Sightsong

自縄自縛日記

森山大道「NAGISA」、沢渡朔「Cigar - 三國連太郎」、「カメラとデザイン」、丸尾末広

2010-04-25 10:20:37 | 写真

所用で出かけるついでに、観たかった写真展に立ち寄った。

■森山大道「NAGISA」 @BLDギャラリー

森山大道渚ようこを1年間追った作品群だ。すべて銀塩のモノクロであり、いつものように粒子がざらついている。

かなり期待していたのだが、ここに焼きつけられた渚ようこは女性としてさほど魅力的ではない。新宿や大阪の雑踏で見知らぬ人を隠し撮りした森山のスナップと同じアウラが漂っているのだ。崇拝の対象として撮られた女性像でないことは確かなように思える。おそらく、森山大道にとっては、すべてが滅びゆくモノなのだろう。

勿論、目を見開かされる作品は多い。渋谷の「青い部屋」だろうか、渚ようこがトイレに座り、背後には戸川昌子のポスターがある。熱海なのか伊東なのか、あの辺りの海岸で撮られたやさぐれ写真も良い。

■沢渡朔「Cigar - 三國連太郎」 @JICC PHOTO SALON

女性ばかりを撮ってきた沢渡朔による異色の作品群。すべて同名の写真集(パルコ出版、1998年)に収められている。オリジナルプリントを観ることができる嬉しい機会だった。

やさぐれた風景を撮ってきた森山大道の女性写真と、女性ばかりを撮ってきた沢渡朔の男性写真。比べてみるとその違いは強烈だ。ここに登場する三國は、老いた男性のフェロモンをムンムンと発散しており、本質的に女性と変わらないのだろう、少なくとも写真家にとっては。廃墟でワインを飲む三國、海辺を散策する三國、歌舞伎町を歩く三國、中華料理屋に座る三國、ペンタックスのAuto 110を楽しそうに使う三國。こんな風に近い人間を撮ることができたならどんなにいいだろう。

帰宅して写真集と比べてみると、写真集の印刷は優れているもののコントラストが強すぎるきらいがある。船尾に佇む三國の顔は黒くつぶれているし、顔の前を半分弱覆うスクリーンは向こうが透けているはずだが、写真集では真っ白だ。


『Cigar』(パルコ出版、1998年)

撮影に利用したカメラも展示してあって、それはペンタックスの6×7とMZ-5だった。しかし、『季刊クラシックカメラ No.8』(双葉社、2000年)ではペンタックスLXだと本人が語っている。また『ナチュラル・グロウ No.34』(ソシム、2004年)では、最初「カチンときちんと撮っておきたいみたいな気持ち」があって6×7で入ったものの、途中から35に変えて、28mmと標準で「バンバンバンバン」撮っていたのだとある。そんなわけでLX説を採りたいがどうか。

■「カメラとデザイン」、直井浩明氏の手作りカメラ @日本カメラ博物館

ジュージアーロ、ローウィ―、ポルシェ、亀倉などデザイナー別にカメラを展示している。一眼レフカメラ創世記の「ズノー」なんて、現物を初めて眼にした。しかも元箱付き、中古屋に出たらはたしていくらの値が付くことか。

ナオイカメラサービスで修理名人として名を馳せた直井浩明氏による手作りカメラの展示コーナーもあった。ふたつのカメラをくっつけたステレオカメラが有名だが、たとえばミノルタA2とミノルタコードを組み合わせ、レンズをフジノン45mmF1.9(記憶では)とした35mm二眼レフカメラなどという素晴らしいカメラがあった。欲しい!

昔、このミノルタA2が壊れて自分で修理しそこね、ナオイカメラサービスに持ち込んだことがある。コダック・シグネット35やアイレスIII-Lといったカメラのシャッターも修理してもらったこともある。いまはシグネット35しか手元にないが、大事に使わなければならない。

■丸尾末広展 @スパンアートギャラリー

変態趣味、エログロ、少年少女、猟奇。キーワードで言ってしまえばどうしようもないのだが、まあ相変わらずその世界である。たまたま通りがかったギャラリーで展示していたので覗いただけのことだ。自分にとって丸尾末広は、ジョン・ゾーン『Naked City』(1990年)の裏ジャケットに使われていた印象が大きく、いかにも日本のそのような文化のマニアであるゾーンのやりそうなことだ。

会場には、日野日出志(!)と一緒に作った豆本2冊セットなどというものもあった。乱歩世界のサイン入りポスターには触手が動いたが、自宅に持ち帰ると張り倒されること必至なので、やめた。


ポストカードはまだまとも

●参照
森山大道「Light & Shadow 光と影」
森山大道「レトロスペクティヴ1965-2005」、「ハワイ
森山大道「SOLITUDE DE L'OEIL 眼の孤独」
渚ようこ『あなたにあげる歌謡曲』
沢渡朔「Kinky」
沢渡朔「Kinky」と「昭和」(伊佐山ひろ子)
沢渡朔「シビラの四季」(真行寺君枝)
沢渡朔Cigar』(三國連太郎)


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