晴れ、ときどき映画三昧

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「ベストセラー 編集者パーキングに捧ぐ」(16・英/米)70点

2017-03-28 12:32:20 | 2016~(平成28~)

  ・ 豪華キャストで地味なストーリーながら味わい深い。


    

 失われたジャズエイジと言われた米国20~30年代、「グレート・ギャッツビー」のF・スコット・フィッツジェラルド、「武器よさらば」「日はまた昇る」のA・ヘミングウェイは知っているが、トマス・ウルフと言われても作品は思い浮かばない。

 そのT・ウルフをベストセラー作家として世に出したのは名編集者マックス・パーキンスだった。A・スコット・バーグの原作を脚本家ジョンローガンが映画化権を取得。17年後念願が叶った本作を英国の芸術監督マイケル・グランデージが初監督。

 ウルフ(ジュード・ロウ)はNYの各出版社へ自作を売り込むが実現しない。フィッツジェラルドやヘミングウェイの小説を発刊しているスクリブナーズ社の編集者パーキンスへ持ち込んだ原稿「失われしもの」はひとまず預けられる。

 非凡な才能の未完の作家トマス・ウルフを発掘し育て上げた、ストイックな伝説の編集者パーキンズ。プロフェッショナル同士でありながら友人でもあり、息子のようでも、傍から見ると恋人的存在の2人。

 処女作「天使よ故郷を見よ」がベストセラー作家になったのは、黒子であるパーキンスの地道な編集作業と18歳年上の愛人アリーン(ニコール・キッドマン)の金と精神的支えによるものだった。

 人の機微がわからない天才作家ウルフは、パトロンだったアリーンとは別れようとしていた。さらに2作目「時と川」も削除・削除に反感を抱いてパーキンスからも離れヨーロッパへ旅立って行く・・・。

 妻ルイーズ(ローラ・ルニー)と娘5人の家族を犠牲にし、仕事・仕事のパーキンスは密かに<作品の改良ではなく、別作品に作り変えているのではないか?>という疑念に苛まれていた。

 フィッツジェラルドにガイ・ピアース、その妻ゼルダにヴァネッサ・カービー、ヘミングウェイにドミニク・ウェストなど脇役まで豪華キャスト。地味な展開ながら、文学的なセリフと細部まで行き届いた空気感が漂う映像は贅沢な気分にさせてくれる。

 家の中でも帽子を脱がなかったパーキンスが唯一脱いだシーンは、編集者として信頼された息子のようなウルフへの安堵感だったのだろう。