Sightsong

自縄自縛日記

マイク・ディルーボ『Threshold』

2015-08-31 21:27:00 | アヴァンギャルド・ジャズ

マイク・ディルーボ『Threshold』(Ksanti Records、2013年)を聴く。

Mike Dirubbo (as)
Josh Evans (tp)
Brian Charette (p)
Ugonna Okegwo (b)
Rudy Royston (ds)

かれもNY「Smalls」に集う人か。ジャッキー・マクリーンに憧れ、師事しただけのことはあって、思い詰めたようなアルトの音色が気持ちいい。

音色だけではなく、独自路線を歩み始めたころの1960年代の熱いマクリーン・サウンド。ひょっとしたらマクリーンの後継者は、実の息子ルネ・マクリーンでも、エイブラハム・バートンやヴィンセント・ハーリングでもなく、ディルーボかもしれないと思えてくる。ウゴンナ・オケーゴ、ジョシュ・エヴァンスもハマっている。何しろハードバップを己の音楽として突き進んでいるようで、それだけで握手したくなるというものである。

●参照
フランク・レイシー@Smalls(2014年)(ジョシュ・エヴァンス参加)
フランク・レイシー『Live at Smalls』(2012年)(ジョシュ・エヴァンス参加)
トム・ハレル@Cotton Club(2015年)(ウゴンナ・オケーゴ参加)
トム・ハレル@Village Vanguard(2015年)(ウゴンナ・オケーゴ参加)
トム・ハレル『Trip』(2014年)(ウゴンナ・オケーゴ参加)
トム・ハレル『Colors of a Dream』(2013年)(ウゴンナ・オケーゴ参加)


エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』

2015-08-30 22:46:20 | アヴァンギャルド・ジャズ

エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(psi records、2010年)を聴く。

Evan Parker (ss, ts)
Okkyung Lee (cello)
Peter Evans (tp, piccolo tp)

明るい空間、環境音が侵入してくる空間では成立しえないであろう、3人の息遣いの交感。期待通りなのか、期待が良いほうに裏切られたのか、悪いほうに裏切られたのかさえよくわからない。この3人が同じ時空間を共有していたのだな、という妙な感慨だけを抱いてしまう。

そして3方向からの音を聴いていると動悸動悸する。発散と集中、連続と分断、響きの創出と拒否、過去の想起と拒否といったものがそのたびに対になってあらわれるようで。

●参照
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)(エヴァン・パーカー参加)
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)(エヴァン・パーカー参加)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)(エヴァン・パーカー参加)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)(エヴァン・パーカー参加)
エヴァン・パーカー+ネッド・ローゼンバーグ『Monkey Puzzle』(1997年)
エヴァン・パーカー+吉沢元治『Two Chaps』(1996年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)(エヴァン・パーカー参加)
『Rocket Science』(2012年)(エヴァン・パーカー、ピーター・エヴァンス参加)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)(エヴァン・パーカー登場)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)(エヴァン・パーカー参加)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)(エヴァン・パーカー登場)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981-98年)(エヴァン・パーカー参加)
オッキュン・リーのTzadik盤2枚(2005、11年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年)


ライアン・ケベール&カタルシス『Into the Zone』

2015-08-30 08:45:10 | アヴァンギャルド・ジャズ

ライアン・ケベール&カタルシス『Into the Zone』(Greenleaf Music、2014年)を聴く。

Ryan Keberle (tb, melodica)
Mike Rodriguez (tp)
Jorge Roeder (b, b fx)
Eric Doob (ds)
special guests:
Camila Meza (voice)
Scott Robinson (ts)

ホルヘ・ローダーのベースとエリック・ドゥーブのドラムスとが隙間をたっぷり空けて創り出すゆるやかな時空間があって、エッジが丸く暖かいエリック・ケベールのトロンボーンと、カミラ・メザの浮遊するようなヴォイスがステージ前に出てきては静かに去っていく。先鋭的にもポップス的にも聴くことができる音楽。

マリア・シュナイダー・オーケストラでのケベールにも注目して聴いてみたいところ。

●参照
ミゲル・ゼノン『Identities are Changeable』


テレンス・ブランチャード『Breathless』

2015-08-29 22:43:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

テレンス・ブランチャード『Breathless』(Blue Note、2015年)を聴く。

Terence Blanchard (tp)
Charles Altura (g)
Fabian Almazan (p, syn)
Donald Ramsey (b)
Oscar Seaton (ds)
PJ Morton (vo)
JRei Oliver (Background vo, Spoken word)
Donald Ramsey (Background vo)

何しろ前作の『Magnetic』が鬼のようにカッチョ良く、昔のブランチャードの記憶を刷新してくれるものだった。そして、さらにこの新作は輪をかけてカッチョ良い。テクノロジーとストリート感でバキバキに固めまくった音楽である。

そんなわけで、もうどうでもいい気になっている。だってそうでしょう。「時代と寝る」音楽なんて、それがカッチョ良ければ良いほど、時の流れとともに風化していくに違いないのだ。(と断言してみる。)

●参照
テレンス・ブランチャード『Magnetic』


ミゲル・ゼノン『Identities are Changeable』

2015-08-29 20:11:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

ミゲル・ゼノン『Identities are Changeable』(Miel Music、2014年)を聴く。

Miguel Zenón (as)
Luis Perdomo (p)
Hans Glawischnig (b)
Henry Cole (ds)
Identities Big Band:
Will Vinson, Michael Thomas (as)
Samir Zarif, John Ellis (ts)
Chris Cheek (bs)
Mat Jodrel, Michael Rodriguez, Alex Norris, Jonathan Powell (tp)
Ryan Keberle, Alan Ferber, Tim Albright (tb)

ミゲル・ゼノンはプエルトリコ生まれ。ここでは、プエルトリコにルーツを持つNY在住者たちへのインタビューを行い、それを音楽の中に切り貼りするという試みを行っている。人の声や雑踏の音をサンプリングして都市の音楽を作り上げる方法は新しいものでもないのだが、ゼノン自身のアイデンティティを探る意思が直接的に出ていて、とても面白い。

1920年代以降、プエルトリコ人のNYへの移住が本格化し、最初はイースト・ハーレムやロウワー・イースト・サイドに、その後マンハッタン島の外に増えてゆき、いまでは約120万人にも及ぶという。この音楽のなかには、ピックアップされた声には、「最初の言葉は」、「スペイン語は、英語は」、「生まれは、育ちは」といった言葉がある。また、プエルトリカン二世・三世も自身のルーツや伝統文化を意識していることに、ゼノンはショックを受けたという。まさにタイトル通り、アイデンティティは単純に血や生まれだけで決まるものでなく、遷移し、二重にも三重にも持ちうるということを示し表現している。日本でもこの手法を使ってみてはどうかな。

ゼノンのアルトサックスは、M-BASEの流れを受け継ぐようなクールなものでもあり、だが、前面にそれを押し出すというより少し引いたような感覚と、強弱の付け方のうまさもあって、なんだかしっとりとしている。ビッグバンドの入れ方にもやや控えめな印象があって、聴いていてリラックスする。


澤地久枝『14歳 満州開拓村からの帰還』

2015-08-29 14:49:40 | 中国・台湾

澤地久枝『14歳<フォーティーン> 満州開拓村からの帰還』(集英社新書、2015年)を読む。

作家・澤地久枝は、満州国、現在の吉林省において、戦時を体験し、14歳のときに敗戦を迎えた。日本の戦争遂行のためにつくられた大きな物語を信じながらも、そのことと、ひもじい思いや妙な戦争協力とを実感的に結び付けられなかった。また、平等を掲げているはずの社会にあって、中国人の同級生がもってきているお弁当との差に、拭い去ることのできない違和感を抱いている。

敗戦を迎え、日本は、国民の命を最優先する政策を取ることはしなかった。そしてソ連軍が侵攻し、中国共産党軍が奪い返し、その中で地獄のようなレイプの連鎖があった。著者は必死に逃げ隠れしながら、ひどい状況をすべて把握した。著者はそのことを、「日本人の歴史の負債のようなことが、実際に起こったのだ。人間の欲望と征服欲の分かちがたい行為として。」と書いている。

著者はまた、時代の隔絶、権力の隔絶、情報の隔絶のなかで、確実に、「遠い日の戦争が、つぎの世代の不幸とむすびついている」という。まさにこのことが、いまになって「昔話」を語らざるを得ない理由であっただろう。

●参照
澤地久枝『もうひとつの満洲』 楊靖宇という人の足跡
澤地久枝『密約』と千野皓司『密約』


エドワード・サイモン『Live in New York at Jazz Standard』

2015-08-28 07:40:11 | アヴァンギャルド・ジャズ

エドワード・サイモン『Live in New York at Jazz Standard』(Sunnyside、2010年)を聴く。

Edward Simon (p)
John Pattitucci (b)
Brian Blade (ds)

ピアノトリオはよほど尖っているか崩れているかでないと、余りにも典型的すぎるフォーマットゆえ、耳と脳を通過するだけで滓さえも残らない。これも、サイモンのプレイはクールで工夫もあって(特に「Giant Steps」の編曲なんて)、普通に言えば良いピアノなのだろうが、よくわからないグラスワインを1杯飲んだようなもので。

それよりも、これはブライアン・ブレイドを聴くための盤である。強靭なバネのような身体から、ノリやスイングだけではない、実にカラフルなドラミングをこれでもかと開陳する。小技も堂々としたものだ。これには聴き惚れてしまう。

90年代後半にジャズフェスで観たっきりだが、それ以来、方向の定まらないドラマーだなと思い込んでいた。勿体ないことをした。


アンドリュー・ラム『Portrait in the Mist』

2015-08-27 07:15:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンドリュー・ラム『Portrait in the Mist』(Delmark、1994年)を聴く。

Andrew Lamb (ts)
Warren Smith (vib)
Wilber Morris (b)
Andrei Strobert (ds)

デルマークど真ん中のシカゴ・モダン・サックス、つまり、アーシーで一歩間違えればダサさの沼に落ちそうなサックスである。

聴いていると、フレッド・アンダーソン、ヴォン・フリーマン、アリ・ブラウン、知名度は低いがハナ・ジョン・テイラーといった面々のプレイと共通するところを、確かに見出すことができる。敢えてスタイリッシュにソロを切り上げず、止めどなくでろでろになっていくところなんて最高なのである。このような土臭さと、やはりシカゴのロスコー・ミッチェルの先鋭的なものとは、同じように聴けてしまう。


立花秀輝+不破大輔@Bar Isshee

2015-08-25 23:59:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

千駄木のBar Issheeに足を運び、立花秀輝さんと不破大輔さんのデュオを観る(2015/8/25)。

立花秀輝 (as)
不破大輔 (b)

不破さんのベースは、情の汁を滴らせながら駆動するブルースである。

そしてはじめてナマで観る立花さんのアルトは、実にヘンな音を出しまくっていた(高音でキキキキキと啼きながら低音を刻むなんてどうやるのか)。ときに凄まじい音圧が吹きだされてきて、こちらも立ち向かって聴かねばならない。演奏後に訊くと、リコーが販売しているヘムケというリードの4番を使っているという。超硬いリードである。それでこその圧とカタルシスか。

●参照
立花秀輝『Unlimited Standard』
不破大輔@東京琉球館
高木元輝の最後の歌(不破大輔参加)
2000年4月21日、高木元輝+不破大輔+小山彰太
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(不破大輔参加)
『RAdIO』(不破大輔参加)


Human Feel 『Galore』

2015-08-25 07:27:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

Human Feel 『Galore』(Skirl Records、2007年)を聴く。

Jim Black (ds, electronics)
Andrew D'Angelo (as, bcl)
Kurt Rosenwinkel (g)
Chris Speed (ts, cl)

独特のDVDサイズのジャケットで、メンバー名はCDの表面にしか書かれていない。売らないために作ったとしか思えない。

それはそれとして、なかなかの変態集団であり愉快だ。ともかくもドタバタと駆けるジム・ブラックはいまだどういうドラマーなのかよくわからないのだが、アンドリュー・ディアンジェロのアルトとバスクラの押し出しの強さが目立っている。特筆すべきはカート・ローゼンウィンケルのギターだ。並走して芸人のようにはしゃぎまわるかと思えば、実にカッコいいインプロに熱中していたりする。

●参照
アンドリュー・ディアンジェロ@Downtown Music Gallery(2015年)
アンドリュー・ディアンジェロ『Norman』(2014年)(ブラック参加)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)(ブラック参加)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)(ブラック参加)
アンドリュー・ディアンジェロ『Morthana with Pride』(2004年)
三田の「みの」、ジム・ブラック(『Habyor』2004年、『Splay』2002年)(スピード参加)
ブリガン・クラウス『Good Kitty』(1996年)(スピード参加)
エド・シュラー『The Force』(1994年)(ブラック、ディアンジェロ参加)


リバティ・エルマン『Radiate』

2015-08-24 22:53:05 | アヴァンギャルド・ジャズ

リバティ・エルマン『Radiate』(Pi Recordings、2014年)を聴く。

Liberty Ellman (g)
Steve Lehman (as)
Jonathan Finlayson (tp)
Jose Davila (tuba, tb)
Stephan Crump (b)
Damion Reid (ds)

エルマン自身はもとより、チューバとトロンボーンを吹くホセ・デヴィラもヘンリー・スレッギルのグループ・ズォイドのメンバーであり、曲想にも非常に似た側面がある。実際にこの盤にも、スレッギルからインスピレーションを得たとエルマンが書いている。

『スター・ウォーズ』のライトセーバーを思わせる、太くて俊敏なエルマンのギターは、よく歌い、ソロの後に何かの思いを残す感覚も良い。もはや孤高の感があるスティーヴ・リーマンのサックスにも痺れる。

しかし、どうしても、スレッギル亜流、というよりスレッギルの甥っ子のように聴こえてしまう。スレッギルがセクステット時代にトロンボーンを入れ、ヴェリー・ヴェリー・サーカスにおいてそれをチューバとして、ズォイドでもさらにチューバが鼓膜を平穏にさせずヴァイブレーションを与え続けていたのは、異常なほどに緊密なアンサンブルのゆえだった。それを駆動する執着心をどこかの棚にしまい込んで、スタイリッシュに展開した音楽が、これである。スレッギルを聴かなかったならば傑作としか思えなかっただろうし、スレッギルがいなければこの音楽もなかった。その意味ではアンフェアな言い分ではないだろう。

●参照
リバティ・エルマン『Ophiuchus Butterfly』(2006年)
マイラ・メルフォード Snowy Egret @The Stone(2015年)(エルマン参加)
マイラ・メルフォード『Snowy Egret』(2013年)(エルマン参加)
ヘンリー・スレッギル(11) PI RECORDINGSのズォイド(2001-11年)(エルマン参加)
ヴィジェイ・アイヤー『In What Language?』(2003年)(エルマン参加)


アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas IV』

2015-08-24 21:51:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas IV』(Loyal Label、2011年)を聴く。

Kenny Wollsen (ds, cymbals, timpani, vib, marching machine)
Jacob Sacks (harpsicord, farfisa organ, p)
Tony Malaby (sax)
Brandon Seabrook (g, mandolin)
Eivind Opsvik (b)

オプスヴィークはいろいろな盤で聴いているし、NYのStoneで演奏を観てもいるのだが、ベーシストとしてそれほど耳を奪われたわけではない。しかし、トニー・マラビーのサックスが目当てのこの盤は、嬉しい意味での驚きだった。「Overseas」の名の通り、まるで中世の航海のドラマ向けに作られたサウンドトラックだ。

何しろ、メンバー皆が喜々として各々の役割を演じている。ハープシコードによって古き良き時代、そして限りなき旅の不安と悦びとがかき立てられるようだ。マラビーのサックスは、期待以上に、心のマチエールやかさぶたを刺激して、否応なくこちらを世界へと引っ張ってゆく。次第に物語はクライマックスへと向い、シーブルックのギターが高揚へ高揚へと導く。そしてサウンドを作り上げ締めるオプスヴィークのベース。

いやこれは愉しい。同じ『Overseas』連作の「I」~「III」も聴こうかな。

●参照
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)(オプスヴィーク参加)
ネイト・ウーリー『(Put Your) Hands Together』(2011年)(オプスヴィーク参加)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)(オプスヴィーク参加)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、12年)(オプスヴィーク参加)


チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』

2015-08-23 21:25:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

ピーター・エヴァンス目当ての2枚。

チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』(ug Explode、2013年)は、エヴァンスのトランペット1管とピアノトリオによるオーソドックスに見える編成だが、4人ともそれぞれ異なる方向をきりりと睨んで走りまくる。『Pulverize the Sound』(Relative Pitch Records、2015年)はさらにハチャメチャ。エヴァンス、ティム・ダール、マイク・プライドのトリオであり、もはや遠慮なく、みんなやりたい放題のドヤ顔。一歩踏み外せばギャグバンドである。

しかし、中央集権やジャズという権力を平然と無視し、解体してみせる者がエヴァンスたちである。もう、素知らぬ顔で技を繰り出しまくる時空間が愉しくて仕方ないのだ。

Charity Chan (p)
Peter Evans (tp)
Tom Blancarte (b)
Weasel Walter (ds)

Peter Evans (tp)
Tim Dahl (b)
Mike Pride (ds, perc, glockenspiel, nose whistle)

●参照 ピーター・エヴァンス
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
『Rocket Science』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年)
オッキュン・リー『Noisy Love Songs』(2011年)


オッキュン・リーのTzadik盤2枚

2015-08-23 11:11:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

今までオッキュン・リーという即興演奏家をろくに聴いてこなかったのだが、ふと気になって、中古棚に並んでいたTzadikレーベルのリーダー作2枚を入手したところ、吐きそうなほどの素晴らしさに驚いている(本当)。

アジアの音だから刺さるということもあるかもしれない(オッキュン・リーは韓国生まれ、2000年からNYで活動)。また、共演メンバーの繊細な演奏も貢献している。その中でも、リーのチェロはとびきり繊細で、まるでさまざまな天然の糸をより合わせたような連続性と柔軟性と強度。

『nihm』が2005年、『noisy love songs』が2011年。わたしは10年もの間気付かず、なにをしていたのか。

Tim Barnes (ds, perc)
Shelly Burgon (harp)
Sylvie Courvoisier (p)
Trevor Dunn (b)
John Hollenbeck (ds, perc)
Okkyung Lee (cello)
Ikue Mori (electronics)
Doug Wieselman (cl)

Cornelius Dufallo (vln)
Peter Evans (tp)
Okkyung Lee (cello)
Craig Taborn (p)
Satoshi Takeishi (perc, electronics)
Christopher Tordini (b)
Ikue Mori (electronics)
John Hollenbeck (perc)


橋本孝之『Colourful』、.es『Senses Complex』、sara+『Tinctura』

2015-08-23 08:28:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

サックス奏者の橋本孝之さんは気持ちよくも不思議な方で、新宿駅前で白石民夫さんのソロ演奏を聴いたあとに一緒に丸の内線で帰るとき、初対面のわたしに、サックスソロについて熱く語った。他のプレイヤーと「似たような感じ」ではつまらない、と。また、先日エヴァン・パーカーらの演奏を聴いたあとに話をしていると、なんと、ジャズなるものはほとんど聴いてこなかったしプレイヤーもよくわからない、と。

確かに、アルトソロの演奏集『Colourful』(Nomart Editions、2013年)を聴くと、まるで独自的であることを発見する。まるで真っ暗な巨大空間のなかにひとり立ち、押しつぶしにかかる大きな闇と対峙し、生きているという証の切り込みを入れ続けるようなのだ。

もうひとつ面白かった話。白石民夫さんの柔和な物腰に接したあと、これまで音を聴いていてすごく凶悪な人かと思っていたと言ったところ、いやサックスソロを演る人はそう思われるのだ、自分もそう言われることがある、と。実際に、この音を先に聴いてしまうと、刃が暗闇でぎらりと光る斧のような人を想像してしまうかもしれない。

橋本孝之 (as)

.es」(ドットエス)は、ピアニストのsaraと組んだユニットで、『Senses Complex』(Nomart Editions、2015年)では、滋賀の酒游舘、大阪のギャラリーノマル、東京の七針で行ったデュオ演奏を集めている。デュオになるとまた異なったものに聴こえる。saraさんのピアノは触角を鋭敏に働かせながら行き先や世界のかたちを探っていくような感覚であり、橋本さんのサックスは、その触角を持つ生物とコミュニケートしつつ、巨大な体躯で舞う象や巨神兵のようである。

saraさんが中心となって他のプレイヤーとデュオ演奏を行う『Tinctura』(Nomart Editions、2014年)は、世界のかたちを嗅ぎまわるパフォーマンスがさらに多様な貌と色相をみせてくれるようで、これもまた良い。

sara (p)
橋本孝之 (as)

sara (p)
佐谷記世 (cello)
河端一 (g)
ユン・ツボタジ (perc)
橋本孝之 (as)