Sightsong

自縄自縛日記

吉田野乃子『Demo CD-R』

2017-01-25 23:49:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

吉田野乃子『Demo CD-R』(2016年)を聴く。(カネコさん、ありがとうございます。)

Nonoko Yoshida 吉田野乃子 (sax, udu, g)

わずか十数分の音源だが、とても面白く魅力的な多重録音。

ギターははじめての演奏とはとても思えない。ウドゥを叩きながらの演奏は、サックスに与えられた音空間が、隙間に注目するためか静謐感を増している。そのサックスは、透明であると同時に濁ってもいて、ヴィブラートが、いま生きている証であるかのように感じられてならない。

関東でのライヴと次のフルアルバムに大期待。

●吉田野乃子
吉田野乃子『Lotus』(2015年)
ペットボトル人間の2枚(2010、2012年)
●よしだののこのNY日誌
「JazzTokyo」のNY特集(2015/12/27)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/11/21)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/10/12)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/8/30)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/7/26) 


ジェラルド・クレイトン『Two-Shade』、『Life Forum』

2017-01-24 22:07:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジェラルド・クレイトンを2枚、『Two-Shade』(Emercy、2009年)と、『Life Forum』(Concord、2013年)。

Gerald Clayton (p)
Joe Sanders (b)
Justin Brown (ds)

 

Gerald Clayton (p, Fender Rhodes, org, vo)
Gretchen Parlato (vo)
Sachal Vasandani (vo)
Ambrose Akinmusire (tp)
Logan Richardson (as)
Dayna Stephens (ts)
Joe Sanders (b)
Justin Brown (ds)
Carl Hancock Rux (spoken word)

といっても、実は、クレイトンが目的ではない。何度この上品で巧いピアノを聴いても、何が他の人にない個性であり、脳と心にどのような痕跡を残してくれるのか、まだかけらも見出せないでいる。芸が細かいし良いなと思ったこともあるのだが。ピアノトリオ『Two-Shade』でも、一見野心的に見える『Life Forum』でも(なんでみんなをショーケースに閉じ込めて個性を殺すのだろう)。

巷の言説のように、かれはナントカとナントカをつなぐシーンの最重要人物であり、ナントカとナントカにも参加していて信頼されていてうんぬんと言えば、それらしく座席を見つけられるのかもしれないが。

それよりも目当てはジャスティン・ブラウンのドラムスである。肉体をフルに使ったものでありながら、身体を縛り付けるものがまるで無いかのように、軽々と跳躍し、空中浮遊して演舞を続けているようだ。ぜひいちどは演奏を生で観てみたい。

●ジェラルド・クレイトン
デイナ・スティーブンス『I'll Take My Chances』(2013年)
デューク・エリントンとテリ・リン・キャリントンの『Money Jungle』(1962、2013年)

●ジャスティン・ブラウン
アンブローズ・アキンムシーレ『The Imagined Savior is Far Easier to Paint』(2014年)
パスカル・ルブーフ『Pascal's Triangle』(2013年)
デイナ・スティーブンス『That Nepenthetic Place』(2010年) 
アンブローズ・アキンムシーレ『Prelude』(2008年)


益子博之×多田雅範=四谷音盤茶会 vol. 24

2017-01-23 22:41:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

四谷三丁目の喫茶茶会記に足を運び、「益子博之×多田雅範=四谷音盤茶会 vol. 24」(2017/1/22)。

>> 選曲リスト

個性的なひとたちの放談と、良いスピーカーでのサウンドを聴くことは愉しいものである。気になっていて未聴の音源も、まったく知らない音源もある。

この日のキーワードは「速度」か。最後におふたりのどちらだったか、「こういう音楽はひとりで深めていくものだが、たまに他人が知っていたりすると、お互いに奇人呼ばわりしたりして」と。まあそうだなあ。はじめて覗いたが、貴重な場のような気がしてきた。


アーチー・シェップ『Mama Too Tight』

2017-01-22 09:45:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

アーチー・シェップ『Mama Too Tight』(Impulse!、1966年)。これもずっとCDで聴いてきたものだが、運良く、アナログのオリジナル盤(ステレオ)をわが物にした。

Archie Shepp (ts)
Tommy Turrentine (tp)
Grachan Moncur III (tb)
Roswell Rudd (tb)
Howard Johnson (tuba)
Perry Robinson (cl)
Charlie Haden (b)
Beaver Harris (ds)

『The Way Ahead』について驚いたのと同様に、やはり、音のフラグメンツがCDとは違うアナログ盤の実力を証明している。

管を何本も、特に低音を震わせるトロンボーン(グレイシャン・モンカー3世とラズウェル・ラッド)、チューバ(ハワード・ジョンソン)を入れることによって、サウンドがひたすら分厚いものとなっている。それも、さほど緊密にアンサンブルを指定しないことにより、それぞれの音の力が野性的に発揮されているように聴こえる。

曲はどれも素晴らしく惚れ惚れする。A面の「A Portrait of Robert Thompson」においてはグチャグチャの中からシェップのブルースが浮上し、静かに「Prelude to a Kiss」を吹き始める瞬間なんて最高である。B面でも「Mama Too Tight」が賑々しく祝祭のように展開され、一転して「Theme for Ernie」を味わい深く吹きながらも、やがて自らカオスの渦を創り上げていくシェップ。そうか、「Ernie」とはアーニー・ヘンリーのことだったのか。

●アーチー・シェップ
ヨアヒム・キューン『Voodoo Sense』(2012年)
アーチー・シェップ+ヨアヒム・キューン『WO! MAN』(2011年)
アーチー・シェップ『Tomorrow Will Be Another Day』(2000年)
アーチー・シェップの映像『I am Jazz ... It's My Life』(1984年)
イマジン・ザ・サウンド(1981年)
アーチー・シェップ『The Way Ahead』(1968年)
アーチー・シェップ『The Way Ahead』 その2(1968年)
サニー・マレイのレコード(1966、69、77年)
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(1965、95年)
『Jazz in Denmark』 1960年代のバド・パウエル、NYC5、ダラー・ブランド(1962、63、65年)
セシル・テイラー初期作品群(1950年代後半~60年代初頭)


アーチー・シェップ『The Way Ahead』 その2

2017-01-21 10:18:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

アーチー・シェップ『The Way Ahead』(Impulse!、1968年)。

シェップの吹き込みのうち偏愛するひとつだが、最近、運よくアナログ盤を入手した。しかもオリジナル盤である。それ以来こればかり聴いている。

Archie Shepp (ts)
Jimmy Owens (tp)
Grachan Moncur III (tb)
Walter Davis, Jr. (p)
Ron Carter (b)
Beaver Harris (ds #1,2)
Roy Haynes (ds #3,4)

感想はCDについて書いたとおりなのだが、何しろ、CDと比較して音の生々しさが段違いに凄い。冗談抜きで、生肉とフリーズドライくらいの違いがある。わたしのさほどでないオーディオ機器でもそうなのだ。インパルスのアナログ盤の実力を思い知らされた。

ロイ・ヘインズのシンバルはかまいたちのように切れそうに迫ってくるし、ウォルター・デイヴィスJr.のピアノも臨場感たっぷりだ。そしてシェップのテナーはまさにそのあたりで涎を垂らしながらブロウしているようだ(これは実際にそうなのだ、わたしはアサガオの真下でひやひやした)。1曲目のロン・カーターのイントロからはじまる部分、吹き始める前のシェップの息遣いの迫力といったらない。

●アーチー・シェップ
ヨアヒム・キューン『Voodoo Sense』(2012年)
アーチー・シェップ+ヨアヒム・キューン『WO! MAN』(2011年)
アーチー・シェップ『Tomorrow Will Be Another Day』(2000年)
アーチー・シェップの映像『I am Jazz ... It's My Life』(1984年)
イマジン・ザ・サウンド(1981年)
アーチー・シェップ『The Way Ahead』(1968年)
サニー・マレイのレコード(1966、69、77年)
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(1965、95年)
『Jazz in Denmark』 1960年代のバド・パウエル、NYC5、ダラー・ブランド(1962、63、65年)
セシル・テイラー初期作品群(1950年代後半~60年代初頭)


中平穂積写真展『Jazz Giants』@Bar十月

2017-01-21 09:50:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ゴールデン街のBar十月で、中平穂積さんの写真展『Jazz Giants』を観る。

これまで何度も目にした作品もあるのだが、オリジナルプリントは良い。しかも、「DUG」のある新宿である。ママによれば、前の日に中平さんがいらしたそうであり、実はその場でたいへんな決定がなされた。それが何かを知りたい者は十月に行くしかないのだ。

逆光で真っ黒となったサン・ラのぬっとした姿。思索的なセシル・テイラー。大汗をかいたスーツ姿のセロニアス・モンク。渋谷の雑踏を歩くモンク。テナーを大きく持ち上げて吹くジョン・コルトレーン。愉しそうなチャールス・ロイド(ちょうど、ロイドのライヴ後に、かれと中平さんがハグするところを目撃したばかりである)。文字通り歴史のひとコマ、ひとコマばかりだ。

この夜、三番街のカフェアルルから十月へと行き、その後、同行のNさんと別れて、ひとり裏窓でもう少し飲んで浅川マキの録音を聴いた。新宿はやはり好きな街。

●参照
中平穂積『JAZZ GIANTS 1961-2002』 


ミシェル・ンデゲオチェロ@ビルボードライブ東京

2017-01-19 08:04:10 | ポップス

六本木のビルボードライブ東京にて、ミシェル・ンデゲオチェロのステージを観る(2017/1/18, 2nd)。

Meshell Ndegeocello (b, vo)
Chris Bruce (g)
Jebin Bruni (key)
Abe Rounds (ds)

シンプルな編成も奏功してか、ミシェルのヴォイスの感触がかなり刺激的に感じられる。表面は絹のようだが、その奥には霧がかかって鬱蒼とした沼があって、まるで、体温や脈動が伝わる人の手で直接心臓を撫でられるようである。一晩経っても、この感触が身体のそこかしこに残っている。

それに加え、昔から独特極まりないベースはファンクでもフォークでもあり、最初から最後までクール。

なお、このハコの音響や座席配置の悪さは特筆ものである。音楽を聴く場というよりも、お洒落さんのお付き合いスポットなんだろうね。

●ミシェル・ンデゲオチェロ
マーカス・ストリックランド『Nihil Novi』(2016年)
テリ・リン・キャリントン『The Mosaic Project: Love and Soul』(2015年)
ミシェル・ンデゲオチェロ『Comet, Come to Me』(2014年)
ニーナ・シモンの映像『Live at Ronnie Scott's』、ミシェル・ンデゲオチェロ『Pour une ame souveraine』(1985、2012年)
ミシェル・ンデゲオチェロの映像『Holland 1996』(1996年)


大城美佐子『琉球の風と海と月』

2017-01-17 08:14:16 | 沖縄

大城美佐子『琉球の風と海と月』(2016年)を聴く。

大城美佐子(唄三線)
徳原清文(唄三線)
宮里恵美子(太鼓・囃子)
知念こずえ(唄・太鼓・囃子)

オビには「芸道足掛け60年記念アルバム」と銘打たれている。1962年のシングル盤『片思い』でデビューだというから、初の吹き込みから数えても55年。文字通りのレジェンドである。

何とか記念というと豪華メンバーを大勢揃えた作品にもなりそうなものだが(実際、コンサートではそうなる)、ここではあくまで美佐子先生の唄三線が中心。かつての声から高音の突き刺すような要素が消え、むんむんとした個性が残っている。それでも枯れてはおらず、もはや何を聴いても素晴らしいという領域に入っている。

3曲で参加している徳原清文の甘い声も良い。昨年(2016年)、この唄者の『歌の道50周年記念コンサート 徳原清文の世界・饒辺やからうた会』に行こうかと思っていたのだ。ところが、イランからの帰国便に乗り遅れ、沖縄行きを1週間ずらすことになってしまいコンサートにも行けなかった。ああ惜しい。

●大城美佐子
OKI meets 大城美佐子『北と南』(2012年)
大城美佐子&よなは徹『ふたり唄~ウムイ継承』(2009年)
Leitz Elmarit 90mm/f2.8 で撮る栄町市場と大城美佐子(2007年)
Zeiss Biogon 35mm/f2.0 で撮る「島思い」(2007年)
代官山で大城美佐子を聴いた(2007年)
唄ウムイ 主ン妻節の30年(2007年)
もういちど観たい映画(1) ゴーヤーちゃんぷるー(2006年)
2005年、大城美佐子(2005年)
2004年、大城美佐子(2004年)
高嶺剛『夢幻琉球・つるヘンリー』 けだるいクロスボーダー(1998年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』(1996年)
知名定男の本土デビュー前のレコード(1975、77年)
大工哲弘『八重山民謡集』(1970年代?)
小浜司『島唄レコード百花繚乱―嘉手苅林昌とその時代』


アンドレ・マルケス『Solo』

2017-01-16 21:53:51 | 中南米

アンドレ・マルケス『Solo』(2005年)を聴く。

Andre Marques (p)

先日もエルメート・パスコアールのグループにおいて、あまりにこりともせずに卓越した技巧と愉快な雰囲気を見せてくれた、アンドレ・マルケスのピアノ・ソロである。「あまり」というのは、メンバーが並んでパーカッション合戦をやったときだけ、耐えきれずにか笑っていたからである。

たぶん、すごくマジメな人なのだと思う。音楽もマジメで端正だが、つまらなくはない。むしろその逆で、実に愉快。そしてタッチが柔らかく、強弱を効果的に使っている。エルメートの、前につんのめってはしゃぎまくるような曲のセンスを、色濃く受け継いでもいる。

ぜひピアノ中心のバンドで来日してほしい。トリオ・クルピラでも、『Viva Hermeto』のような思いっきりジャズでもいい。

●アンドレ・マルケス
エルメート・パスコアール@渋谷WWW X(2017年)
トリオ・クルピラ『Vinte』(2016年)
アンドレ・マルケス『Viva Hermeto』(2014年)
アンドレ・マルケス/ヴィンテナ・ブラジレイラ『Bituca』(2013年) 


片岡義男『万年筆インク紙』

2017-01-15 23:16:09 | もろもろ

片岡義男『万年筆インク紙』(晶文社、2016年)を読む。

中身は、タイトル通りである。つまり、万年筆とインクと紙。あえて言えば、あとはボールペンと、出たてのワープロ。

著者は、たとえば、万年筆で敢えて書くことが、その書かれたことにとって世界とのかかわりがどのようなものかといったことや、あるいは、ブルーブラックというインクの色がどのような意味を持つのかといったことについて、折に触れ、考察する。というよりも、印象を語る。

はっきり言って、そんなことはどうでもいいのだ。文房具愛好家が、自分自身の常軌を逸したさまに不安を抱き、あれこれと落としどころを見つけようとしているだけの話である。面白いのは文房具への具体的な執着という各論なのであり、わたし自身は常軌は逸してはいないと信じるものの、わかるわかると思いながら読んでしまう。

つまり、大事なのは、リーガルパッドに万年筆で書くと盛大に滲むことであり、ライフのノーブルノートはなかなか良いことであり、インク瓶の形が重要なことであり、エルバンのローラーボール(万年筆用のカートリッジを使う)の書き心地が渋いことであり、三菱鉛筆のジェットストリームの書き心地は最高だが軸がダメなことであり、万年筆とインクと紙の相性が永遠の課題ということであり、・・・・・・。

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
万年筆のペンクリニック(6)
万年筆のペンクリニック(7)
本八幡のぷんぷく堂と昭和の万年筆
沖縄の渡口万年筆店
鉄ペン
行定勲『クローズド・ノート』
モンゴルのペンケース
万年筆のインクを使うローラーボール
ほぼ日手帳とカキモリのトモエリバー
リーガルパッド
さようならスティピュラ、ようこそ笑暮屋
「万年筆の生活誌」展@国立歴史民俗博物館


リー・コニッツ+ケニー・ホイーラー『Olden Times - Live at Birdland Neuburg』

2017-01-15 21:51:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

リー・コニッツ+ケニー・ホイーラー『Olden Times - Live at Birdland Neuburg』(Double Moon Records、1999年)を聴く。

Lee Konitz (as)
Kenny Wheeler (tp, flh)
Frank Wunsch (p)
Gunnar Plümer (b)

ディスクユニオンの解説にあった通り、ライナーノーツには、2016年2月にリー・コニッツが当時のことを思い出し、「わたしは数千の録音に参加したけれど、あれがわたしの人生で真のベストだ」と語ったのだと書かれている。「あれ」とは、『Angel Song』(1996年)のことである。  

本盤が録音される3年ほど前の吹き込みで、やはりケニー・ホイーラーと、そしてデイヴ・ホランド、ビル・フリゼールと共演した作品である。どこまでコニッツがマジメに語ったのかはわからないけれど、雰囲気も熟度も、コニッツのプレイも確かに素晴らしいものだ。わたしもそれが出たすぐ後(たぶん1997年頃)に、新宿の旧DUGでケイコ・リーと共演したコニッツにサインを貰おうと盤を見せたところ、随分喜んで、「コレ良いだろう!」と勢いよく話してくれた。

99年の『Olden Times』は、ホイーラーの他の共演者は、現地ドイツのヴェテランふたり。プレイは堅実にして、突出した個性を発揮しているわけでもなく、言ってみれば「なんということもない」。しかし、そのことが非常にリラックスした雰囲気を生んでいるように聴こえる。『Angel Song』と共通する曲「Kind Folk」も「Onmo」もそうである(両方ともホイーラーのオリジナル)。

コニッツのアルトは程よくエアを含んでいて、まったく気負うことのない演奏のようだ。そしてホイーラーのトランペットとフリューゲルホーンは、雲の切れ目から光が差してくるような、あるいは雨のあとのひやりとした空気のような、実に爽やかなもので、この人にしか出せない音であったに違いない。

録音もとても良い。特筆すべき名盤の類ではないかもしれないが、これはもうひとつの『Angel Song』かもしれない。

●リー・コニッツ
今井和雄トリオ@なってるハウス、徹の部屋@ポレポレ坐(リー・コニッツ『無伴奏ライヴ・イン・ヨコハマ』、1999年)
ケニー・ホイーラー+リー・コニッツ+デイヴ・ホランド+ビル・フリゼール『Angel Song』(1996年) 
リー・コニッツ+ルディ・マハール『俳句』(1995年)
アルバート・マンゲルスドルフ『A Jazz Tune I Hope』、リー・コニッツとの『Art of the Duo』 (1978、83年) 
アート・ファーマー+リー・コニッツ『Live in Genoa 1981』(1981年)
ギル・エヴァンス+リー・コニッツ『Heroes & Anti-Heroes』(1980年) 
リー・コニッツ『Spirits』(1971年)
リー・コニッツ『Jazz at Storyville』、『In Harvard Square』(1954、55年)

●ケニー・ホイーラー
ケニー・ホイーラー『One of Many』(2006年)
ケニー・ホイーラー+リー・コニッツ+デイヴ・ホランド+ビル・フリゼール『Angel Song』(1996年) 
『A Tribute to Bill Evans』(1991年)
ジョン・サーマン『Flashpoint: NDR Jazz Workshop - April '69』(1969年)  


イルテット『Gain』

2017-01-15 08:35:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

イルテット『Gain』(RogueArt、2014年)を聴く。アナログ盤である。

Illtet:
Mike Ladd (vo, sampler, ems syn)
Jeff Parker (g)
HPRIZM/High Priest (moog, sampler, syn, vo)
Tyshawn Sorey (ds, tb, rhodes)

本盤はヒップホップからふたり、スティーヴ・リーマン『Sélébéyone』(2016年)でもラップで参加していたHPRIZMと、主役のマイク・ラッド。ここで目立っているのは圧倒的にラッドのポエトリー・リーディングなのであって、もとより、ヴィジェイ・アイヤー『In What Language?』(2003年)などでもジャズと交錯するサウンドを残してきている。

ジェフ・パーカーの「昔の近未来」のような艶をぎらぎらさせるギターも、状況に応じた巧いドラミングをみせるタイショーン・ソーリーも悪くない。サウンド全体としては、ラッドの声の雰囲気も、パーカーのギターの気怠さもあって、「アメリカ」を諦念とともに視ているような感覚がある。

とくに、気力を振り絞ってなんとか声を出すこところから、朗々と語るところまでの、ラッドのヴォイスである。とりわけ、気怠い最後の曲「Rome」に惹かれる。チケットを買って知らない街へ、ここは火星のコロニーか、ローマだ。

●参照
スティーヴ・リーマン『Sélébéyone』(2016年)
ヴィジェイ・アイヤー『In What Language?』(2003年)


スティーヴ・コールマン+デイヴ・ホランド『Phase-Space』

2017-01-14 12:22:29 | アヴァンギャルド・ジャズ

スティーヴ・コールマン+デイヴ・ホランド『Phase-Space』(DIW、1991年)を聴く。

Steve Coleman (as)
Dave Holland (b)

もちろんデイヴ・ホランドのグループにスティーヴ・コールマンが在籍していたことは知っているし、何枚かは愛聴もしていたのだけれど、このふたりのデュオがあったとは迂闊にも知らなかった。

聴いてみると、期待した通り、最高である。たとえばクインテットなどで、時間の進行に負けないように、煽り煽られるように演奏するのとは異なる。これはデュオであり、時間の流れはふたりの呼吸によって決まってゆく。弛緩も緊張もある。

デイヴ・ホランドはいつものコントラバスによる華麗なダンス、スティーヴ・コールマンは自ら切り拓いてきたスタイルの抽象的なフレーズ。それは他の作品と同じではあるのだが、驚いたのは、バンキー・グリーンの曲「Little Girl I Miss You」。ずいぶんと情緒的でメロディックなソロを、コールマンが吹く。絶品なのだ。こんなことも余裕でできるのか。

●スティーヴ・コールマン
スティーヴ・コールマン『Invisible Paths: First Scattering』(2007年)
シンディ・ブラックマン『A Lil' Somethin', Somethin'』(1980年代後半~90年代前半)

●デイヴ・ホランド
『Aziza』(2015年)
デイヴ・ホランド『Prism』(2012年)
デイヴ・ホランド+ペペ・ハビチュエラ『Hands』(2010年)
デイヴ・ホランドの映像『Jazzbaltica 2003』(2003年)
ケニー・ホイーラー+リー・コニッツ+デイヴ・ホランド+ビル・フリゼール『Angel Song』(1996年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)
カール・ベルガー+デイヴ・ホランド+エド・ブラックウェル『Crystal Fire』(1991年)
デイヴ・ホランド『Conference of the Birds』(1973年)


アクセル・ドゥナー+オッキュン・リー+アキム・カウフマン『Precipitates』

2017-01-14 10:26:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

アクセル・ドゥナー+オッキュン・リー+アキム・カウフマン『Precipitates』(TROKAAN、2011、13年)を聴く。

Axel Dorner (tp)
Okkyung Lee (cello)
Achim Kaufmann (p)

緑青を吹いた銅箔が直接貼り付けてある、奇妙なつくりのジャケット。しかしサウンドはもっと奇妙である。

冒頭、アキム・カウフマンが響かせるピアノの棘があり、それとともに、音の旅がはじまる。三者の役割は時々刻々と変貌してゆく。アクセル・ドゥナーのトランペットとオッキュン・リーのチェロ、ふたりの発する「こすれ」が空中で衝突したり、交じり合ったり、お互いの身体を入れ替えたり。うっかりするとどの音がドゥナーでどの音がリーなのか混乱してしまう。

それに棘を投げ込むのがカウフマンのピアノであり、ほんらいトランペットやチェロとは音の質がまるで違うはずなのに、どういうわけかかれのピアノも擬態して絡み合う。

●アクセル・ドゥナー
「失望」の『Vier Halbe』(2012年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
アクセル・ドゥナー + 今井和雄 + 井野信義 + 田中徳崇 『rostbestandige Zeit』(2008年)
『失望』の新作(2006年) 

●オッキュン・リー
オッキュン・リー+ビル・オーカット『Live at Cafe Oto』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
オッキュン・リーのTzadik盤2枚(2005、11年) 


喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器

2017-01-14 08:56:35 | アヴァンギャルド・ジャズ

代々木の松本弦楽器さんに足を運び、喜多直毅・西嶋徹デュオ(2017/1/13)。マンションの一室であり十数人も入れば満員。贅沢にも、わたしは楽器調整の作業机から観た。

Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Toru Nishijima 西嶋徹 (b)

はじまりの曲は、なんとブリジット・フォンテーヌ「ラジオのように」。この、挑発的に囁き呟くブリジットの声が、喜多さんのヴァイオリンから不協和音とともに発せられ、驚かされてしまう。

そして、映画『めぐり逢う朝』において使われた古楽や、喜多さんのオリジナル「焦土」の一部、また、西嶋さんのオリジナル「千鳥の空」や「凩」も演奏された。「凩」においては、西嶋さんのコントラバスに対して、まるで弦をさほど弾いていないのに胴が大きく共鳴するような不思議な感覚を抱いた。また「千鳥の空」においては、喜多さんのヴァイオリンが、旋律を往還しながらサウンドを盛り上げていって見事だった。

最後は、チャーリー・ヘイデンの「Old Spanish Love Song」。ヘイデンの曲にはいつも惹きこまれる。

Nikon P7800

●喜多直毅
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)