Sightsong

自縄自縛日記

松丸契『THINKKAISM』

2019-09-29 09:27:24 | アヴァンギャルド・ジャズ

松丸契『THINKKAISM』(Somethin'Cool、2019年)を聴く。

Kei Matsumaru 松丸契 (as, ss)
Hideaki Kanazawa 金澤英明 (b)
Akira Ishii 石井彰 (p, rhodes)
Shun Ishiwaka 石若駿 (ds, kalimba, perc)
Naoki Takahashi 高橋直希 (ds)

コルトレーンの「Welcome」のカリンバに続く濁らせたサックスにまず耳を捉えられる。「Ichiro」においてはピアノとのユニゾンから次第に発展する面白さがある。タイトル曲ではツインドラムスがどしゃめしゃに叩き、ピアノとベースが別の時間スケールで暴れる上でのアルトが勇猛に飛翔し素晴らしい。

「Sail」では鈴とピアノの和音、これに静かに整合させるようにローンチするアルト。輝くピアノと並走する金澤さんの粘るベースも存在感がある。「April Fools」は変わった曲だが、ゆったりと進むアルトと絡むピアノ、ここにおもむろに入って疾走するドラムスに動悸がする。一転して「Dad Milkman」はドラムスが主導し、カリプソ風かと思いきや奇妙なコードでサックスがうねる。キーボードが楽園的で濁ってもいてとてもいい。「Parsley Sparsely」ではリズムを壊すアルト、曲の中の権力構造がひっくり返っている。ここに遊ぶように共演者が策動を仕掛ける。パセリを散らした創作料理風。

ゆったりしたコントラバスから始まる「View Figure 1a」、ソプラノでの関わり方が面白く、急に音風景が変わる。へんな時間の進行だが、その間隙をピアノとドラムスが突いてきて時間進行を奪おうとするようだ。そうか、コードとメロディとが別々のスケールなのか(ライナーノーツ)。

「Star Field」ではキーボードがエネルギーの底を持ち上げ(カッコいい)、ドラムスが断続的にそれを跳躍させる。ソプラノは哄笑するように遊泳する。最後の「A Thousand Blushes」における尋常でないブラシは水をこぼすと一瞬で蒸発する鉄板のようで、その上でゆっくりと懐かしい物語をうたうソプラノ、ピアノ、ベース。

聴けば聴くほどユニークであり、それが現代ジャズのまん中に降りてきた感がある。

●松丸契
纐纈雅代+松丸契+落合康介+林頼我@荻窪ベルベットサン(2019年)
m°Fe-y@中野Sweet Rain(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)


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