久しぶりにデイヴィッド・マレイを聴きに、もっと久しぶりのブルーノート東京に足を運んだ(2013/7/22、セカンドセット)。
いつ以来だろう。1998年末に現在の場所に移転してからは、親しみやすさが急になくなった。トミー・フラナガン(ドラムスがルイス・ナッシュ、ゲストがジョニー・グリフィン、エルヴィン・ジョーンズが客席にいた)、ディー・ディー・ブリッジウォーターとミルト・ジャクソン。ああ、マッコイ・タイナーと一緒に来たチコ・フリーマンも観た。それでも、もう10年以上は来ていない筈である。
何しろマレイ、それにメイシー・グレイというのだから、仕方がない。
David Murray (ts)
Macy Gray (vo)
Lakecia Benjamin (as), Roman Filiu (as, fl)
Abdoulaye Ndiaye (ts), James Stewart (ts, fl)
Alex Harding (bs)
Alvin Walker (tb), Terry Greene (tb), Darius Jones (tb)
Shareef Clayton (tp), James Zollar (tp), Ravi Best(tp)
Mingus Murray (g)
Jaribu Shahid (b)
Thornton Hudson (p, Hammond B3)
Nasheet Waits (ds)
ぞろぞろとビッグバンドを率いたマレイは、最初の3曲ほどは指揮に専念する。ソロイストはそれぞれ悪くない。
ロマン・フィリウのアルトサックスは練達な印象、女性のラケシア・ベンジャミンのアルトサックスには勢いがある。アブドゥライエ・ンディアイエのテナーサックスは低音を生かしたブルースで、これも悪くない。アレックス・ハーディングは、けれん味たっぷりの無伴奏ソロ客席を沸かせた。
金管陣はといえば、ジェイムス・ゾラーの工夫したトランペットのソロがよかった。隣のトランペットふたりが敬意を込めたような目で視ていた。また、シャリーフ・クレイトンの鋭いトランペットも素晴らしかった。トロンボーン陣は少し冴えなかったか、見せ場が少なかったか。
マレイの息子ミンガス・マレイは弱気そうな顔で立っていたが、ノッてきたときのギタープレイはさすが。
しかし、何といっても、目玉はメイシー・グレイである。2曲目、マレイの「ディーヴァ!」との紹介とともに、ラメ衣装で入ってきた。もっと小柄な女性を想像していたが、とんでもない迫力である。ハスキーヴォイスも、可愛いばかりでなく客席にビンビンと響く大迫力なのだった。幸運にもかぶりつきの席で、嬉しさに震えてしまう。
一方、マレイは、4曲目からようやくテナーサックスを吹いた。やはり、違うのである。得意の高音のフラジオからブルースに戻ってくるときなどは「待ってました」と言いたくなるマレイの音世界。ソロの間、身体中を、浮き立つようなぞわぞわした感覚が駆け抜ける。バスクラも吹いてほしかったな。
セットの白眉は、ノリノリの曲よりも、スタンダード「Solitude」。ジャリブ・シャヒドのベースとマレイとのデュオではじめ、やがてグレイが歌い出す。「・・・ filled with despair / Nobody could be so sad」なんて繰り返されるとどうかなってしまうぞ。そして歌伴のマレイもいい。
終盤、グレイは「Wake Up」で客を立たせ、「Red Car」では大声で歌わせた。こういう盛り上げ方はあまり好きでもないのだが、楽しかった。大満足である。最後は「I Try」で締めた。
グレイはいちどの化粧直しのあと、真っ赤な長い羽根を首や手に巻きつけて歌った。何枚か、ステージ上にひらひらと舞った。グレイが立ち去った通路にも1枚落ちていて、つい拾ってしまった。馬鹿みたいだが永久保存版。
早速、原田和典氏によるこの日のライヴレポートがアップされていた。>> リンク
●参照
○デイヴィッド・マレイ『Live in Berlin』
○デイヴィッド・マレイ『Saxophone Man』
○デイヴィッド・マレイのグレイトフル・デッド集
○マル・ウォルドロン最後の録音 デイヴィッド・マレイとのデュオ『Silence』
○マッコイ・タイナーのサックス・カルテット(デイヴィッド・マレイ『Special Quartet』)
○ワールド・サキソフォン・カルテット『Yes We Can』
○スティーヴィー・ワンダーとメイシー・グレイの『Talking Book』