Sightsong

自縄自縛日記

往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』

2009-09-23 21:58:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

齋藤徹による、じわじわと発展・成長させていたプロジェクト「オンバク・ヒタム」(マレー語で黒潮の意)の完成版が、先週披露された。足を運ぶつもりだったのだが、仕事で忙殺されて結局行けず仕舞。最近そういうことが多くて、ちょっと悲しい。

そんなわけで、「オンバク・ヒタム」の一部、「琉球弧編」が演奏されたCDを悔し紛れに聴いている。実は、齋藤徹(ベース)、林栄一(アルトサックス)、小山彰太(ドラムス)による「往来トリオ」が2枚目に発表した『雲は行く』(おーらいレコード、2000年)に収録されているのを知ったのは最近のことで、中古CD屋ではじめて手に取って見つけたのだった。さっさと買っておけばよかった。

オンバク・ヒタム/琉球弧編」は、ゆったりとした雰囲気で始まり、琉球旋律も使いつつ、大きな流れになっていく。熱帯の海から、人びとの生活やリズムを乗せて、琉球弧を経て、北上していくイメージがそのまま重なる。何となく元気が湧いてくる演奏なのだ。

次の「インヴィテイション」は、沖縄県読谷村の城跡で上演予定であったという(座喜味城か)。夜たいまつを持つ男子小学生のコーラスを想定して作ったという、そのイメージとともに聴くと、暖かい風が吹いてくるようで楽しい。

前年に発表された往来トリオの第1作、『往来』(おーらいレコード、1999年)はちょっと衝撃的だった。このメンバーで、スタンダードを演奏するということが、である。

最初の「往来」は、大勢の声明とともに曲が盛り上がる。そこから、齋藤徹と林栄一とのデュオ「Lotus Blossom」、林栄一のサックスソロ「My One And Only Love」、齋藤徹のベースソロ「Goodbye Pork Pie Hat」などが、演奏される。誰でも聴いたことのある「インディオのわらべうた」はトリオの演奏だが、この感覚は明らかにアジアの祝祭だ。それがなぜなのかよくわからない。また、一風変わったベースのイントロから入り、小山彰太の珍しいハーモニカとのデュオになる「エドガーの日常」は、一転ブルージーで嬉しい。最後は「Amazing Grace」で締められる。

このCDは発売直後から持っているが、何度聴いても聴き所が出てくる、完成度の高い盤だと思う。『往来』、『雲は行く』以来、たぶん作品は出ていない。何かまたやってほしいところだ。

(追記1)・・・・・・と思っていたら、おーらいレコードから、もう1枚『櫻』というCDが出ていて、既に廃盤になっている(>> リンク)。しかも、『雲は行く』と曲が重なっており、録音場所(アケタの店)も録音日も同じだが、一部『雲は行く』に含まれない新宿ピットインでのセッションが入っている模様だ。どういうことだろう。

(追記2)齋藤徹さんによると、やはりジャズのサックス・トリオという形態での発表は、今後は難しいようだ。私信ゆえ詳しくは書かないが、往来トリオは「ジャズの実験」であった。とにかく今は、「オンバク・ヒタム」の公演記録のDVD化に期待するのみである。

●参照
齋藤徹「オンバク・ヒタム」(黒潮)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、イザイホーを利用した池澤夏樹『眠る女』、八重山で演奏された齋藤徹『パナリ』
ユーラシアン・エコーズ、金石出
ミッシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm
ジョゼフ・ジャーマン『ポエム・ソング』


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