Sightsong

自縄自縛日記

マラカイ・フェイヴァースのソロ・アルバム

2009-04-16 00:48:58 | アヴァンギャルド・ジャズ

レコードプレイヤーのカートリッジも取り替えて、部屋も掃除して、そんな目を見張るようなシステムではないけれども、改めてレコードを聴くのが楽しい。もう随分前、ギャラリーでの音楽イヴェントを主催するKさんのお宅にお邪魔したとき、CDとLPとVHSの山に驚いた。しかし、Kさんが発した言葉は、「名盤はあなたの棚にある」だった。もう自分のストックの中身を覚えていられないのだった。

そんなわけで、浮かれて新しい音源を調達するよりも、自分の棚をじろじろと探検する。大きなスピーカーで聴きたいのは低音でもあるから、ベースが主役のLPを探した。セシル・マクビー、ペーター・コヴァルト、バール・フィリップス、チャーリー・ヘイデン、バリー・ガイなど色々とターンテーブルにのせては悦に入る。

なかでもあたたかいのは、マラカイ・フェイヴァース『ナチュラル&スピリチュアル』(AECO、1977年)。アート・アンサンブル・オブ・シカゴ(AEC)のベーシストとして有名な故フェイヴァースだが、自身のリーダー作は少ない。完全ソロとなると、この1枚ではないだろうか。よくは知らないが、AECOというレーベルはAECの肝いりのようで、このレコードは、ドン・モイエ、ジョセフ・ジャーマンのリーダー作に続いて3枚目。この後にAECの作品がある。時期的には、ECMレーベルへの吹き込みを開始するころだ(円熟期と言っていいのかな)。

最初はバードコールのような笛、そしてマリンバの演奏。続くベースソロは馥郁たる香りが漂うようで、厚みがあって、そして暖かみがある。B面の後半は弓で弾いているが、最後の最後になって、また指でテンポよく弾き始め、唐突に終わる。何度聴いても魅力的で、タイトルは嘘をついていない。

ところで、船戸博史というベーシストは、「ふちがみとふなと」の人というイメージだったのだが、実はマラカイ・フェイヴァースの死後まもなく、『LOW FISH』(Off Note、2004年)というアルバムを出している。まさにその1曲目が「マラカイのひとりごと」というベースソロ演奏であり、彼に捧げたものだろうか。

他の曲では、主に、中尾勘二(サックスなど)、関島岳郎(チューバなど)という「中央線」な音楽家(というのも何だが)と組んでいる。この2人が入ると、篠田昌巳と組んだ「コンポステラ」でも、その後の「ストラーダ」でもそうだが、裏寂れた哀愁があってたまらない雰囲気がある。何でだろう。


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2 コメント

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Unknown (横井)
2009-04-18 19:18:09
わ~、懐かしい!マラカイにはリチュアルとかスピリチュアルという言葉がフィットする稀なミュージシャンだったと思います。AECOはAECのミュージシャン・レーベルといったほうがいいのかな。
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Unknown (Sightsong)
2009-04-19 00:32:00
横井さん
> AECのミュージシャン・レーベル
そういったものですか。この場合、個人性が前面に出ていて良いですね。
ところで、CD版では、「Spiritual」の前に「the」がついて、タイトルが『Natural & The Spiritual』となっているのを発見しました。何故だろう。
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