・伝説の監督T・マリックの2作目は、必見の映像美。
伝説の監督、テレンス・マリックの2作目で、究極の映像美でファンをトリコにした。
旧約聖書の創世記をもとにした<20世紀初頭のアメリカを舞台に季節労働者たちの過酷な運命>を描いた哲学的な作品。
日本では暗くて地味な内容のため公開されなかったが、主演のリチャード・ギアが「愛と青春の旅だち」でブレイクしたお陰で、5年後に陽の目を見たという曰くつき。おまけにT・マリックはこの作品のあと映画作りから離れ、次回作「シンレッド・ライン」まで20年間空白があったのでカリスマ性を保ち続けていた。
貧しい兄妹と兄の恋人がシカゴから季節労働者としてテキサスへ。季節は秋で麦の収穫のため雇われた若い農場主は天涯孤独で余命が1年余り。
物語は妹の視線で語られ、3人の偽りの日々が安楽のトキから運命の悲惨さに辿りつくまでが描かれている。
美しい絵画や写真を見るような情景がまるで人間がすることが無意味なように融合してゆくさまが叙事詩をみるよう。この数々の映像美はネストール・アルメンドロスの撮影によるもので有名な夕暮れ時の僅か20分しかない<マジックアワー>を多用した要因が大きい。あまりにも時間が掛かりすぎトリュフォー作品のため途中帰国したあとを引き継いだハスケル・ウェクスラーの腕も確かで2人を使いこなしたマリックの勝利とも言える。
徹底した美しい映像描写のあまり人間描写が淡々として思えるが3人の若者が運命に逆らえない悲劇を伝えるには充分な設定となっている。タイトルバックがサンサーンスの動物の謝肉祭「水族館」で始まり、エンリオ・モリコーネが奏でるBGMはそれだけでドラマを感じるほどでマカロニ・ウェスタンのモリコーネ音楽とは別世界である。
R・ギアのどん底から這い上がろうとするためにとった行いが愛を失うことを悟る戸惑いの表情がいい。ライバルの農場主サム・シェパードは静かなたたずまいに孤独感を滲ませ同情を買う。ヒロイン、ブルック・アダムスは個性的な風貌ながら線が細く感じた。それがリアルなのかも。
大切な出演者は広大な麦畑・雄大な空と雲・煙をたなびかせる蒸気機関車・アクロバット飛行する複葉機・そしてイナゴの大群たち。 第一次大戦に参加を決めたアメリカの歴史を暗示する変革の時代を切り取った貴重な作品である。もういちど大画面で観てみたい。
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