晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「マイ・ベスト・フレンド」(15・英) 65点

2017-03-03 10:22:27 |  (欧州・アジア他) 2010~15



  ・ 女性同士の深い友情を切なく描いた、K・ハードウィック監督。


    

 幼馴染みの親友ミリーとジェスが、互いに家庭を持った後も家族ぐるみで親交を深めて行く友情ドラマ。

 オリジナル脚本を自身も乳がん患者体験のあるモーウェナ・バンクスが書き下ろし、キャサリン・ハードウィックが監督している女性コンビ作品。かなりシリアスなテーマだが、随所にユーモアも交えた展開は決して暗くならない。

 ミリーを演じたのがトニ・コレット。何でも先に経験するトニは、ロック・ミュージシャン上がりで今はスピーカー販売会社を経営するキッド(ドミニク・クーパー)と結婚。二人の子供に恵まれるキャリアウーマン。自己顕示欲が強く、奔放で享楽的な人生を過ごしてきた。

 ジェスに扮したのはドリュー・バリモア。環境ボランティアで知り合った整備士ジェイゴ(バディ・コンシタイン)と結婚し、テムズ運河のボート・ハウスで暮らしている。献身的で堅実な性格。

 正反対の二人だが何をするのも一緒で、喜びも悲しみも共有する傍から見ても羨ましい親友に、試練が訪れる。

 W主演だが、トニ・コレットの鬼気迫る熱演が光る。特に乳がん進行とともに体力的な劣化と自身を鼓舞するような行動力は、筆者のような男には想像を超えた哀しみが溢れる。現に夫キッドも、ベッドを共にしたときの戸惑いは痛々しく、良かれと思った40歳の誕生パーティでもミリーの気分を損ね気まずい雰囲気に。

 本作のハイライトは嵐が丘の舞台ハワースへのジェスとの小旅行。荒々しい天候と風景は本音がぶつかり合い、二人を離れさせるキッカケともなった。

 離れてもまた元の関係に戻れるのが親友というもの。そのキッカケはジェスの出産だった。

 ジェスは受け身の役割で抑えた演技にならざるを得ないが、このシーンでは本気の演技。

 本音でぶつかり合った二人が、生死を超えて絆が戻ってゆく。こんな親友がいるなんて羨ましい限りだ。
 

 


「ペ-パームーン」(73・米) 85点

2017-03-02 08:21:34 | 外国映画 1960~79

 ・ 最年少オスカー受賞T・オニールによる、ほのぼのとしたロード・ムービー。

                    

 「ラスト・ショー」(71)のピーター・ボグダノヴィッチ監督がジョー・デヴィッド・プレイン原作「アディ・プレイ」を映画化したロードムービー。

 大恐慌時代、聖書の訪問販売をしながら小銭を稼ぐ詐欺師・モーゼと、母親を交通事故で無くした9歳の少女・アディの父娘かもしれない2人が、中西部を旅するうちに絆を深めていく心温まる物語。

 モーゼはバーで知り合った女の葬儀に出たばっかりに、アディを叔母の家に送り届ける羽目に。

 交通事故加害者の兄から慰謝料200ドルをせしめ新車に変えたモーゼは、体良く汽車に乗せようとするがアディの機転で騙せ果せず、車での2人旅が始まる。

 アディは、大人顔負けの頭の回転の良さでモーゼの相棒となり、途中ダンサーとの出逢いと別離、酒の密売人との危ない取引きに巻き込まれる旅が続いていく。

 演じたのがライアン・テイタムのオニール親子。実生活ではバッド・イメージのあった2人だが、本作では微塵も感じさせず息もぴったり。

 ライアンは「ある愛の詩」(70)で二枚目俳優として鳴らした絶頂期。コミカルな役に初挑戦してなかなかの好演。

 テイタムはこれがデビュー作。煙草をふかす男の子のようなコマッシャクレた面と可憐で可愛い少女の面を持ち、子供っぽいところと女だと思わせるところを魅せる微妙な心理描写を巧みに演じている。

 この年、ダンサー・トリクシーを演じたマデリーン・カーンとともに、オスカー助演女優賞にノミネートされたテイタム。見事最年少(10歳)で栄冠を獲得している。

 時代を感じさせるための細かな配慮がなされていて、モノクロでコントラストが引き立つよう赤色フィルターとシャープさを出せる広角レンズによる撮影は「イージー・ライダー」(69)のラズロ・コヴァックス。

 脚本のアルヴィン・サージェントは、「ジュリア」(77)、「普通の人々」(80)でオスカーを2度受賞している。監督は挿入歌「It’s a Paper Moon」をモチーフに、オリジナルにない遊園地の写真館で作り物の月に腰かけた愛らしいアディのシーンを加え、素敵なエンディングへ見事に誘導している。

 ハートウォーミングなこのロード・ムービーは、映画の素晴らしさを改めて実感させてくれた。


「天国の日々」(78・米) 85点

2017-03-01 11:04:18 | 外国映画 1960~79
・伝説の監督T・マリックの2作目は、必見の映像美。                                                                                                                          伝説の監督、テレンス・マリックの2作目で、究極の映像美でファンをトリコにした。                                 旧約聖書の創世記をもとにした<20世紀初頭のアメリカを舞台に季節労働者たちの過酷な運命>を描いた哲学的な作品。       日本では暗くて地味な内容のため公開されなかったが、主演のリチャード・ギアが「愛と青春の旅だち」でブレイクしたお陰で、5年後に陽の目を見たという曰くつき。おまけにT・マリックはこの作品のあと映画作りから離れ、次回作「シンレッド・ライン」まで20年間空白があったのでカリスマ性を保ち続けていた。                                                          貧しい兄妹と兄の恋人がシカゴから季節労働者としてテキサスへ。季節は秋で麦の収穫のため雇われた若い農場主は天涯孤独で余命が1年余り。                                                                          物語は妹の視線で語られ、3人の偽りの日々が安楽のトキから運命の悲惨さに辿りつくまでが描かれている。                 美しい絵画や写真を見るような情景がまるで人間がすることが無意味なように融合してゆくさまが叙事詩をみるよう。この数々の映像美はネストール・アルメンドロスの撮影によるもので有名な夕暮れ時の僅か20分しかない<マジックアワー>を多用した要因が大きい。あまりにも時間が掛かりすぎトリュフォー作品のため途中帰国したあとを引き継いだハスケル・ウェクスラーの腕も確かで2人を使いこなしたマリックの勝利とも言える。                                                              徹底した美しい映像描写のあまり人間描写が淡々として思えるが3人の若者が運命に逆らえない悲劇を伝えるには充分な設定となっている。タイトルバックがサンサーンスの動物の謝肉祭「水族館」で始まり、エンリオ・モリコーネが奏でるBGMはそれだけでドラマを感じるほどでマカロニ・ウェスタンのモリコーネ音楽とは別世界である。                                        R・ギアのどん底から這い上がろうとするためにとった行いが愛を失うことを悟る戸惑いの表情がいい。ライバルの農場主サム・シェパードは静かなたたずまいに孤独感を滲ませ同情を買う。ヒロイン、ブルック・アダムスは個性的な風貌ながら線が細く感じた。それがリアルなのかも。                                                                          大切な出演者は広大な麦畑・雄大な空と雲・煙をたなびかせる蒸気機関車・アクロバット飛行する複葉機・そしてイナゴの大群たち。  第一次大戦に参加を決めたアメリカの歴史を暗示する変革の時代を切り取った貴重な作品である。もういちど大画面で観てみたい。