancho Morales (congas, perc)
Bernard Purdie (ds)
Chuck Rainey (b)
Southern California Community Choir (background vo)

アレサ・フランクリンのアルバム『Amazing Grace』は1972年にライヴ録音されたものだが、その際、ドキュメンタリー映画にするため撮影も行っていた。監督は『ザ・ヤクザ』なんかを撮ったシドニー・ポラック。どうやら『スーパーフライ』(カーティス・メイフィールドが音楽を担当)と同時上映の予定だったようである。

しかし、ポラックはカチンコを使わず、そのために音と映像を同期させることができなかった(映画では冒頭に「技術的な困難さにより」という字幕が挿入される)。作業や契約を経てお蔵入りのフィルムが公開されたのは、アレサが亡くなって数か月後のことである。

いやそれにしても至福の80分間。30歳になる直前のアレサの歌声には驚くほかない。マーヴィン・ゲイの曲から始まり、恍惚の表情で声を出すたびにバプティスト教会のクワイヤの面々や集まった人たちが歓喜する「Amazing Grace」で、ライヴのピークを迎える。豪華なバンドメンバーももっと写してほしかったところではあるけれど、バーナード・パーディが少し登場するだけで嬉しいというものだ。

本当に不世出の歌手だったんだなあ。

●アレサ・フランクリン
ハーレム・スタジオ美術館再々訪(2017年)
ハンク・クロフォードのアレサ・フランクリン集
(1969年)


チャーリー・ヘイデン・リベレーション・ミュージック・オーケストラ『Live 1993』

2020-02-11 20:50:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

チャーリー・ヘイデン・リベレーション・ミュージック・オーケストラ『Live 1993』(Equinox、1993年)を聴く。2019年発表の発掘盤である。

Charlie Haden (b)
Javon Jackson, Joe Lovano (ts, fl)
Ken McIntyre (as, ss)
Earl Gardner (tp)
Tom Harrell, Earl Gardner, Tim Hagans (tp, flh)
Ray Anderson (tb)
Sharon Freeman (fhn)
Joe Daley (tuba)
Juan Lazzaro Mendolas (panpipes, wood fl)
Amina Claudine Myers (p)
Mick Goodrick (g)
Mark Burton (perc)

LMOのこれまでの作品は以下の通りである(数字は録音年)。但しECM盤はLMOを冠していない。また『Time/Life』は2曲を除きヘイデン没後に録音されている。

Liberation Music Orchestra(Impulse!、1969年)
The Ballad of the Fallen(ECM、1982年)
The Montreal Tapes(Verve、1989年)
Dream Keeper(Blue Note、1990年)
Live in Montreal(Universal、1992年)(DVD)
Live 1993(Equinox、1993年)(本盤)
Not in Our Name(Verve、2004年)
Time/Life(Impulse!、2011、2015年)

本盤のレパートリーは90年に入ってからの『Dream Keeper』や『Live in Montreal』と同じである(『The Montreal Tapes』でも「Sandino」を演奏している)。メンバーは左の2枚とかなり共通しているが、本盤には『Dream Keeper』にいたデューイ・レッドマンやポール・モチアンがいないことがやや残念。また、ちょっと録音が軽い気がする。しかしそれは言いがかりのようなもので、本盤も悪くない。

聴き所はたくさんある。他と同様に、熱気で攻めるケン・マッキンタイアのアルト。「Sandino」や「Spiritual」における独特の雲のようなトム・ハレルのトランペットとフリューゲルホーン。「Nkosi Sikhelel' iAfrika」でのオペラ歌手のごとき下から粘るジョー・ロヴァーノのテナー(ロヴァーノや『Dream Keeper』に比べると、ジャヴォン・ジャクソンも『Dream Keeper』でのブランフォード・マルサリスも影が薄いがこれは仕方がない)。「Dream Keeper Suite」での枷が外れたような熱いアミナ・クローディン・マイヤーズのピアノ。

もちろんLMOの持つ政治や社会への想いのようなものが音楽の力(この言葉がいやだという人がいたね)に直結しており、やはりアウラをまとっている。いちどはこのオケを観たかった。

●チャーリー・ヘイデン
チャーリー・ヘイデンLMO『Time/Life』(2011、15年)
アルド・ロマーノ『Complete Communion to Don Cherry』とドン・チェリーの2枚(1965、88、2010年)
パット・メセニーとチャーリー・ヘイデンのデュオの映像『Montreal 2005』(2005年)
チャーリー・ヘイデンとアントニオ・フォルチオーネとのデュオ(2006年)
アリス・コルトレーン『Translinear Light』(2000、04年)
Naimレーベルのチャーリー・ヘイデンとピアニストとのデュオ(1998、2003年)
ギャビン・ブライヤーズ『哲学への決別』(1996年)
リッキー・リー・ジョーンズ『Pop Pop』と『Pop Pop at Guthrie Theater 1991』(1991年)
チャーリー・ヘイデン+ジム・ホール(1990年)
ポール・ブレイ+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Memoirs』(1990年)
ゴンサロ・ルバルカバ+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン(1990年)
ジェリ・アレン+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Segments』(1989年)
シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 再見(1985年)
ジェーン・アイラ・ブルーム『Mighty Lights』(1982年)
パット・メセニー『80/81 in Stockholm』(1981年)
チャーリー・ヘイデン+ヤン・ガルバレク+エグベルト・ジスモンチ『Magico』、『Carta De Amor』(1979、81年)
富樫雅彦『セッション・イン・パリ VOL. 1 / 2』(1979年)
キース・ジャレット『Eyes of the Heart』(1976年)
70年代のキース・ジャレットの映像(1972、76年)
キース・ジャレットのインパルス盤(1975-76年)
キース・ジャレット『Arbour Zena』(1975年)
アリス・コルトレーン『Universal Consciousness』、『Lord of Lords』(1971、72年)
1972年6月のキース・ジャレット・トリオ(1972年)
キース・ジャレット+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Hamburg '72』(1972年)
オーネット・コールマン『Ornette at 12』(1968年)
オーネット・コールマンの最初期ライヴ(1958年)
スペイン市民戦争がいまにつながる


ペーター・コヴァルト『Total Music Meeting 1997 - Solo Bass』

2020-02-11 09:11:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

ペーター・コヴァルト『Total Music Meeting 1997 - Solo Bass』(FMP、1997年)を聴く。

Peter Kowald (b)

FMPからの発掘盤だがデジタルリリースのみだろうか。

ベルリンの第30回Total Music Meetingにおけるコントラバスソロであり、1時間弱の演奏が2回。コヴァルトの音色は絹のようだと思ってきたけれど、ここではそれどころでない異様な音が放出されている。

たしかに低音がマッスとなって攻めてくるのではないから絹的ではある。しかしそれに加え、金属が震えるような高周波の音、コントラバスの胴体の中で反響したようなくぐもった音、内部をえぐりだすような音、それらが喉歌を思わせる倍音をさらに拡張させていくつもの周波数の山を持って、共鳴によるうなりも伴って、聴く者を取り囲む。文字通り魅惑的。

●ペーター・コヴァルト
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)(コヴァルトのコントラバスを使った作品)
アシフ・ツアハー+ペーター・コヴァルト+サニー・マレイ『Live at the Fundacio Juan Miro』(2002年)
アシフ・ツアハー+ヒュー・レジン+ペーター・コヴァルト+ハミッド・ドレイク『Open Systems』(2001年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
ラシッド・アリ+ペーター・コヴァルト+アシフ・ツアハー『Deals, Ideas & Ideals』(2000年)
ペーター・コヴァルト+ヴィニー・ゴリア『Mythology』(2000年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981、1991、1998年)
ペーター・コヴァルト『Was Da Ist』(1994年)
ジュリアス・ヘンフィル+ペーター・コヴァルト『Live at Kassiopeia』(1987年)
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
高柳昌行+ペーター・コヴァルト+翠川敬基『Encounter and Improvisation』(1983年)


溝入敬三@横濱エアジン

2020-02-09 22:33:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

横濱エアジン(2020/2/9)。

Keizo Mizoiri 溝入敬三 (b)

溝入敬三さんは広島の福山で齋藤徹さんと高校時代に同級だった方であり(吉野弘志さんは1学年上で広島市)、その縁もあって、徹さんのソロ『Tokio Tango』のライナーも書いている。はじめて演奏を観ることもあり、氏の傑作エッセイ『こんとらばすのとらの巻』を発掘して読みながら向かった。

冒頭の「小吉の夢」では、コントラバスの父とマンドリンの母から生まれたコントラバスの物語を訥々と話しながらコントラバスを弾く。次に、テレマンのバロック曲「ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ」(ヴィオラ・ダ・ガンバは同じ系統の古い楽器)。カタルーニャのアルベニスによる「スペイン組曲」からピアノ曲の「タンゴニ長調」。

ここで溝入さんは徹さんのことをさらっと語った(さらっと、だから、じんとくる)。「高1のときに風の又三郎のように転校してやってきて、1年でまた風の又三郎のように去って行った。去年、また風のように去って行った。こまった奴ですが」と。そして、徹さんもよく弾いた、ピアソラとトロイロの「コントラバヘアンド」。曲の途中にはなにか自分を吐露するような展開があってたまらない。

中国の仙人がトノサマガエルの王様に接するというユーモラスなオリジナル「収羊公」でファーストセットが終わった。弓弾きの奇妙な音からちょっと襟を正す感じのピチカートへの落差がまたおもしろい(ここでまた語りを始める)。いきなり余韻を残して終わった。

セカンドセットは一柳慧「空間の生成」から。連続的に実にさまざまな倍音や奇妙な音があらわれて驚かされる。続いての、鈴木行一「クンダリーニ」は、溝入さんのコントラバスのために書かれた曲だという。低音がぶるぶると震え、弓で音を放り投げるようなアプローチ、執拗な繰り返しと発展。吉川和夫のソナタ曲はいかにも複雑、そして唄うような高音とコントラバスならではの低音とのコンビネーション。アンコールはピアソラの「ラ・クンパルシータ」。

クラシック・現代音楽畑の多彩な表現技術。愉しかった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4