晴れ、ときどき映画三昧

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「わらの犬」(71・米) 70点

2017-03-04 12:28:48 | 外国映画 1960~79

 

 ・ 人間内部に潜む暴力性を表現した、バイオレンスの巨匠S・ペキンパー。

   

 英国ゴードン・M・ウィリアムスの小説「トレンチャー農場の包囲」をサム・ペキンパーが脚色・監督したバイオレンスの代表作。

 米国から平穏な生活を求め、妻の出身地である英国郊外コーンウォールへ逃れてきた数学者の宿命を描いている。

 ミステリーによくあるように一見平和な田舎町にはよそ者に冷たく、周囲の仕打ちも陰湿なもの。暴力否定主義の数学者デヴィッド(ダスティン・ホフマン)は村人たちの嫌がらせにひたすら耐え続けるが、車の事故で精神薄弱者のヘンリーを自宅に匿ったことで村人たちが暴徒と化す。

 前半はひたすら耐え続けていたデイヴィットに我が家を守るという名目から過激な争いに突入、後半繰り広げられるノンストップ・バイオレンスは物凄い迫力!

 良識あるデイヴィッドの内部に秘めた暴力性は別人のような凄まじさ。

 筆者はジャック・ニコルソンが適役ではと思ったが、事実ドナルド・サザーランド、シドニー・ポワティエなどと共に候補に挙がっていたらしい。結果、暴力を極力避け続けている前半の丁寧な描写で、D・ホフマンならではの人間性が表現されていて流石のはまり役となった。

 S・ペキンパーは「ワイルド・パンチ」(69)など一連の西部劇同様、単純な正義対悪ではない過激な暴力の争いを得意とする。ここでもハイスピードとカットバックで観客の目をくぎ付けにする。

 輪姦される妻エイミー役にはスーザン・ジョージ、娘を探し暴徒と化すアル中のトム役ピーター・ヴォーン、唯一秩序あるスコット少佐役T・P・マッケンナなど如何にも実在しそうな配役がこのドラマに説得力を持たせている。出番は少ないがこのドラマのキーとなる精神薄弱者ヘンリーのデヴィッド・ワーナーが存在感を見せている。

デイヴィッドとヘンリーのラストシーンがこの映画の持つ虚無感とともに、何時までも印象的な作品として観客を曳きつけて止まない。