Sightsong

自縄自縛日記

ラケシア・ベンジャミン『Pursuance : The Coltranes』

2020-03-30 03:23:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

レイクシア・ベンジャミン『Pursuance : The Coltranes』(Ropeadope、-2020年)を聴く。

Lakecia Benjamin (sax)
Gary Bartz (as)
Jazzmeia Horn (vo)
Regina Carter (vln)
Brandee Younger (harp)
Marcus Strickland (sax)
Ron Carter (b)
Keyon Harrold (tp)
Steve Wilson (sax)
Marcus Gilmore (ds)
Georgia Anne Muldrow (vo)
Meshell Ndegeocello (vo, b)
Dee Dee Bridgewater (vo)
The Last Poets (poetry)
Marc Cary (key)
Greg Osby (as)
Reggie Workman (b)
etc

ジョン・コルトレーンとアリス・コルトレーンの曲を13曲、それぞれゲストを招いて演奏している。普通はこのような豪華ゲスト勢揃いものは印象が薄まるし、飽きて聴いていられないのだが、本盤は悪くない。

それに加え、ゲストの演奏も愉しい。ゲイリー・バーツの一本調子の熱いブロウには「また・・・」と苦笑させられる(褒めていない)。キーヨン・ハロルドも色っぽいのだが、一緒に弾いているロン・カーターのベースも現代ジャズのコンテキストで生きるのがおもしろい(この個性をゆるゆると貶してばかりではいけない)。スティーヴ・ウィルソンやグレッグ・オズビーのスタイリッシュな音も良い(登場したころは騒がれたのに)。ジョージア・アン・マルドロウが熱唱する背後にミシェル・ンデゲオチェロのベースが踊る。そしてディー・ディー・ブリッジウォーター、ラスト・ポエッツ。

本人のサックスは喉を開くことも多いのか、真直ぐで開かれた音で気持ちいい。この個性がアルバム全体で一本筋を通している点が、聴き飽きず愉しめる理由か。

●ラケシア・ベンジャミン
ラケシア・ベンジャミン『Rise Up』(-2018年)
デイヴィッド・マレイ・ビッグ・バンド featuring メイシー・グレイ@ブルーノート東京
(2013年)


ミシェル・ペトルチアーニ『Vienna 1985』

2020-03-29 20:20:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

ミシェル・ペトルチアーニ『Vienna 1985』(Jazz Time、1985年)を聴く。

Michel Petrucciani (p)
Palle Danielsson (b)
Eliot Zigmund (ds)

『Live at the Village Vanguard』(Blue Note、1984年)と『Pianism』(Blue Note、1985年)の間に録音された、同一メンバーによるトリオ演奏の記録である。つまり悪いわけはない。

『Live at the Village Vanguard』と同じ曲は「Nardis」と「Oleo」。両方とも、特に「Oleo」は前作よりも和音の作り方を複雑にしてかなりの発展をみせている。とは言え(比較して)単純には単純の良さがあって、前作では気持ちよく乗せられてスピードカーで最後まで突き進む爽快感があり、本作はより試行を形として付加している。

『Pianism』と同じ曲は「Our Tune」。こちらは逆に後の『Pianism』のほうが上品にまとまっているように聴こえるが、これはスタジオ録音のゆえかもしれない。

いずれにしても不世出の天才ペトルチアーニは何でも聴くべきだという結論。固めに音をまとめて駆動するパレ・ダニエルソンとエリオット・ジグムンドとの組み合わせは、後年のアンソニー・ジャクソン、sティーヴ・ガッドとのトリオと共通するものがある。

●ミシェル・ペトルチアーニ
チャールス・ロイドの映像『Arrows into Infinity』(2013年)
マイケル・ラドフォード『情熱のピアニズム』 ミシェル・ペトルチアーニのドキュメンタリー(2011年)
ミシェル・ペトルチアーニ『One Night in Karlsruhe』(1988年)


カート・シドナー『Deep End Shallow』

2020-03-29 09:29:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

カート・シドナー『Deep End Shallow』(Out Of Your Head Records、-2020年)を聴く。

Curt Sydnor (key, vo)
Caroline Davis (sax)
Greg Saunier (ds)
Aaron Dugan (g)
Michael Coltun (b)

カート・シドナーの書いた電子音楽の演奏集なのだけれど、そのように簡単な枠に押し込められないほどサウンドの拡がりが多彩だ。

サックスや自身のヴォーカルによるハーモニーを効果的に使ったあたりなど、ポップで、コミュニティの信頼感に溢れている(ダニー・マッキャスリンを思い出した)。クラシックピアノを思わせる音で空間を感じさせるように響かせる「Fieldgaze Variation」は、愉しくも不穏でドラマチック。ディアフーフのグレッグ・ソーニアのシンプルなドラムスも良い。

このような都会のコミュニティの楽園的な音楽を、良い場所でライヴで聴けたら快感だろうね。


近藤等則+パウル・ローフェンス+ポール・リットン『死は永遠の親友 / Death Is Our Eternal Friend』

2020-03-28 09:53:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

近藤等則+パウル・ローフェンス+ポール・リットン『死は永遠の親友 / Death Is Our Eternal Friend』(DIW、1982年)を聴く。

Toshinori Kondo 近藤等則 (tp)
Paul Lovens (ds, cymbal)
Paul Lytton (perc, electronics)

82年の大阪と盛岡におけるライヴ録音。よくまあこの奇妙なドラマーふたりとツアーをしたものだ。

躁状態となって祝いの花火も地獄の業火も見せ続けるのは近藤等則の個性だけれど、そのふたりもまた個性爆発。ポール・リットンはドライで内臓にずんと来る良い音を出すだけでなく、何やらエレクトロニクスで遊びまくってもいる。またパウル・ローフェンスはともかくも続け、聴く者が次を想像する前に別の音を仕掛けてくる。この盛り上がりの力といったら凄いものがある。

●近藤等則
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
本田珠也SESSION@新宿ピットイン(2014年)
トリスタン・ホンジンガー『From the Broken World』、『Sketches of Probability』(1991、1996年)
浅川マキ『Stranger's Touch』(1989年)
浅川マキ『幻の男たち』 1984年の映像(1984年)
浅川マキ『スキャンダル京大西部講堂1982』(1982年)
近藤等則+ジョン・ラッセル+ロジャー・ターナー『Artless Sky』(1979年)
浅川マキ『灯ともし頃』(1975年)

●ポール・リットン
シュリッペンバッハ・トリオ+高瀬アキ「冬の旅:日本編」@座・高円寺(2018年)
ガイ+クリスペル+リットン『Deep Memory』(2015年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ネイト・ウーリー『Seven Storey Mountain III and IV』(2011、13年)
『Groups in Front of People』の2枚(1978、79年)

●パウル・ローフェンス 
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
パウル・ローフェンス+パウル・フブヴェーバー+ジョン・エドワーズ『PAPAJO』(2002年)
高瀬アキ『St. Louis Blues』(2001年)
『News from the Shed 1989』(1989年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
『Groups in Front of People』の2枚(1978、79年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年) 


Zero Years Kid@渋谷Bar Subterraneans

2020-03-28 09:00:48 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷のBar Subterraneans(2020/3/27)。

Joachim Badenhorst (vo, cl, bcl, effect)

去年、自分のヴォーカルも入れたプロジェクトをやるんだよと聞かされて意外さに驚き、その後、Youtubeで音源を聴いたりして楽しみにしていた。てっきり父親になったばかりだからプロジェクト名を「Zero Years Kid」にしたのかと思い込んでいたが、訊いてみるとそうではなく、以前に友人が「When I was a zero years kid, ...」と話したフレーズがおもしろくてそこから付けたのだということである。

実際にナマで観ると愉快で身体の力が抜ける。打ち込みのサウンドやエフェクトを使いつつ、地元ベルギーや北欧の歌、自分の歌を歌っては、クラやバスクラを吹く。なかには90年代ノルウェーのテクノユニットの曲もある。少し照れながら佇まいをそのままサウンドにしてしまうところなど天才の証明。途中からかれのZero Years Kidもバーに現れ、叫び声がエフェクトなのかリアルなのかわからない愉快な時間もあった。

意外とは言え、たとえばカラテ・ウリオ・オーケストラではフランダース地方の童歌をモチーフにしてもいるし(>> 『Carate Urio Orchestra / Garlic & Jazz』)、地域のコミュニティや自身の内面を自然な形で表現してゆくのがかれらしいということなのだろう。

もともとはCOVID-19騒動がなければこの界隈で他業界とのコラボが予定されていた。わたしもひとつ追加で企画に噛んだ途端に流れた。しかし、しばらく日本に滞在するとのこと、この先どうなるかわからない。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●ヨアヒム・バーデンホルスト
ヨアヒム・バーデンホルスト+安田芙充央+井野信義@稲毛Candy(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+大上流一+南ちほ+池田陽子@不動前Permian(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ガレス・デイヴィス+秋山徹次@水道橋Ftarri(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
ギレルモ・セラーノ+ヨアヒム・バーデンホルスト+マルコス・バッジャーニ『Lili & Marleen』(2016年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 


近藤等則+ジョン・ラッセル+ロジャー・ターナー『Artless Sky』

2020-03-27 15:52:20 | アヴァンギャルド・ジャズ

近藤等則+ジョン・ラッセル+ロジャー・ターナー『Artless Sky』(Caw Records、1979年)。

Toshinori Kondo 近藤等則 (tp, alto horn, effects)
John Russell (g)
Roger Turner (ds, perc)

いままで聴いたことがなかった音源。A面は長い1曲、B面は短い5曲である。

三者三様に個性が出ていて良いサウンドだ。ロジャー・ターナーには棒の先端の美学があり、それは先端とは言え金属の擦れからバスドラの波動までを切れ目なく含んでいる。ジョン・ラッセルはギターの板の上を疾走するようであり、それは明らかに弦の近傍に粘りつく運指と関係している。近藤等則はここでもトリックスター的に、パルスの放出だけでない騒動を展開している。

これらの三者の作業が並行し、ときどき融合したり交差したりする。おもしろい。

●近藤等則
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
本田珠也SESSION@新宿ピットイン(2014年)
トリスタン・ホンジンガー『From the Broken World』、『Sketches of Probability』(1991、1996年)
浅川マキ『Stranger's Touch』(1989年)
浅川マキ『幻の男たち』 1984年の映像(1984年)
浅川マキ『スキャンダル京大西部講堂1982』(1982年)
浅川マキ『灯ともし頃』(1975年)

●ジョン・ラッセル
ジョン・ラッセル+豊住芳三郎@稲毛Candy(2018年)
「響きの今」(ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、ピーター・エヴァンス、秋山徹次)@両国門天ホール(2018年)
ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、すずえり、大上流一、石川高、山崎阿弥@Ftarri(2018年)
豊住芳三郎+ジョン・ラッセル『無為自然』(2013年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
『News from the Shed 1989』(1989年)
ジョン・ラッセル+フィル・デュラン+ジョン・ブッチャー『Conceits』(1987、92年)

●ロジャー・ターナー
ロジャー・ターナー+亀井庸州@Ftarri(2019年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+内橋和久@下北沢Apollo(2019年)
アーサー・ブル+スコット・トムソン+ロジャー・ターナー『Monicker - Spine』(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
フィル・ミントン+ロジャー・ターナー『drainage』(1998、2002年)
アネット・ピーコック『I Have No Feelings』(-1985年)


松本一哉+照内央晴+吉本裕美子@水道橋Ftarri

2020-03-26 08:14:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2020/3/25)。

Kazuya Matsumoto 松本一哉 (perc)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)
Yumiko Yoshimoto 吉本裕美子 (daxophone, g)

最初は吉本・照内デュオ。どちらとも共演したことのない松本さんはふたりの演奏を観察する。

ダクソフォンの長く連続的な「声」の横で、ピアノが和音を少しずつ挿入するのだが、和音がしばしばそうであるように音風景の広がりを担う。吉本さんのダクソフォンは声から幻視されるなにものかの人格がじわじわと変わっていくようでおもしろい。別々の相での協力にみえたが、やがて照内さんのほうから移動し、同じ相の中で音を重ねたように思えた。

次に吉本・松本デュオ。ダクソフォンは先よりも短めの音価をもってあれこれを語る。しばらく正座して動かず、なぜかスマホでセルフポートレイトなどを撮っていた松本さんだが、程なくして、背後の響きを持ち込んできた。主に銅鑼によって、楽器の形や撫でる動きと相似形の大きな円を思わせる響きをもたらした。

休憩を挟んで、照内・松本デュオ。ふたりとも意図したものかどうか、互いの音の擬態があらわれた。ピアノによって金属の冷たい響きが発せられ、銅鑼やいくつかの塊は音をピアノのようにあちこちに跳ねさせた。そのような相互侵入の共演に聴こえた。

最後にトリオ。これまでよりも各々の音が断片化され、無数のフラグメンツが空中にばらまかれる。それらの衝突を感知して次の演奏に移るのだろうけれど、それは敢えてなのかさほど機敏には示されなかった。どちらかと言えばまずは他者の音を得て自分の演奏を行ううえでの思考に取り込んだように思えた。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●吉本裕美子
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)

●松本一哉
August Moon@浜町August Moon Cafe(2019年)
田上碧+徳永将豪+松本一哉@Ftarri (2019年)
松本一哉+加藤裕士「消尽」@銀座奥野ビル306号室(2019年)

●照内央晴
照内央晴+加藤綾子@本八幡cooljojo(2020年)
神保町サウンドサーカス(直江実樹+照内央晴、sawada)@神保町試聴室(2020年)
豊住芳三郎+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2020年)
千野秀一+照内央晴@渋谷公園通りクラシックス(2019年)
奥田梨恵子+照内央晴@荻窪クレモニア(2019年)
豊住芳三郎+コク・シーワイ+照内央晴@横濱エアジン(2019年)
照内央晴+加藤綾子@神保町試聴室(2019年)
特殊音樂祭@和光大学(JazzTokyo)(2019年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴@なってるハウス(2019年)
豊住芳三郎インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
豊住芳三郎+庄子勝治+照内央晴@山猫軒(2019年)
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2019年)
吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2019年)
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)


松丸契@下北沢No Room For Squares

2020-03-22 22:58:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のNo Room For Squares(2020/3/22)。

Kei Matsumaru 松丸契 (as)

かなり照明を落とした空間での独奏アルトソロ。旋律作りにフォーカスするとの言葉通り、既存の曲はひとかけらも出てこない。もっとも基礎練習もエチュードも含めて、サックス演奏という世界を形成してきた和集合たるcode(chordではなく)の中ではあるだろう。はじめからcodeを崩そうという演奏ではない。だからこそ利用やクリシェと独創性との間のバランスが演奏の水準に直結するのだろうな、と、思いつつ聴いていた。

フレーズのフラグメンツが目の前で発展してゆくさまが緊張感を伴っている。だが、ここで松丸さんの言う旋律作りとは、音符の組み合わせだけではなく、たぶん、音響の活用も含まれている。

吹き始めたときから残響がかなり強調されていた。アコースティックとは言えエフェクトも使っているのかと思ったが、そうではなかった。右足でピアノのダンパーペダルを踏み込み、ピアノの弦と筐体を共鳴体として使っているのだった。鍵盤を指でずっと押さえ続けたり、ペダルを緩めたりすることにより、それが制御されている。

また、途中でエアを強めに入れると、それが旋律の味付けにとどまらず、旋律の見え方が異なってくるように思えた。その意味で、音響の活用とは、楽器から出る音プラスアルファということではなく、楽器から出る音への逆影響もあるものだった。途中で立ち上がって吹くと、旋律が試行的なものからリズムを伴うものに変わるように感じられた。

横にはグラスが置かれており、アルトを低音で吹くとかなり高周波での共鳴音が出た。これはパフォーマンスとしては試行的な動きだった。

1時間強のあと、最後に着地するための音。

このラボ的な独奏がどのように変わっていくのか、楽しみである。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●松丸契
松丸契+片倉真由子@小岩コチ(2020年)
細井徳太郎+松丸契@東北沢OTOOTO(2019年)
松丸契『THINKKAISM』(2019年)
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)


吉田哲治+栗田妙子@東中野セロニアス

2020-03-21 11:01:34 | アヴァンギャルド・ジャズ

東中野のセロニアス(2020/3/20)。

Tetsuji Yoshida 吉田哲治 (tp)
Taeko Kurita 栗田妙子 (p)

ファーストセットは吉田さんのオリジナル2曲から。「ハイ・デ・ボッチ」は間がぎくしゃくとしていて、テーマの途中で吹かなかったりして、どことなく奇妙だ。「IM1」は池田芳夫さんのお弟子さんにあたるムロタさんという方の頭文字だそうで、ふたりでユニゾンをキメたあとに自由飛翔をはじめ、競うように走ってズレもあらわれてくるという、やはり奇妙な曲だった。

続いて栗田さんのオリジナル「昔話」と「昆虫博士」。後者は下を向いて歩く追憶的な雰囲気が漂っていて、ピアノもミュートを付けたトランペットもだんだんと強くなってきた。

続いて、フリジアン・スケールを使わない「フリジアン・ストーン」という吉田さんのオリジナル。ちょっとノリが「Watermelon Man」みたいで、強度が高いピアノも、音を少しファンキーによじらせるトランペットも良かった。

セカンドセットは栗田さんのピアノソロで、オリジナル「へそ」と「境川」。左手のベースラインの上で暴れる音の群がとても愉しい。吉田さんがまた入り、先の続編「IM2」。震えながら吹きはじめ、やがて朗々と鳴る。ピアノはそれを支える印象。「パレード」はまたしても妙なパターンで、渋くも賑々しくも花開いた。続いての栗田さんのオリジナル(なんだろう?)は、悦びと美しさに満ちた和音からフラグメンツが飛び出て散りばめられるようで、そこに詩人のように吹くトランペットとともに良い世界を創った。

「木曽川」では、長く低音を響かせつつ、さまざまな和音を重ねる。それに、靄を吹き飛ばすようなトランペット。音風景もそれが持つ時刻も早回しのように変わってゆく。最後はレゲエみたいな感じの曲。

渋さも華やかさもあって、すぐウケそうなものに色目を使わない、良い音楽だと思った。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●吉田哲治
吉田哲治『December』、『Eternity』(2019年)
吉田哲治『Jackanapes』(2018年)
FIVES & 鈴木常吉『童謡』(1991年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』
(1988年)
生活向上委員会大管弦楽団『This Is Music Is This?』(1979年)

●栗田妙子
川下直広+栗田妙子『11.25 & 27@バレルハウス』(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)


ヨアヒム・バーデンホルスト+安田芙充央+井野信義@稲毛Candy

2020-03-21 08:15:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

稲毛のCandy(2020/3/20)。

Joachim Bedenhorst (cl, bcl)
Fumio Yasuda 安田芙充央 (p)
Nobuyoshi Ino 井野信義 (b)

安田さんはCandy初登場、井野さんは久しぶりで「クルマで3時間かかったよ!」と言いながら現れた(横須賀から稲毛は遠い)。

3人は気負いも衒いもなくインプロを開始する。はじまりの安田さんの内部奏法は弦を掌で押さえ、勝手知ったるように鍵盤とともに制御するようなもので、その思い切りにいきなり引きこまれる。バスクラが入るとピアノのあり方が変わる。続いて井野さんが参入したのだが、弓を使った乱暴さに動かされてしまう。インパクトがあったのか、ヨアヒムも安田さんも井野さんを眺めていて可笑しい。井野さんはマージナルな音領域を攻め、その後ピチカートに移ったときの音の深さといったらない。そしてピアノが再び入り色を付け、全体を迫り上げる。

ベースとピアノがサウンドを停滞ではなく前進にシフトすると、ヨアヒムはクラを手に取った。マルチフォニックの出し方も、ベースとともにマージナルな領域に専念するありようも良い。井野さんは駒の下の弦を擦り唸るような音さえ出す(!)。デュオは逸脱の振幅を大きくしてゆく。

またピアノが入るとベースとのふたりで愉し気な呼吸を共有し、バスクラが入り、ピアノの迫力が全体を支配し、そしてトリオ。この悦びはなんだろう。ヨアヒムはクラでは一筆書きのようなノリのソロも聴かせる。3人の時間の制御ぶりはさすがである。

セカンドセット。バスクラのマージナル域での震えに対し、コントラバスが弓でなぞる。ヨアヒムは循環呼吸も使い管を鳴らし、フォーキーな感覚の旋律も展開する。ここではピアノのトリルと、ベースとバスクラの途切れない連続音との併存が素晴らしかった。

そしてヨアヒムがバスクラでエリック・ドルフィーを思わせる跳躍する太いラインを描く。三つ巴でばんばん出てくるが、突然潮目が変わり、お祭りのようなリズムが訪れた。井野さんは愉しそうにコントラバスを抱え込んで高速のピチカート、安田さんはフレーズを繰り返し、ヨアヒムがクラで受ける。この集合と逸脱の繰り返しの中で、ヨアヒムがクラのマウスピースを外してフルートのように吹いたのはおもしろかった。「Blue Moon」のようなフレーズも聴こえた。

ピアノの和音でまた潮目が変わり、ヨアヒムはマウスピースを取り付け、井野さんの静かなアルコがあり、安田さんは箏を思わせる音での内部奏法をみせた。

文字どおり3人の達人による、みごとな演奏。感嘆した。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ヨアヒム・バーデンホルスト
ヨアヒム・バーデンホルスト+大上流一+南ちほ+池田陽子@不動前Permian(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ガレス・デイヴィス+秋山徹次@水道橋Ftarri(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
ギレルモ・セラーノ+ヨアヒム・バーデンホルスト+マルコス・バッジャーニ『Lili & Marleen』(2016年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 

●安田芙充央
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)

●井野信義
TRY ANGLE/原田依幸+井野信義+山崎比呂志@なってるハウス(2019年)
山崎比呂志+レイモンド・マクモーリン+井野信義@なってるハウス(2019年)
藤原大輔『Comala』(2018年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
ニュージャズホールって何だ?@新宿ピットイン(2018年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
峰厚介『Plays Standards』(2008年)
アクセル・ドゥナー + 今井和雄 + 井野信義 + 田中徳崇 『rostbeständige Zeit』
(2008年)
井野信義『干反る音』(2005年)
沖至+井野信義+崔善培『KAMI FUSEN』(1996年)
高瀬アキ『Oriental Express』(1994年)
内田修ジャズコレクション『高柳昌行』(1981-91年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)
日野元彦『Flash』(1977年)
森剣治『Plays the Bird』(1976年)


ヨアヒム・バーデンホルスト+大上流一+南ちほ+池田陽子@不動前Permian

2020-03-17 23:25:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

不動前のPermian(2020/3/17)。

Joachim badenhorst (bcl, cl)
Riuichi Daijo 大上流一 (g) 
Chiho Minami 南ちほ(鈴木ちほ)(bandoneon)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)

ファーストセットはヨアヒム、大上デュオ。ヨアヒムはバスクラを使い、大上さんの火薬が破裂を続けるような音の兄弟となり、いきなり鮮やかな展開。次第に音価が長くなってきて、音と音の重なりも違う形になってゆく。いちどは収束するにみえたが、ちらりと顔を見合わせて、ふたりとも終わりを回避した。大上さんは増幅する音の一部分をプラトーのように使い、ヨアヒムもまたフィードバックにも聴こえる音を出し続けた。

セカンドセットはヨアヒム、南、池田トリオ。蛇腹の空気の震え、クラの息の震え、弦のヴィブラートが明らかに意図的にシンクロして始まり、それはシンクロしたまま空にのぼってゆくように強度を高めていった。こう来るのかと驚いた。ヨアヒムはバスクラとクラを何度も取り換えた。そのような間に、三者の自由な発散の時間が訪れていた。実に魅力的なそれぞれの音のフラグメンツに気を取られていたが、その一方で、序盤のシンクロにまた戻りたくなるに違いないと思い、待ち構えていた。そしてやはり三者は歩み寄り、また音の重なりを創り出した。

想像以上に素晴らしい共演。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ヨアヒム・バーデンホルスト
ヨアヒム・バーデンホルスト+ガレス・デイヴィス+秋山徹次@水道橋Ftarri(2020年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
ギレルモ・セラーノ+ヨアヒム・バーデンホルスト+マルコス・バッジャーニ『Lili & Marleen』(2016年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 

●大上流一
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
謝明諺+大上流一+岡川怜央@Ftarri(2018年)
Shield Reflection@Ftarri(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)
リアル・タイム・オーケストレイション@Ftarri(2016年)

●南ちほ(鈴木ちほ)
ヒゴヒロシ+矢部優子、プチマノカリス/山我静+鈴木ちほ+池田陽子@なってるハウス(2019年)
ガトー・リブレ、asinus auris@Ftarri(2019年)
『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(2019年)
鈴木ちほ+北田学@バーバー富士(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(JazzTokyo)(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
種まき種まかせ 第3回ー冬の手ー@OTOOTO(2019年)
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)
impro cats・acoustic@なってるハウス(2018年)
鈴木ちほ+荻野やすよし(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2018年)
鳥の未来のための螺旋の試み@ひかりのうま(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)
りら@七針(2017年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年) 

●池田陽子
池田陽子、増渕顕史、野川菜つみ、田上碧、メーガン・アリス・クルーン@Ftarri(2019年)
ヒゴヒロシ+矢部優子、プチマノカリス/山我静+鈴木ちほ+池田陽子@なってるハウス(2019年)
ガトー・リブレ、asinus auris@Ftarri(2019年)
Signals Down@落合soup(2019年)
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
Hubble Deep Fields@Ftarri(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
大墻敦『春画と日本人』(2018年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)


ヨアヒム・バーデンホルスト+ガレス・デイヴィス+秋山徹次@水道橋Ftarri

2020-03-16 00:14:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2020/3/15)。

Joachim Badenhorst (bcl, cl)
Gareth Davis (bcl)
Tetuzi Akiyama 秋山徹次 (g)

とても内容が濃く滋味のあるギグだった。

ファーストセットはガレス・デイヴィスが低音域のフレーズにより下から形を支え、ヨアヒム・バーデンホルストのバスクラとクラとが隙間を遊泳するような感覚。秋山さんのギターはやはり腰の据わった尖りがあって素晴らしいものだが、終盤に意外にも同じフレーズを繰り返し、3人のサウンドを引き受けるように構造を作った。

セカンドセットはガレスが高音でサウンドを持ち上げ、一方のヨアヒムは低音も使いながら、それでも渋くマージナルな領域をひらひらと飛ぶ。つまりバスクラのブロウが低かろうが高かろうが、強かろうが弱かろうが、ガレスは重力的で、ヨアヒムは蝶のようだった。ここでのサウンドの紐帯はヨアヒムか秋山さん。最後に循環呼吸で小さな音を続けたヨアヒムはさすがだった。

この困難な状況で、ヨアヒムは2週間ほど関東のあちこちでギグを行う。誰にも似ていない素晴らしい音楽家であり、どこかで立ち会うことを激推しする。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ヨアヒム・バーデンホルスト
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
ギレルモ・セラーノ+ヨアヒム・バーデンホルスト+マルコス・バッジャーニ『Lili & Marleen』(2016年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
安田芙充央『Forest』(2015-16年)
ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 

●秋山徹次
ドーヴィッド・シュタッケナース+秋山徹次+中谷達也@東北沢OTOOTO(2020年)
アーサー・ブル+秋山徹次、神田さやか@Ftarri(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
エリザベス・ミラー+クレイグ・ペデルセン+秋山徹次+中村としまる@Ftarri(2018年)
「響きの今」(ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、ピーター・エヴァンス、秋山徹次)@両国門天ホール(2018年)
高島正志+古池寿浩+秋山徹次「Blues Frozen Xīng ブルース 凍てついた星」@Ftarri(2018年)
Sound of the Mountain with 秋山徹次、中村としまる『amplified clarinet and trumpet, guitars, nimb』(JazzTokyo)(2017年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
池田謙+秋山徹次@東北沢OTOOTO(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)


柳沢耕吉+奥住大輔@東中野セロニアス

2020-03-15 08:20:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

東中野のセロニアス(2020/3/14)。移転後はじめて足を運んだ。落合駅にも近い。

Kokichi Yanagisawa 柳沢耕吉 (g)
Daisuke Okuzumi 奥住大輔 (as)

ちょっと気持ちが浮き立つような曲想の「You're My Everything」から始まった。奥住さんのアルトは擦れる音から始めて喉を鳴らしたりもして、音のレンジが広い。柳沢さんのギターはどちらかというとエクスペリメンタルで音響的な即興のプレイを聴いてきたので、旋律を弾く太さに少し驚いた。アルトが入るとぴきぴきと鳴らし弦の物質感をあらわにする。「Fire Waltz」(マル・ウォルドロン)ではドルフィーの記憶と重なるように音の間を大きく跳躍するアルト。その叫びに対するギターの和音、しかしやはり跳躍感がある。アルトはグラデーションを示しもした。

続いてイーサン・アイヴァーソンの曲。ふたりがユニゾンで進む奇妙な進行、そのあとも付かず離れず。アルトの裏声的な音もあり、また、タンギングとキー操作とでパーカッシブに使ったり。ここではアルトもギターもちょっと不協和音を活かしているように思えた。最後の間抜けなユニゾンが可笑しい。

朗々とブロウする奥住さんのアルトをフィーチャーした「It's Easy to Remember」。やさしく震わせるギターもとても良い。アルトも震え、ヴィブラートを大きく使い、息をうぐっと効果的に詰まらせた。つまりここでは感情の直接的な吐露にアルトが奉仕していた。

曲として面白いのはキャプテン・ビーフハートの「A Carrot Is As Close As A Rabbit Gets To A Diamond」。これもまたユニゾンで進むがラリっているのかというようにねじくれ、調が移り変わってゆく奇妙さ。ギターは濁り、アルトは遊ぶように飛ぶ。そしてファーストセットの最後に「Self Portrait in Three Colors」(ミンガス)。旋律の繰り返しと発展に、なんとも言えないひりひりした寂寞感が漂っていた。

セカンドセットはふたりのオリジナル曲であり、最初も最後も奥住さんの「掌桜」という淋しいような淡々とした曲。ふたりが訥々と出す音は互いにずれを生じさせたり近づいたりして、また音価も伸び縮みさせて、ぼんやりしているうちに音風景が変わっている。ただその中でも、「Ghost」(アイラー)では急に別世界に来たようになり、アルトは突破口を感情で探り、広めの音域内を往還するギターとともに、次第に振り落とされまいとしてどろどろの世を激しく泳いだ(そのまま奥住さんの「月と狛犬」という不思議な曲に移った)。他の曲では悲しいアルトも、クリスタルのようにずっと光るような残響のギターも、それからふたりが演奏すること自体に潜む寂しさもあった。

渋いというより常になにかの予感がそのへんに潜んでいるようなデュオ。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●柳沢幸吉
合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
種まき種まかせ 第3回ー冬の手ー@OTOOTO(2019年)
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)

●奥住大輔
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)


パトリック・シロイシ『Eye for an Eye』

2020-03-14 09:44:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

パトリック・シロイシ『Eye for an Eye』(Armageddon Nova、2019年)を聴く。

Patrick Shiroishi (sopranino sax)

奇才パトリック・シロイシ初の日本盤。まずはめでたい。

本盤はエフェクターを使ったものでも轟音系のものでもなく、ソプラニーノ1本でのソロ演奏である。たたみかけるように音で攻めるわけではない。どちらかと言えば内省的な演奏であり、間がかなり活かされている。さまざまな周波数の複合的な音を試行しては、その音を自身に取り込み、次の音に反映させるプロセスが体感できるように思える。そして内省的でありながら、外への音響のありようも試行されており、精神的にも物理的にも響きが内と外との両方に向けられている。

さて、COVID-19流行の中でかれの来日はどうなるか。

●パトリック・シロイシ
パトリック・シロイシ『Descension』(2019年)
パトリック・シロイシ『Bokanovsky’s Process』、『Tulean Dispatch』、『Kage Cometa』(JazzTokyo)(2018年)
「JazzTokyo」のNY特集(2018/4/1)


ジェフ・パーカー『Suite for Max Brown』

2020-03-12 23:39:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジェフ・パーカー『Suite for Max Brown』(International Anthem、-2020年)を聴く。

Build a Nest (feat. Ruby Parker)
Jeff Parker (ds, vo, p, g, Korg MS20)
Ruby Parker (vo)

C’mon Now
Jeff Parker (sampling, editing)

Fusion Swirl
Jeff Parker (g, bg, samplers, perc, vo)

After the Rain
Paul Bryan (bg)
Josh Johnson (p)
Jeff Parker (g, perc)
Jamire Williams (ds)

Metamorphoses
Jeff Parker (glockenspiel, sequencer, sampler, Korg MS20)

Gnarciss
Paul Bryan (bg)
Josh Johnson (as)
Katinka Kleijn (cello)
Rob Mazurek (piccolo tp)
Makaya McCraven (ds, sampler)
Jeff Parker (g, JP-08, sampler, midi strings)

Lydian, Etc
Paul Bryan (bg)
Jeff Parker (g, pandeiro, midi programming, etc.)

Del Rio
Paul Bryan (bg)
Jeff Parker (g, mbira, sampler, Korg MS20, drums, p)

3 for L
Jay Bellerose (ds, perc)
Jeff Parker (g, Korg MS20)

Go Away
Paul Bryan (bg, vo)
Makaya McCraven (ds)
Jeff Parker (g, vo, sampler)

Max Brown
Paul Bryan (bg)
Josh Johnson (as)
Jeff Parker (g, Korg MS20, JP-08)
Nate Walcott (tp)
Jamire Williams (ds)

透明で太く、ゆらぎもあるジェフ・パーカーの音は本当に好きである。曲によってメンバーや趣向が異なるが、気持ちの良い寄せ集め感がある。サウンドが雰囲気も音質も変わる突然さは意識的なものだし、その結果のざわざわしたコミュニティ感はいまのシカゴ。

ポール・ブライアンのベースとの間でずっと違和感を創出し続けている感覚もとても良い。そして手作り×自動感、汗をかく緻密感のマカヤ・マクレイヴン。

傑作。

●ジェフ・パーカー
マカヤ・マクレイヴン『Universal Beings』(2017-18年)
ジェフ・パーカー@Cotton Club(2017年)
スコット・アメンドラ@Cotton Club
(2017年)
イルテット『Gain』(2014年)
ニコール・ミッチェル『Awakening』、『Aquarius』(2011、12年)
ジョシュア・エイブラムス『Music For Life Itself & The Interrupters』(2010、13年)
ジョシュア・エイブラムス『Represencing』、『Natural Information』(2008-13年)
マタナ・ロバーツ『The Chicago Project』(-2007年)