Sightsong

自縄自縛日記

アンドリュー・ラム『The Hues of Destiny』

2016-12-31 13:00:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンドリュー・ラム『The Hues of Destiny』(CIMP、2008年)を聴く。

Andrew Lamb (ts, fl, pundjit)
Tom Abbs (b, tuba)
Warren Smith (ds) 

シカゴAACM出身、ニューヨークで活動中のアンドリュー・ラム。

そりゃ、他のとんでもない個性を爆発させたシカゴのサックス奏者たちに比べれば、はるかに「まとも」である。ということは、取り上げられることも少なかったことを意味する。

しかし、わたしはちょっと音色にくさみがあってエッジが丸いテナーが好きなのだ。ここでもサックストリオ(これもまた好みのフォーマット)で、そのくさみと丸みを発散させている。いや、いいなあ。

アンドリュー・ラム。アリ・ブラウン。ハナ・ジョン・テイラー。アーネスト・ドーキンス。もっとシカゴの渋いサックス奏者を聴こう。

●アンドリュー・ラム
アンドリュー・ラム+シェイナ・ダルバーガー@6BC Garden(2015年)
アンドリュー・ラム『Portrait in the Mist』(1994年)


渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン

2016-12-31 10:39:47 | アヴァンギャルド・ジャズ

今年3回目の渋谷毅オーケストラ(2016/12/30)。

Takeshi Shibuya 渋谷毅 (p, org)
Kosuke Mine 峰厚介 (ts)
Koichi Matsukaze 松風鉱一 (bs, as, fl)
Masayo Koketsu 纐纈雅代 (as)
Kenta Tsugami 津上研太 (ss, as)
Osamu Matsumoto 松本治 (tb)
Akihiro Ishiwatari 石渡明廣 (g)
Katsumasa Kamimura 上村勝正 (b)
Akira Sotoyama 外山明 (ds)
ゲスト:
Junichiro Ohkuchi 大口純一郎 (p, org) 

何度観ても素晴らしいものは素晴らしい。いつも同じようで違う、違うようで同じ渋オケ。全員がためらうことなく剛速球を投げ込み続けることはいつも同じである。その凄さには笑えてしまう。ベース・川端民生、ドラムス・古澤良治郎時代からのわたしの最偏愛グループである。あの川端さんの奇怪なる手拍子のことを口走る人がいたら、それだけで握手したくなる。

ファーストセット。最近のステージではいつもそうだが、「Side Slip」(石渡)から。松風さんのバリトンと渋谷さんのオルガンの重なり合いにぞくりとする。次に「Ballad」(石渡)、「Three Views Of A Secret」(ジャコ・パストリアス)では津上さんの透き通るソプラノがいい。そして「Chelsea Bridge」(ビリー・ストレイホーン)、「Brother」(林)。

セカンドセット。渋谷さんのコルグのオルガンをなぜピアノの上から横に動かすのだろうと思っていたら、なんとゲストとして大口純一郎さんが登場した。大口さんは、最初の「もはやちがう町」(石渡)ではピアノを弾き、ちょっと違う風が渋オケに吹き込まれたなと面白く思っていたのだが、次の曲「Reactionary Tango」(カーラ・ブレイ)では、ピアノを渋谷さんが弾き、大口さんがオルガンの前に座って一休みしているはずが、大口さんはオルガンをいじくりはじめ、ついに愉しそうに弾き始めた。これがなかなか過激で、同時に、渋谷さんのオルガンはやはり渋谷毅サウンドなのだなということが逆に実感できた。松風さんのフルートも素晴らしかった。

次にディキシーの「Jazz Me Blues」(ここで大口さんは去った)、「Soon I Will Be Done With The Trouble Of The World」(カーラ・ブレイ)。「Aita's Country Life」(松風)では、松風さんの長いアルトソロ。あのこれ見よがしでない感じが良いのだ。そして「New Hymn」(カーラ・ブレイ)、最後に渋谷さんのソロで「Lotus Blossom」(ビリー・ストレイホーン)。

今回は林栄一の替わりに纐纈雅代さん。音がみちみちに詰まったアルトを披露してくれて、その出来が毎回表情にあらわれていたようで、それも愉しかった。

●渋谷毅
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅@裏窓(2016年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
渋谷毅+津上研太@ディスクユニオン(2011年)
渋谷毅+川端民生『蝶々在中』
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
渋谷毅のソロピアノ2枚
見上げてごらん夜の星を
浅川マキ+渋谷毅『ちょっと長い関係のブルース』(1985年)


ヘンリー・グライムス『Solo』

2016-12-30 10:53:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

ヘンリー・グライムス『Solo』(ILK Music、2008年)を聴く。

Henry Grimes (b, vln)

なんとソロでみっちり2枚組。

ヴァイオリンも弾いてはいるが、やはり白眉はコントラバスのピチカートである(特に、1枚目)。もう、恐竜が歩くときの地響きなのだ。これを聴いている部屋もびりびりと震え、携帯の着信のヴァイブもなんもわかったものではない。これぞヘンリー・グライムス。

これが録音された前年の2007年に、「KAIBUTSU LIVEs!」と銘打たれたライヴにおいてグライムスを観たときも、低音が脳を直撃した。このときの演奏の音源はしっかり残されているそうであり、ぜひCDとして出してほしいと思う。

●ヘンリー・グライムス
「KAIBUTSU LIVEs!」をエルマリート90mmで撮る(2007年)
US FREE 『Fish Stories』(2006年)
ヘンリー・グライムス『Live at the Kerava Jazz Festival』(2004年)
マーク・リボーとジョルジォ・ガスリーニのアルバート・アイラー集(1990、2004年)
スティーヴ・レイシー『School Days』(1960/63年)


2016年の「このCD・このライヴ/コンサート」

2016-12-30 09:12:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

「JazzTokyo」の「このCD・このライヴ/コンサート」において、以下を挙げさせていただきました。

●このライブ/このコンサート2016(海外アーティスト)

『エヴァン・パーカー、高橋悠治』

●このライブ/このコンサート2016(国内アーティスト)

『白石民夫、新宿西口カリヨン橋』

●このCD2016(海外編)

『Silva Rasmussen Solberg / Free Electric Band』

●このCD2016(国内編)

心が千々に乱れて寄稿せず。

●参照
2015年の「このCD・このライヴ/コンサート」


富樫雅彦『Speed and Space』

2016-12-29 12:12:47 | アヴァンギャルド・ジャズ

富樫雅彦『Speed and Space』(Union Records、1969年)を聴く。アナログ盤である。

Masahiko Togashi 富樫雅彦 (ds, vib, perc)
Masahiko Sato 佐藤允彦 (p, perc)
Mototeru Takagi 高木元輝 (ts, bcl, corn pipe) 
Yoshio Ikeda 池田芳夫 (b) 

本盤は1969年11月22日の録音であり、同年の5月23日には、やはり富樫雅彦カルテット(富樫、高木、高柳、吉沢)によって『We Now Create』が、そして12月19日には富樫・高木デュオによって足立正生の映画『略称・連続射殺魔』の音楽が吹き込まれ、のちに編集されて『Isolation』が出されている。また、1975年には、メンバーを少し変えて、『風の遺した物語』が出されている。

もとより『We Now Create』とはメンバーの大きな違いもありサウンドの質も異なる(実は確かめようとしてCDが行方不明)。また、『Isolation』については、故・副島輝人氏が「即興演奏の極限に挑んだもので、フリージャズの頂点の一つ」としている(『日本フリージャズ史』)のではあるが、本盤はそれを突破力で凌駕するのではないか。もっとも、それは本盤をアナログで聴いているためかもしれない。

1970年に富樫が刺され、下半身不随になる直前のプレイである。ここでは当然バスドラムも使っていて、後年に研ぎ澄まされてゆく繊細・正確・高速なパルスと、エルヴィン・ジョーンズも思わせる大きなノリ・うねりのパルスとが共存しており、文字通り、圧倒される。

高木元輝のテナーやバスクラは、いかにマージナルなところを突破するかに挑戦し続けているようだ。そして佐藤允彦のピアノは、ガラスが美しく壊れるところを思わせるものであり素晴らしい。ソロで入っていく旋律には、のちに富樫、ゲイリー・ピーコックとのトリオで吹き込んだ『Wave』を思わせるところもある。

●富樫雅彦
富樫雅彦が亡くなった(2007年)
『富樫雅彦 スティーヴ・レイシー 高橋悠治』(2000年)
富樫雅彦+三宅榛名+高橋悠治『Live 1989』(1989年)
内田修ジャズコレクション『高柳昌行』(1981-91年)
富樫雅彦『セッション・イン・パリ VOL. 1 / 2』(1979年)
富樫雅彦『かなたからの声』(1978年)
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)
菊地雅章クインテット『ヘアピン・サーカス』(1972年)
菊地雅章+エルヴィン・ジョーンズ『Hollow Out』(1972年)
小川紳介『1000年刻みの日時計-牧野村物語』(1968年)
『銀巴里セッション 1963年6月26日深夜』(1963年)

●高木元輝
高木元輝の最後の歌(2000年)
2000年4月21日、高木元輝+不破大輔+小山彰太(2000年)
高木元輝『不屈の民』(1996年)
1984年12月8日、高木元輝+ダニー・デイヴィス+大沼志朗(1984年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(1976年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『新海』、高木元輝+加古隆『パリ日本館コンサート』(1976年、74年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)

豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(1971年、75年)


河合拓始+木村由@神保町試聴室

2016-12-28 23:23:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

神保町試聴室にて、河合拓始と木村由との共演(2016/12/28)。

Takuji Kawai 河合拓始 (p, melodica)
Yu Kimura 木村由 (dance) 

ダンスの木村さんは、はじまりから、無表情な仮面をかぶった。静寂のなかでのその顔と佇まいを視た途端に、なぜだか意識が混濁した。半覚醒のなかで、何かの夢のように、静と動との振れ幅の大きい木村さんの表情なき貌と姿を、そのたびに探す。それにしても、なんて不思議な動きをするのだろう。

河合さんは、まず静の木村さんの世界に入って鍵盤ハーモニカを弾き、そして、奇妙な感情を呼び起こさせられるピアノを弾いた。激しくはあったが、やはりそれも夢の中の出来事のようだった。呑まれたような気分である。


齋藤徹『TRAVESSIA』

2016-12-27 22:35:53 | アヴァンギャルド・ジャズ

齋藤徹『TRAVESSIA』(Travessia、2016年)を聴く。

Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)

2016年7月8日、齋藤徹さんの還暦を記念して、コントラバスソロリサイタルが開かれた(齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム)。本盤はそのときの記録であり、撥ねる音、擦れる音、軋む音が、このホールにおける共鳴とともに閉じ込められている。

すぐに聴きたかったのだが、CDが完成してすぐにわたしが入院することになってしまい、イヤフォンではなくスピーカーでしっかり鳴らそうと思い、敢えて病室には持ち込まなかった。明確な理由ではないのだが、コントラバスの筐体の中とホールの中で響いた音であれば、耳の中でのみ響かせるにとどめないほうがよいと思った。

韓国シャーマン音楽、タンゴ、ショーロ、バッハ、ミンガス。即興。バール・フィリップス。ピアソラ。テオ・アンゲロプロス。テツさんが遭遇し、追及してきたものの断面がここにある。ただし、「エッセンス」や「ベスト集成」などというものではなく、あくまでそのときの「一断面」に違いない。何度聴いても音楽が再現としてではなくその場で創出される。

バッハの無伴奏チェロ組曲第六番の中に、テツさんは、韓国シャーマン音楽との重なりを見出したのだという。リサイタルに先立つ、3月25日の横濱エアジンにおける演奏でのことである。ところが、この日、テツさんは演奏の途中で突然「破綻した!」と叫び中断し、即興演奏に移行した。それが具体的に何だったのかわからない(他の人たちにもわからなかったと思う)。本盤には、その中断後の演奏が収められている。

ライナーノーツに、テツさんご自身が次のように書いている。すべてを過程として提示し、この先も過程が積み重ねられていく。それを意思として残してくれたわけであり、嬉しいことだった。

「この出来事にこそ、私の過去・現在・未来における最も大事なものがあるはずなのに、この部分は初めから不採用と決めていて、そんなことは解説にも触れないようにしようとしていたのです。歴史からの抹殺・ねつ造ですね。都合の良いように、良いところだけを選択しよう、という魂胆だったのです。」

帯の文章を書かせていただきました。

●齋藤徹
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミッシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミッシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン


川下直広@ナベサン

2016-12-27 07:04:35 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ゴールデン街のナベサンにて、川下直広ソロ(2016/12/23)。

Naohiro Kawashita 川下直広 (ts, harmonica)

1. All of Me

2. Autumn Leaves

3. Que Sera, Sera

4. 女の意地~アカシアの雨がやむとき

5. 星の流れに

6. 生活の柄~Nobody Knows the Trouble I've Seen

7. Doxy

8. 津軽海峡冬景色~天城越え

9. 夢は夜ひらく

10. St. Thomas

11. 石狩挽歌

12. Christmas Songs

13. My One and Only Love

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●川下直広
川下直広カルテット@なってるハウス(2016年)
渡辺勝+川下直広@なってるハウス(2015年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(1988年)
『RAdIO』(1996, 99年)


板橋文夫@東京琉球館

2016-12-26 07:56:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

駒込の東京琉球館に足を運ぶ。ここに来るのも久しぶりだが(今年来たっけ?)、板橋文夫さんをここで観るとなると、移転前の「どぅたっち」で李政美さんとのデュオ以来だ(板橋文夫+李政美@どぅたっち、2012年)。そのときは、板橋さんの剛腕によって鍵盤がひとつ眼前を飛翔するところを目にしたのだった。もっとも、板橋文夫『みるくゆ』のレビューを書くにあたって、店主の島袋さんに「さとうきび畑」の沖縄における受容についてあれこれと相談したりもした。

Fumio Itabashi 板橋文夫 (p)
Keisuke Ota 太田恵資 (vln)

十余人が座る狭いスペースで、板橋さんはニコヤカに座り、雷のような激烈さと抒情とが共存するピアノを弾いた。太田さんはその展開と並走し、サウンドの彩りをさまざまに加えた。

第1部は、クリスマスであるから「Memories of Christmas」、ブラジルへの旅をモチーフにした「サンパウロ、サンパウロ」、「たそがれのリオ」、次に「どうにかなるんべー」。

第2部は、こんど来日するエルメート・パスコアールの曲を5曲。壁にはエルメート直筆の楽譜(!)が貼られた。板橋さんはエルメートのことを何度も「天才」だと言った。しかし演奏となると、エルメートの色を板橋文夫の色で塗ってゆくのが意外で面白いものだった。「ぶっつけ本番」だということだったが、ぜひ録音してほしいものだ。そして板橋さんの「For You」。

ちょうど板橋さんのお姉さんもいらっしゃっていて、誕生日を迎えたばかりということで「Happy Birthday」、それから「Take the A Train」をブギウギ風に激しく攻めて締めた。わたしも差し入れのケーキをいただいた。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●板橋文夫
森山威男@新宿ピットイン(2016年)
板橋文夫+纐纈雅代+レオナ@Lady Jane(2016年)
板橋文夫『みるくゆ』(2015年)
森山・板橋クインテット『STRAIGHTEDGE』(2014年)
寺田町+板橋文夫+瀬尾高志『Dum Spiro Spero』(2014年)
板橋文夫+李政美@どぅたっち(2012年)
立花秀輝『Unlimited Standard』(2011年)
峰厚介『Plays Standards』(2008年)

板橋文夫『ダンシング東門』、『わたらせ』(2005、1981年)
板橋文夫『うちちゅーめー お月さま』(1997年)
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』(1980、1990年)


『生活向上委員会ライブ・イン・益田』

2016-12-25 13:46:47 | アヴァンギャルド・ジャズ

『生活向上委員会ライブ・イン・益田』(1976年、Aketa's Disk)を聴く。

Koichi Matsukaze 松風鉱一 (as)
Shoji Aketagawa 明田川荘之 (p) 
Koichi Yamazaki 山崎弘一 (b) 
Takashi Miyasaka 宮坂高史 (ds) 

ずいぶん欲しかったアナログ盤を手に入れた。いいだろう。

原田依幸・梅津和時の両氏がアメリカに発ったあと、「生活向上委員会」の名義は松風鉱一さんが引き継いだことになっている。もっとも、原田さんが書いたところによれば、「良い名前がないから貸してくれよと松風が言うんで、いいよ。と普通そんなことしないですけどね(笑)」だという。

松風さんのリーダー作『At The Room 427』が1975年、『Earth Mother』が78年であり、その間の演奏である。そのあとは、森山威男『Smile』が80年、『Good Nature』が81年、『サックス・ワークショップ』が82年。『Earth Mother』はいまもレア盤であり、松風さんが講師を務めるホット・ミュージック・スクールの待合室でも、こないだヤフオクにうん万で出ていましたよ、えっ俺は持ってないんじゃないかな(笑)、なんて話題があったのを覚えている。わたしも欲しいが縁がない。

なんにしても29歳の松風さんである。本盤の裏面には「精神分裂ニワトリ・アルト」と書いてあり(何か当時のジャズ誌で「チキン」とか読んだこともある)、それはないだろうと思うが、確かにドルフィー的とも評価された飛躍するフレーズが満載であり、とても面白い。このときのスタイルについて訊いたことはないのだが、教えるときにもドルフィーのフレーズについても言及していたし、もちろん方法論的なものである。音色は艶やかというか、確かに嘴でついばむように尖がっている。松風さんはこのあと、ささくれたような独自の音色を押し出していく。

「天才アケタ」はというと、既にあの情緒あふれるピアノスタイルである。オリジナル曲「斎(いんば)」だけでなく、ジャズスタンダード「Impressions」、「I Love You」でも、もろにアケタ色である。面白いな。

●松風鉱一
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』 
反対側の新宿ピットイン
くにおんジャズ、鳥飼否宇『密林』

●明田川荘之
明田川荘之『ライヴ・イン・函館「あうん堂ホール」』(2013年)
中央線ジャズ

●山崎弘一
本多滋世@阿佐ヶ谷マンハッタン(2016年)
宮野裕司+中牟礼貞則+山崎弘一+本多滋世@小岩フルハウス(2013年) 

●生活向上委員会
生活向上委員会2016+ドン・モイエ@座・高円寺2(2016年)
生活向上委員会大管弦楽団『This Is Music Is This?』(1979年)
『生活向上委員会ニューヨーク支部』(1975年) 


中牟礼貞則『Remembrance』

2016-12-25 13:01:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

中牟礼貞則『Remembrance』(Zest、2000年)を聴く。

Sadanori Nakamure 中牟礼貞則 (g)
Satoshi Kosugi 小杉敏 (b)
Yoshihito Etoh 江藤良人 (ds) 

なんの仕掛けもないシンプルなギタートリオながら、ずっと聴いていられる素敵な盤である。

なにしろ、ジャズ界のスーパーレジェンド・中牟礼貞則である。一音一音が粒だっていて、丹念に磨いたように丸くて、ポロポローンと弾いたときの快感が半端なく気持ち良い。「Monk's Mood」や「Summer Night」、「When I Fall in Love」なんかのスタンダードに加え、ミシェル・ペトルチアーニの「Morning Blues」(『Power of Three』においてジム・ホールがギターを弾いている)が嬉しい。

また中牟礼さんを観に行かなければ。

●中牟礼貞則
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
宮野裕司+中牟礼貞則+山崎弘一+本多滋世@小岩フルハウス(2013年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)
『銀巴里セッション 1963年6月26日深夜』(1963年)


ジョン・ブッチャー+トマス・レーン+マシュー・シップ『Tangle』

2016-12-24 09:13:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョン・ブッチャー+トマス・レーン+マシュー・シップ『Tangle』(FATAKA、2014年)を聴く。

John Butcher (sax, feedback)
Thomas Lehn (analogue synthesizer)
Matther Shipp (p)

シップのイントロに加えて鼓動のようなサウンド、そしてブッチャーがサックスを吹き始めるのだが、驚くほど「ジャズ」である。まるでサム・リヴァースのようである。これは演奏全体を通じてそのようであって、もちろんブッチャーは多彩な音を提示するものの、またしても「ジャズ」的な音に回帰してくる。

ブッチャーの特質は、演奏者やサウンドに合わせて自身を変態させるカメレオンのようなところにあるのだと思っている。とすれば、この演奏はシップが主導権を握っているわけである。

シップも過激ではあっても「ジャズ」であり、随時、自分のフィールドに持ち込む手腕はさすがである。DJスプーキーとの共演映像においても、「フリージャズ」の人・シップは、力技で最後は自身のサウンドとしていた。

それにしても見事な化学変化である。これがCafe OTOでライヴとして繰り広げられたとは。

●ジョン・ブッチャー
ジョン・ブッチャー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2015年)
ジョン・ブッチャー+ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ『So Beautiful, It Starts to Rain』(2015年)
ロードリ・デイヴィス+ジョン・ブッチャー『Routing Lynn』
(2014年)
ジョン・ブッチャー@横浜エアジン(2013年)
ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド(2010年)
ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(2010年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
ジョン・ブッチャー『The Geometry of Sentiment』(2007年)
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』(2000年)
ジョン・ラッセル+フィル・デュラン+ジョン・ブッチャー『Conceits』(1987、92年)

●マシュー・シップ
マット・ウォレリアン+マシュー・シップ+ハミッド・ドレイク(Jungle)『Live at Okuden』(2012年)
ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年) 


トニーニョ・フェハグッチ『a gata café』

2016-12-20 14:49:15 | 中南米

トニーニョ・フェハグッチ『a gata café』(Boranda、2016年)を聴く。

Toninho Ferragutti (accordion)
Cássio Ferreira (sax)
Cléber Almeida (ds)
Thiago Espírito Santo (b)
Vinícius Gomes (g)

フェハグッチはブラジルのアコーディオン奏者。

まったくよどみのない指と蛇腹の動きで、少し甘いようなアコーディオンの音色が、同じ音域にあるサックスの音色と、実に気持ちよく絡んでいる。こういう音楽を聴くと、身体も心も弛緩して、街角の石畳やカフェや陽だまりなんかをイメージしてしまう。人いきれの音楽でもあり、都会の音楽でもあるんだな。

タイトル曲は「猫のコーヒー」という意味だそうで、それはジャコウネコのウンチを通過させたコピ・ルアックのことなどではなく、猫がゆるりと自分の場所を決め込んだりするカフェで飲むコーヒーのことかな。2曲目の「Egberto」は、エグベルト・ジスモンチに捧げた曲だろう。ああ旅に出たい。


宮沢昭『木曽』

2016-12-20 10:50:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

宮沢昭『木曽』(Victor、1970年)を聴く。

Akira Miyazawa 宮沢昭 (ts, fl)
Masahiko Sato 佐藤允彦 (p)
Yasuo Arakawa 荒川康男 (b)
Takeo Moriyama 森山威男 (ds) 

メンバーの中で意外な存在は森山威男。山下洋輔、中村誠一との第1期山下洋輔トリオで激しくドラムスを叩いていたころである。青木和富氏の解説によると、とはいえまだまだ無名であり、レコードにも「森川」と印刷され、また、起用には山下トリオを買っていた油井正一氏の後押しもあったのだろうということである。

聴いてみると、森山さんのドラムスは予想を遥かに上回って凄まじい。というか、ずっと叩きまくりである。1曲目の「木曽」では、テナーのカデンツァのあとにベースとピアノとが入ってきて、いよいよドラムスが嵐を呼び始める。2曲目の「浅間」では、佐藤允彦の煌びやかなピアノとともに暴れる。3曲目の「白馬」は宮沢昭の太いフルートではじまり、ちょっと抑えるのかなと思いきや、やはり激しいドラムソロ。そして4曲目の「飛騨」でも爆走。

もちろん宮沢昭のテナーは闊達で、勢いにも、音色の幅広さにも、あらためてやられてしまう。

知らなかった、こんなに異色で凄い盤だったのか・・・・・・。

●宮沢昭
宮澤昭『野百合』(1991年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)