・ 女性同士の深い友情を切なく描いた、K・ハードウィック監督。
幼馴染みの親友ミリーとジェスが、互いに家庭を持った後も家族ぐるみで親交を深めて行く友情ドラマ。
オリジナル脚本を自身も乳がん患者体験のあるモーウェナ・バンクスが書き下ろし、キャサリン・ハードウィックが監督している女性コンビ作品。かなりシリアスなテーマだが、随所にユーモアも交えた展開は決して暗くならない。
ミリーを演じたのがトニ・コレット。何でも先に経験するトニは、ロック・ミュージシャン上がりで今はスピーカー販売会社を経営するキッド(ドミニク・クーパー)と結婚。二人の子供に恵まれるキャリアウーマン。自己顕示欲が強く、奔放で享楽的な人生を過ごしてきた。
ジェスに扮したのはドリュー・バリモア。環境ボランティアで知り合った整備士ジェイゴ(バディ・コンシタイン)と結婚し、テムズ運河のボート・ハウスで暮らしている。献身的で堅実な性格。
正反対の二人だが何をするのも一緒で、喜びも悲しみも共有する傍から見ても羨ましい親友に、試練が訪れる。
W主演だが、トニ・コレットの鬼気迫る熱演が光る。特に乳がん進行とともに体力的な劣化と自身を鼓舞するような行動力は、筆者のような男には想像を超えた哀しみが溢れる。現に夫キッドも、ベッドを共にしたときの戸惑いは痛々しく、良かれと思った40歳の誕生パーティでもミリーの気分を損ね気まずい雰囲気に。
本作のハイライトは嵐が丘の舞台ハワースへのジェスとの小旅行。荒々しい天候と風景は本音がぶつかり合い、二人を離れさせるキッカケともなった。
離れてもまた元の関係に戻れるのが親友というもの。そのキッカケはジェスの出産だった。
ジェスは受け身の役割で抑えた演技にならざるを得ないが、このシーンでは本気の演技。
本音でぶつかり合った二人が、生死を超えて絆が戻ってゆく。こんな親友がいるなんて羨ましい限りだ。
・ 最年少オスカー受賞T・オニールによる、ほのぼのとしたロード・ムービー。
「ラスト・ショー」(71)のピーター・ボグダノヴィッチ監督がジョー・デヴィッド・プレイン原作「アディ・プレイ」を映画化したロードムービー。
大恐慌時代、聖書の訪問販売をしながら小銭を稼ぐ詐欺師・モーゼと、母親を交通事故で無くした9歳の少女・アディの父娘かもしれない2人が、中西部を旅するうちに絆を深めていく心温まる物語。
モーゼはバーで知り合った女の葬儀に出たばっかりに、アディを叔母の家に送り届ける羽目に。
交通事故加害者の兄から慰謝料200ドルをせしめ新車に変えたモーゼは、体良く汽車に乗せようとするがアディの機転で騙せ果せず、車での2人旅が始まる。
アディは、大人顔負けの頭の回転の良さでモーゼの相棒となり、途中ダンサーとの出逢いと別離、酒の密売人との危ない取引きに巻き込まれる旅が続いていく。
演じたのがライアン・テイタムのオニール親子。実生活ではバッド・イメージのあった2人だが、本作では微塵も感じさせず息もぴったり。
ライアンは「ある愛の詩」(70)で二枚目俳優として鳴らした絶頂期。コミカルな役に初挑戦してなかなかの好演。
テイタムはこれがデビュー作。煙草をふかす男の子のようなコマッシャクレた面と可憐で可愛い少女の面を持ち、子供っぽいところと女だと思わせるところを魅せる微妙な心理描写を巧みに演じている。
この年、ダンサー・トリクシーを演じたマデリーン・カーンとともに、オスカー助演女優賞にノミネートされたテイタム。見事最年少(10歳)で栄冠を獲得している。
時代を感じさせるための細かな配慮がなされていて、モノクロでコントラストが引き立つよう赤色フィルターとシャープさを出せる広角レンズによる撮影は「イージー・ライダー」(69)のラズロ・コヴァックス。
脚本のアルヴィン・サージェントは、「ジュリア」(77)、「普通の人々」(80)でオスカーを2度受賞している。監督は挿入歌「It’s a Paper Moon」をモチーフに、オリジナルにない遊園地の写真館で作り物の月に腰かけた愛らしいアディのシーンを加え、素敵なエンディングへ見事に誘導している。
ハートウォーミングなこのロード・ムービーは、映画の素晴らしさを改めて実感させてくれた。