『宮沢賢治コレクション3 よだかの星』(筑摩書房)を読む。
きびしい自然と生活と、日常言語を使ったとんでもない想像力。宮沢賢治はときに残酷でおそろしくもある。本書にはそのような短編の物語がいくつも収められている。はじめて読むものも多く、震えてしまう。「蜘蛛となめくじと狸」や「気のいい火山弾」なんてアフォリズム的でもある。
賢治の自然観察能力も特筆すべきものだ。たとえば、「よく利く薬とえらい薬」の以下の描写など素晴らしく、音楽的でもある。
「そのうちにもうお日さまは、空のまん中までおいでになって、林はツーンツーンと鳴り出しました。
(木の水を吸いあげる音だ)と清夫はおもいました。
それでもまだ籠の底はかくれませんでした。」
日常言語とはいえ、ときにそれは飛翔し、ときにしみじみするほど美しい。以下の文章のえもいわれぬテンポなど、意味がよくわからないながら、ほれぼれする(「ひかりの素足」)。
「お父さんはなんだか少し泣くように笑って
「さあもう一がえり面洗わなぃやなぃ。」と云いながら立ちあがりました。」
●宮沢賢治
『宮沢賢治コレクション1 銀河鉄道の夜』
『宮沢賢治コレクション2 注文の多い料理店』
横田庄一郎『チェロと宮沢賢治』
ジョバンニは、「もう咽喉いっぱい泣き出しました」
6輌編成で彼岸と此岸とを行き来する銀河鉄道 畑山博『「銀河鉄道の夜」探検ブック』
小森陽一『ことばの力 平和の力』
吉本隆明のざっくり感