Sightsong

自縄自縛日記

廣木光一+吉野弘志@下北沢Lady Jane

2020-08-30 10:03:00 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のLady Jane(2020/8/29)。

Koichi Hiroki 廣木光一 (g)
Hiroshi Yoshino 吉野弘志 (b)

達人ふたりのデュオ。配信アルバム『Alvorada』のレコ発のような形だが、アルバムは5年前の録音であり、新曲も増えている。また収録曲の演奏の雰囲気もちょっと違っていておもしろい。

割と新しい「なんやらかやら」と「二丁目の春」を経て、ノエル・ローザの「祈りのかたち」。廣木さんと青木カナさんとの新譜『Raizes』にも収録されている曲だが、吉野さんも気に入って採譜したのだという。はじめの弓弾きの音色からすでにうたになっている。廣木さんの弱い軋みの中から輝くように転がり出てくる宝石。

ジョビンの「Luiza」。廣木さんの和音はときに引いてしまうほど素晴らしいのだが(たとえば、渋谷毅さんとのデュオ『Águas De Maio 五月の雨』の「Beyond the Flames」、2分過ぎの音)、ここでは、ベースソロのあとにそれをさらりと弾いてみせた。『Alvorada』ではベースソロに入る直前であり、それが記憶にあったためにまた新鮮だった。また別の和音も最後に2回、3回目は軽く弾いてふたりで笑う。気持ちの昂りを表現する「Luiza」の演奏としてみごと。

続いて、やはりジョビンの「O Boto」(アマゾンの小イルカのことだそうだ)。高めの音域での滑空するような弓弾きが絶品であり、ピチカートに移ると廣木さんが雲のように入った。テーマに入るとふたりともノるのがまた良い。

セカンドセットはミンガスの「Orange Was the Color of Her Dress」から。息を合わせて気持ち良く進むところも、廣木さんが敢えてもたつくところもにくい。なんだったかジョビンの曲を経て、シコ・ブアルキの「O Que Sera」、そして吉野さんのために廣木さんが作った「ベーシストの孤独」。ピチカートにギターが寄り添う。

ブアルキ「Samba De Orly」、そしてアンコールはカルトーラの「Alvorada」。ベースとギターとがじつに柔らかく絡み、間合いも音楽の機微もすべてわかっているようだ。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●廣木光一
HIROKI BAND@本八幡cooljojo(2020年)
廣木光一+ナスノミツル+芳垣安洋@本八幡cooljojo(2019年)
HIROKI BAND@南青山ZIMAGINE(2019年)
廣木光一+渋谷毅『Águas De Maio 五月の雨』(2018年)
廣木光一+永武幹子@cooljojo(2018年)
高田ひろ子+廣木光一@本八幡cooljojo(2017年)
安ヵ川大樹+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
Cooljojo Open記念Live~HIT(廣木光一トリオ)(JazzTokyo)(2016年)
廣木光一(HIT)@本八幡cooljojo(2016年)
廣木光一『Everything Shared』(2000年)
廣木光一『Tango Improvisado』(1995年)

●吉野弘志
吉野弘志+永武幹子@アケタの店(2020年)
吉野弘志@アケタの店(2019年)
西島芳 triogy@本八幡cooljojo(2018年)
西島芳 triogy@下北沢Apollo(2018年)
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
向島ゆり子『Right Here!!』(1995-96年)
ジョセフ・ジャーマン


マクイーン時田深山@下北沢Apollo

2020-08-30 09:01:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のApollo(2020/8/29)。暑くてまぶしい夏の昼間に暗くて涼しい地下の部屋。

Miyama McQueen-Tokita マクイーン時田深山 (十七絃箏)

深山さんはプラスチックを買わない・使わないということをライフスタイルに取り入れているのだが、やむなく出てしまったプラごみを使った即興を行った。これが、最初の「Shiroi Yoru」(『Sonobe』にも収録)における低音をやさしく撫でる感覚とはずいぶん変わり、驚きを与えてくれるものになった。左手で異音を出しつつ、プラや右手を使って弦に触れる。やがて両手で弾きはじめるのだが、しばしば左手で弦を押しては音を歪ませる。その結果として一音がとても強い。そしてある領域を基盤として左手で高低を行き来した。

セカンドセットはビョークの「The Anchor Song」。越生の山猫軒でリコーダーのライアン・ウィリアムスとデュオで演奏したことを話に聞いていて、興味津々だった。ビョークとは違う響きを持つ「I live be the ocean...」の呟きとともに箏の最低音を効果的に使っている。なんどか左手首で弦の振動を止め、まるで喉がうぐっと鳴るような雰囲気も出している。竜尾を撫でる音は声の艶。(深山さんがビョークの大ファンだと知ったのはついこの間のことである。)

続いて即興。高音から中音域を流れるように奏で、左手で2本の弦をつまみあげる。この動きによって、単の響きと複の響きとが混じりあって実に良いあんばいになった。ときに全音域を跳躍するようにしてジャズのバップも思わせるノリになった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●マクイーン時田深山
マクイーン時田深山@下北沢Apollo(2020年)
アンノウン・ミラーズ『Your Ten Is My Twelve』(-2020年)
『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(JazzTokyo)(2019年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)