東北沢のOTOOTO(2020/8/10)。
Kazuo Imai 今井和雄 (g)
ファーストセットは床に置いたギターの演奏からはじまった。金属棒が弦の間に挟んであり、それによるプリペアドの効果なのか、弦をゆるめに張ってあるのか、独特のノイズとともに音が放たれる。鎖を弦の上に垂らすことによる偶然性と自律性のせめぎ合い、石板の重量による暴力性。だがいきなりその石板を制御して音が走りはじめて驚いた。音の作り方には、触ったあとに楽器にまかせる自律性もみえた。
そしてギターを抱えて両手で掻きむしる。この強さからくる怖さと静かさが不思議にも共存している。弦をおさえつける音のブレーキとその逆の残響とが行き来する。今井さんは再び鎖を使うのだが、こんどは口にくわえて垂らす。弦との接触の音が不思議とヴォイスとのユニゾンのように聴こえたのだがなぜだろう。
なんにせよものすごい音の強度だ。
セカンドセットは鐘を鳴らし、左右の腕で音を拡散させてはじまった。弦の鳴りを抑えては急に響かせる、その両極端の行き来から、すさまじい速弾きに移行した。単音もスライドも高速で繰り出され、異常に楽理的で醒めた狂気を感じざるを得ない。スピードは変化し、旋律の探索自体が持つ強さに驚き続ける。耳を引きはがすことができない怖ろしさがある。やがて接触の程度、弾かなさの程度というグラデーションを感じさせる領域に音が拡がってきたように思えた(このスピードの中で)。そして木の棒を7本束ねたものを垂らし、鎖よりも慣性が大きいために異なる制御をみせた。
わかってはいるようなものだが、唯一無二の演奏家だということを再認識した。
●今井和雄
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
広瀬淳二+今井和雄@なってるハウス(2017年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+今井和雄@東松戸・旧齋藤邸(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
”今井和雄/the seasons ill” 発売記念 アルバム未使用音源を大音量で聴くイベント・ライブ&トーク@両国RRR(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
今井和雄『the seasons ill』(2016年)
Sound Live Tokyo 2016 マージナル・コンソート(JazzTokyo)(2016年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
今井和雄 デレク・ベイリーを語る@sound cafe dzumi(2015年)
今井和雄、2009年5月、入谷(2009年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)(今井和雄とのデュオ盤、1999年)